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「洗脳された妻は娘を連れて消えた」いつの間にかマルチ商法にハマりやすい人の特徴

2021-02-02 15:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です


身近で信頼できる人に誘われると深入りしやすい
マルチ商法の勧誘と言うとどういうシーンが思い浮かぶだろう?
ある日、しばらく連絡を取っていなかった友人から連絡が来る。久しぶりの再会に心がはずむ。そして会ってみると「かんたんに儲かるいい話がある」と話を切り出され、ガクッとしてしまった──。そんな経験のある人は、少なくないかもしれない。さらに最近ではSNSやマッチングアプリで知り合った人から勧誘されたという話も増えてきている。
行政や学校でも、こうした人たちからかけられる「誰でも」「かんたんに」「楽して稼げる」という言葉には気をつけましょうと、注意喚起をしている。しかし、身近で信頼できるように見える人から勧誘されることもめずらしくない。むしろ僕が聞いたり調べたりした範囲では、マルチ商法に深入りしてしまうケースほど、勧誘のきっかけは身近で信頼できるように見える人からだ。
僕の妻も、地域の民生委員を務める平泉さん(仮名)という身近な60代の女性からマルチ商法で有名なX社に勧誘された。
「トンデモ」を信じる人たち
当時の僕はX社のこともマルチ商法がどういうものかもよく知っていたわけではない。ただ良いイメージがなかったのは確かだった。
妻はX社のことを警戒している様子はまったくなく、むしろ「平泉さんと出会えてよかった!」という感じだった。
「白砂糖は麻薬だから子どもに食べさせてはいけない」「薬はリスクだから飲んではいけない!」そういう話を平泉さんがしてきて、もともとそういう話に強い興味があった妻は意気投合したらしい。
僕は不安になる一方で、「民生委員がマルチ商法など勧めてくるわけがない」という気持ちがあった。親身になってくれる民生委員が、たまたまX社の製品を使っている。それだけのことだと考えていた。
昨今では、「トンデモ」と呼ばれる情報が書籍やウェブを中心に溢れ、検索プラットフォームやブログサービスを提供する企業が対応策を取るなどの社会問題になりつつある。
こうした情報は医療・食・健康に関するものが多く、いずれも科学的な根拠がない。たとえば世界保健機関(WHO)は、2019年に注目される「世界の健康に対する10の脅威」のひとつとして、「ワクチン忌避」を挙げている。
身近で信頼のできる人や、一見、権威のありそうな専門家から「○○が危ない!」というメッセージが発せられると、根拠の有無に関係なく不安が喚起され、ふつうであれば信じないような情報を信じ込んでしまうことがあるのだ。残念ながら、これは家族や子どもの健康に気を配る親(特に母親)であればなおさらのことで、僕の妻もそのような母親のひとりだった。
もともと医療や食、健康に関心が高く、真偽が確かではない情報を信じ込みやすかった妻の目には、平泉さんが「質の高い情報」をたくさん知っている素敵な女性に映ったことだろう。
根拠のない「安全」に人は動く
マルチ商法にハマることと、「トンデモ」を信じることは別ではないか、と思うかもしれない。しかし、このふたつは密接につながっているというのが僕の実感だ。
マルチ商法が取り扱う製品の多くはサプリメント、プロテイン、調味料、空気清浄機、浄水器、洗剤といった健康食品や日用品である。そして、一般的に「トンデモ」と指摘される情報の多くも、医療や健康や食に関するものである。なかには規定に反した勧誘を行う会員がいるが、その場合、製品の優位性を説明するときに「トンデモ」が話に混じることがある。
「サプリを飲まなければ身体を壊す」「水道水をそのまま飲むのは自殺行為に等しい」。マルチ商法の製品を勧められるときにかけられるこうした言葉には、科学的な根拠の有無などない。普段、僕たちが当たり前に享受しているものが「本当に安全なのか」と疑問を突き付けられ、心が揺れたタイミングで「都合のいい解決策」が提示されるのだ。
いわば「トンデモ」は心を揺らすための道具として使われている。書籍やネットでよく知られた情報や、マルチ商法の会員のあいだでだけ使われる情報など、利用される「トンデモ」の種類は異なるが、こうした科学的に根拠のない説明がなされることがあるのが、悪質なマルチ商法勧誘の特徴である。
新築の家がX社製品で溢れかえる
同じように、僕がSNSのコミュニティを中心に調査したメモによれば、放射能、農薬、添加物、牛乳、トランス脂肪酸、ワクチン接種、薬を飲ませることなどが健康に悪いという情報が、日常的に会員同士で共有されていた。
妻も、そういった書籍やネットで得た「トンデモ」な知識を意気揚々と友人に話していたが「それ、おかしいんじゃない?」と眉を顰められ気を悪くしていることも多かった。
そこに現れたのが平泉さんだった。平泉さんは、妻のトンデモな話を否定することなく、「そうだね」「いっぱい勉強してえらいね」と寄り添って聞いてくれた唯一の人だったに違いない。平泉さんはこうして、妻にとって「自分は間違っていない」と認めてくれる存在になったのだ。そんな妻が、平泉さんを信頼し、平泉さんが勧めるマルチ商法に興味関心を強めていくのは自然なことだったのだろう。
このとき僕はまだ、妻がママ友や幼稚園のお母さんたちにも勧誘をしていたことを知らなかった。
妻がマルチ商法の製品を愛用していることに不安を覚えながらも、新築の家に引っ越した。新しい家に引っ越せば妻も良い方向に変わってくれるのではないか、X社もやめてくれるのではないかという期待があった。だが現実は逆だった。家のなかはX社製品で溢れかえった。僕と妻と娘と3人で布団を並べて寝ていたが、寝室に置かれた空気清浄機の音が我慢できず、僕は寝室を別にした。
そうやって僕の家庭はX社一色になっていった。
妻は古くからの友人やママ友にX社の勧誘をしていた
やがて、一日中妻の携帯の通知音が鳴るようになった。食事中も娘と3人でいるときも携帯の通知が鳴り、そのたびに返信している妻にイライラが募った。
その頃、妻は平泉さん以上に徹子さんという女性の話をよくするようになっていた。徹子さんも平泉さんと同じように、地域の民生委員をしている。とても素敵で元気で、60代には見えない尊敬できる女性だと。妻の話からは、平泉さんも徹子さんを尊敬していて、X社仲間のなかでも徹子さんのほうが平泉さんより上の指導的立場にあり、X社仲間のなかで教祖のような存在であることが窺えた。しだいに僕は、妻の変化には徹子さんが大きく関わっているのではないかと考えるようになった。
ある日、娘と散歩をしていたときに娘が「徹子さんは白い門の家に住んでいる」と話しはじめた。娘から妻が徹子さんや平泉さんの家によく行っていること。そこでX社の話をいつもしていたり、自己啓発セミナーを受けていることを聞いた。それまでは、せいぜい月に一度ぐらい、平泉さんの家の料理教室に行っているとしか思っていなかった。それが週に何度も通っていると。そして古くからの友人やママ友にX社の勧誘をしていることを知った。
製品を買っているだけで、誰かに勧めることはしていない。てっきりそう思い込んでいたが、僕がそうであってほしいと信じたかっただけなのかもしれない。
居ても立っても居られず、義姉に相談
冷蔵庫には、腐った食べものが目に付くようになった。僕のことはもちろん、娘のことも気に掛けなくなり、何か心ここにあらず、明らかにX社や、僕にはわからない何かに心をとらわれていた。口をついて出るのは、徹子さんへの強い憧れや、「トンデモ」な話題ばかりだった。
ある日の朝、僕が家を出るとき、妻のあまりの様子に「洗脳されてる?」と思わず口をついて出てしまった。妻は驚いた顔をしていたが、何も言い返さずきょとんとしていた。僕は黙って家を出て仕事に向かった。
もうX社製品にまみれた家にいることも、X社にハマり人格が一変した妻と一緒にいることもできなかった。これ以上、妻を嫌いになりたくなかった。僕は会社で寝泊まりするようになった。
妻がX社の製品を買っていること、様子がおかしいことは、ずっと夫婦の問題だと思っていたし、誰かに話すのは恥ずかしいという気持ちがあった。だが、僕は居ても立っても居られず、地方に暮らす義姉に相談のメールをした。「私、ズュータンの気持ち、よくわかります。うちに泊まりに来たときもずっとあれを食べてはいけない、これを食べると病気になるとか、そんな話ばかりされてゲンナリしました。X社の話もしていました。妹は洗脳されてると思いました」という返事が来た。
妻は平泉さんや徹子さんから聞いたことを鵜呑みにし、X社を信奉
その後、妻と数回メールのやりとりをした。妻のX社への強い気持ちを理解してあげあれなかったことを詫びた。そして僕もX社に興味があるから、平泉さんや徹子さんから聞いた知識を僕にも教えてほしいとお願いした。だが妻からの返信メールでは、平泉さんや徹子さんから聞いたことを鵜呑みにし、X社を信奉している様子が窺えた。
僕は反発してはいけないと気をつけながら、たとえばX社の空気清浄機だとセシウムが完璧に取れるとか、サプリメントやプロテインがうつ病やパニック障害に聞くとか、どんな成分が入っているのかとか、聞いたことが本当にそうなのか、平泉さんや徹子さんに確かめてほしい。もう少し科学的根拠を教えてほしいとメールをした。
すると「X社の人はそこまで細かいこと気にしない。X社が好き。それでOK! 60歳を過ぎても健康で綺麗な平泉さんや徹子さんを見れば、X社のすごさがわかると思います。私はX社を紳士的で素晴らしい会社だと思っています」という内容の返信が来た。それ以上会話を続けることができなかった。
ある日家に帰ると、妻と娘はいなくなっていた
家に帰らない僕に妻からメールが来て、娘が「パパどこ行ったの? パパと遊びたい」と言っていると言われた。僕は1カ月ぶりに家に帰った。妻と話しあい、娘が幼稚園を卒業したら離婚しようと決めた。それまでに妻は娘とふたりで暮らしていく準備をしたい。急に離婚してひとりで娘を育てていくのは自信がないと言われた。
ズュータン『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)
だけどX社だらけの家で、人格の変わってしまった妻と一緒にいることは耐えられなかった。そして耐えられなくなった僕は、気づくとある朝「お願いだからX社をやめてくれ」と懇願していた。僕は「マルチ商法だろ!」と言ってはいけないことを言ってしまった。それに対して妻は「X社はただの通販だよ!」と反射的に強い口調で言い返してきた。
気づいたら僕は妻に頭突きをしていた。これまで手を出さないように気をつけていたが、頭が出てしまった。「出てってくれ! X社の製品も全部家から出してくれ!」。そう言い残し、僕は家を出た。
夜、家に帰ると、妻と娘の姿はどこにもなかった。X社の製品は、すべて家からなくなっていた。平泉さんとX社の仲間たちが家にやってきて、荷物を運び出していったことは察しがついた。他にすぐに家に来て荷物を運び出せる人は思い当たらなかったから。それ以来、妻と娘が帰ってくることはなかった。妻と娘が平泉さんの家で暮らしはじめたのを知ったのは、だいぶあとになってからだった。



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