第4ステージ

思う事をそのままに

ほたる

2021-05-31 23:34:24 | エッセイ
今夜、近くの川へ蛍を見に行った。

昔はよく行ったはずだが、
子供達は蛍を見た記憶が無い様だった。

まだ時間が早かったのか
1匹だけ飛んでいた。

見つけた私は嬉しくて
マスクの中で
顔が緩む。

しばらくすると
次第に小さな光がふわふわと増えた。

子供達には
わざわざ虫を見に行く気持ちが分からない
という感じだった。

けれど
蛍が子供の手の近くに飛んで来て
息子がそっと優しく捕まえた。

手のひらの中で
ふわんふわんと光る小さな虫。

『これが、蛍だよ』
と言うと
『綺麗…大人しくて可愛いね』

としばらく見つめていた。

『かわいそうだから逃がしてやらないとね』

と飛ばしてあげた。

大人になった私には
飛んでいる姿がとても神秘的で
暗闇の中、川のせせらぎが聞こえる。
なんとも幻想的な景色なのだ。

ところが子供たちには
ただ光が舞うだけで、
イルミネーションと変わらないそう。

手に持った感覚や、

愛着が嬉しかった様だ。

あまり生態には詳しくないが、
子供の頃、
捕まえたらすぐに死んでしまった記憶が
強烈に残っていた。

それもあったからなのか、
『蛍の命は短いんだよ』
と話した。

すると息子は
『セミとどっちが短いの?』

と聞いてきた。

『セミって鳴く為に産まれて生きてるの?』

『ねぇ、なんの為に産まれて来たの?』

と真顔で聞かれてしまった。

正解が分からない私は

『人間と一生の時間が違うだけで、
人間とみんな同じだよ』と答えた。

だけど今になって
色んな事を考え出した私は、
『では人間は…?』
と自問自答している。

けれど
こればっかりは答えが出ないままだ。

たまたま人に産まれたのか、

私が親を選んで産まれたのか。

誰にも分からない。


そして何のためか…
それはもっともらしい言葉を並べても
自分にはしっくりこないのだ。

いつか
この体が終わる時に
答えは出るのかもしれない。

だけど
息子の例えの様に
『泣くだけの為に産まれて生きている』
なんて
そんな事は絶対に無いと強く思う。

命はみな限りあるからこそ
愛しくもあり
美しく輝き、切ないのだと。




最後まで読んで頂いた方
ありがとうございました。




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