Sagami タイムズ 社説・時代への半鐘

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義務と権利

2022-06-09 18:15:57 | 学問
 ロシア外務省は7日、北方四島周辺での「安全操業協定」の履行を停止すると発表した。漁業者のうっかりとした領海侵犯という場面においてロシア当局による拿捕(だほ)などを避け日本側の「安全」を確保するため、日ロ両政府が交渉を重ね期間や漁獲量、協力金などを定めたうえで1998年以来履行されてきたもの。

 これについてザハロワ報道官は声明で、「日本政府はこの協定が機能するために不可欠なサハリン州に対する無償の技術支援の提供に関する文書への署名を遅らせ、協定に基づく支払いを『凍結』する方針をとった」などと一方的に非難した。
そして、「日本側がすべての財政的な義務を果たすまで協定の履行を停止する決定を下さざるをえない」と通告したという(NHKの報道より)

 この「ザハロワ通告」の中の「日本政府はこの協定が機能するために不可欠なサハリン州に対する無償の技術支援の提供に関する文書への署名を遅らせた」の件は、「近い将来対処させていただきます」的なものとしてさて置き、喫緊的な「安全協定に基づく協力金の支払いを『凍結』する方針を日本側がとった」「日本側がすべての財政的な義務を果たすまで」という部分がとても引っ掛かる。

 この通告を素直に解釈すると、「ロシア側は協定を果たそうとしているのにもかかわらず日本側がお金を払っていない」ということになる。ということは、もしかすると、日本側は、ロシアがウクライナへ行なった侵略に対し下した経済制裁という名のもとに、本来、支払わなければならないお金を『凍結』というかたちで支払っていないのではないのか。

 これが事実なら、非常に由々しき問題だ。支払い期限の定めのある契約関係の中で日本側が一方的に支払いを止めれば、ロシア側も「安全の確保」への義務の履行を中断するのは当たり前だ、しかも、ロシア側には、損害賠償請求権が発生するからだ。相手側だけに義務の履行を催促してはならない。結果、日本経済、根室支局の漁業関係者が多大なる損害を被ることになる。

 日本政府には、一方的な正義を貫く前に契約の履行を粛々と行なっていただきたい。日本経済や漁業関係者を護るため、また、自身の立場を正当化するためにも。