FIND【389】
1階のロビーに着いて扉が開くとブロンドで青い目をして大人の香を纏ったヴィクトリアが余所行きのスタイルで大きな旅行荷物引く姿でエヴァを待っていた。
ヴィクトリアはエヴァの背後にいた紳士ふたりに軽く会釈をして、エヴァと共に歩いて行く。
途端息を呑んで呆然としたアンドレイにオリーヴがまた笑う。
「風紀委員会のヴィクトリア。知らないの?」
「風紀委員会?」
「これだけ社員いては簡単に遭遇しないか、噂くらい耳にしたこと
ない?社内に仕込んだ美容コンサルタント別名風紀委員。身嗜み
第一で乱れた姿で社内空気汚す社員惨殺。5人いて見詰められて
捕まったら、色華放つお客さんが自分に気があるのかと思いきや
社員用サロン連行されてスキンケアからネイルケアまでやられる
男もだぞ?俺はおぞましい」
「あっはは。噂聞いた。女性社員は勿論だが男性社員に受けがいい
と聞いてる。今彼女を見て納得した。オリーヴのような若い社員
は知らんが中年以降ならそういうとこいかなくて、や、男だから
美容やアロマサロンなんて行かないそれが社内で無料で可愛くて
若い女性に弄られるなんて夢のよう。社長も考えたな」
「 ...そうなのか?」
「オリーヴは若くてルックスいいから女にモテる?そんな男性社員
の気持ちなんかわからん。ああいうのは肉体売ホステスと紙一重
だが全然違う。清潔感あって仄かな色香なんて最高だよ。それと
博識なんだって?大学名を言わないところがまた可愛い」
「 ...アンドレイって年いつくよ?」
「俺?...もういい年だ。38」
「十分中年だな。結婚してない?恋人いない?飢えてんの?
そうでなかったらそんな話しないだろ?ルーシーにチクろ」
「ルーシーって...はは、社長の参謀では俺のことも何でも筒抜けか
しかしオリーヴは若過ぎるってほど若い?社長とタメくらい?」
「俺は1555歳」
「ふうん。それは15は有り得ないから...25歳ってことか」
「25...ふうん。そう採るか」
マリアからクミエルまで飛行機で8時間未来。
電車やバスは面倒臭いのでヘリで『FALCON』オフィスビルのヘリポートまで飛んだ―着いたのは夜の10時過ぎ。
暗くなった夜色の空の中に光眩しくエンジン音けたたましい。
爆風に煽られながらサの社長然とした仕立てのいい濃紺スーツを着たトパーズが背後に秘書に仕立てられたアクアと壮年紳士と中年女性を連れてエヴァたちを出迎えた。
ヘリから降りて来たエヴァをトパーズが抱き締めて歓迎する。
エヴァはカナンでその姿を知っていたものの実際に会って―繊細な美しい顔をして灰色の瞳で優しく笑うトパーズに見入った。
「会いたかったわ!どんな人かと夢見てた。凄く大きいのね!
私のためにありがとう。あの頃...応えられずごめんなさい」
「俺も会いたかった。身長?ユリウスとタメだ」
「そうなの?ふふ。それはウソね。どういう意味?」
「訊くなってこと。トパーズもユリウスと同じ甘え坊だから!」
後ろからオリーヴが言って―トパーズは無視して話を換える。
「紹介する。秘書のアクアとシュリン。土地ガイドや地質調査など
建設監督のセタ、ラドミールは明日ここに来る。今夜来てくれて
よかった。明日はセタは湖の先に造る工場現場、シュリンは今夜
からクリスティーナのプライベートの案内だ」
「宜しく。オリーヴは知ってるわね。こちらはアンドレイ。営業君
だけど旅行仲間で連れて来た。だから彼はここの何も知らないの
スタイリストのヴィクトリア。後からアレックたちが車で来る」
ヴィクトリアはトパーズにうっとり―魂を抜かれている。
気づいてエヴァはツナンを思い出し、イーギンの言ったことを思い出してくすっと笑った―そう言えば、トパーズは女の子を遠ざけるためにゲイになってるんだった。
挨拶の会話を交わした後、セタだけが帰って行った。
「さて、どうする?マリアから来たのでは随分田舎だろうが
観光地の夜の街。沢山の人で賑わってる?出向くか寝るか」
「そうそれトパーズ、待って。アンドレイと話があるの」
言われてアンドレイが、え?とエヴァに向いた。
「どうして貴方を連れて来たかって私と秘密の共有して欲しいから
仕事はないわ?詳しいことは帰りの飛行機で全部教えるから私が
ここに居る間、と言っても数日だけど好きにして?ビーチに行く
他所に飛ぶ。でも呼んだら戻って来て。費用は私の融資カード」
「そんな嬉しいこと言われたら『ライオネル』行きますよ」
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