添加物は基本的に「安全性試験」に合格したものだけが認可される。しかし、合格したものの中にも明らかに人体に悪影響を及ぼすものがあり、その数は決して少なくない。
イギリスでは一部の合成着色料を使った食品に 「この食品を食べると子どもの活動や注意力に悪影響を与える可能性があります」と表示されているものがある。英サウサンプトン大学の研究で、「いくつかの合成着色料を摂取した子どもに多動性行動が見られた」という報告があったため、イギリスの食品基準庁がこの表示を義務化したのである。
この表示の対象になった合成着色料の中には、現在、日本でも使用されているものもある(赤色102号、黄色4号、黄色5号、赤色40号)。合成着色料はごく少量の使用で効果があり、たとえば、500mlの液体を着色するには、爪楊枝の先につけたぐらいの分量で十分だ。そんな微量でも人体に影響が出て、子どもがキレやすくなるかもしれないのだ。
では、天然着色料なら安心なのかといえば、決してそんなことはない。アカネから抽出した天然着色料「アカネ色素」は、発がん性があるとして2004年に禁止となっている。また最近では、ハムやお菓子、ドリンクなどによく使われる天然着色料「コチニール色素(カルミン酸)」に急性アレルギー症状の発症例が報告され、2012年5月に消費者庁と厚生労働省が注意をよびかけた。ただし、この発表があった後もアレルギー表示を義務化する動きもなければ、警告などの動きもない。
食品添加物が組み合わされた複合摂取と不純物の危険性
添加物は、そのひとつひとつの成分に危険性があるだけではない。安全性試験を受け認可されているとはいえ、それは一つの添加物のみを調べた結果にすぎない。何種類もの食品添加物を同時に摂取する「複合摂取」については調査が及んでいないのだ。というのも、食品添加物の組み合わせは無限にあるため、実験のしようがないからだ。
食品添加物は化学物質である。複数のものが一つの食品の中で混ざり合うことで、化学反応を起こす可能性は否定できない。実際に、清涼飲料水に入っているビタミンCと保存料の安息香酸Naが食品中で反応し、強い発がん性のある「ベンゼン」が作り出され、問題となった例もある。
コンビニ弁当やファストフードを常食していると、同じような組み合わせの添加物を連続で複合摂取することになる。子どもを含む多くの人たちが、安全性の確立されていない複合摂取を続けることに一抹の不安を感じざるを得ない。…さらに、添加物を合成するときに生じる「不純物」もあなどれない。不純物の含有量はごく微量なのだが、発がん性などを持つことがあるからだ。
たとえば、体に脂肪がつきにくいとして特定保健用食品(通称トクホ)に指定されていた食用油の「エコナ」は、油を分解し新しく合成する過程で発がん性物質が生成されるとして、2009年9月に発売禁止になった。
コーラのカラメル色素に含まれる4-MIも、発がん性のある不純物である。赤色104、赤色105などのタール系色素にも、ヘキサクロルベンゼン(第一種特定化学物質)という発がん性物質が含まれている可能性があるし、紅麹色素の原料、紅麹カビには、シトリンというカビ毒の問題が指摘されている。
また、多くの食品に使用されているベニノキの種子から抽出されるアナトー色素(黄~橙色)という天然色素は、栽培地の水銀汚染によって色素に水銀が含有されることから、国際規格(JAFCA)が設けられたが、日本にはその規格・基準がないために輸入されるおそれがある。
こういった不純物については、基準をつくろうという動きもある。タール系色素の黄色5号については規格ができ、スクラロースやサッカリンなどの合成甘味料についても不純物の含まれる量の基準が定められている。
しかし、だからといって「添加物には規格基準が定められているから安心」と考えるべきなのだろうか。「規格基準を定めなければいけない」こと自体、問題なのではないかと思えるのだが......。
安部司(あべ・つかさ)
1951年福岡県生まれ。総合商社食品課に勤務後、無添加食品の開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わり、現在に至る。熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権 食品製造特許4件取得。食品添加物の現状、食生活の危機を訴え続けている。主な著書にベストセラーとなった『食品の裏側』(東洋経済新報社)、『なにを食べたらいいの?』(新潮社)、『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』(祥伝社)などがある。
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