FIND【408】
肌の仄かな交感が心地よくハートに沁みて純粋に潤う。
長く伸びたギーガの髪がエヴァの身体を優しく撫でる。
エヴァは船長室の壁一面の窓から差し込む朝日を跳ねて
光る綺麗なプラチナブロンドに魅入って―暫く見ていた。
ギーガの頬に手で触れた。
息をしているとは思えないほど穏やかに眠る顔に見蕩れた。
世界中の美を集めて創造されたギリシャ彫刻のような貴方。
今、ギーガの目が開いて―エヴァはくすっと笑った。
「おはよう...もう朝か」
「そうよ。今日は貴方の結婚式。ふふ」
「まだいい。時間ある」
「よかった。お話があるの。私。今日になったから言うわ?」
ギーガは、何?と言いながらエヴァの頬に触れてキスをした。
「これから100年、私を自由にして?」
「! ...え?」
「オフィーリアは美しい女性よ?なら尚、最愛になるギーガが自分
だけを向いてないのがわかるわ。賢いの。いずれ本当の王の意を
叡智って変わるでしょうけれど、幾らセレスタイン夫婦が育てた
としてもまだ経験値が伴わないから...それは私がそうだったから
解るのよ?半分はまだまだナール。だからそう覚るわ。自分だけ
を見てないって。愛人や浮気やそんなカテゴリ外に何かあるとは
若いうちは理解が届かない」
「だから消えると?」
「理由はもうひとつ。私は32年しか生きてない。今までここに居て
ギーガと皆と居て、頭では凄く理解出来る。でもオフィーリアと
同じ。経験値はない。経験が伴わなければイエスと思えない事柄
が沢山ある。今までそんな事柄を沢山収拾だけしていた、そして
そのとき思う。あれもこれも頭で知ってるけど実際がないって」
「それは俺にもどうにもしてあげられない」
「そういうことよ。だからお願い。100年経ったら戻るわ?」
「100年経たず事態が変化したら?」
「私が納得あったら戻る。けど50は有り得ない」
「エヴァの意思で強くそうしたいと思う?」
「ギーガのようになりたい。満ちた人...自分に納得したい」
「理解したくないが...わからないでもない。『シシィ』は?」
「それは資産管理のイーギンと相談する『FALCON』もあるし勿論
当面続けるわ?会社から消えない。けど、ギーガとは会わない」
「中とって68年。エヴァの100歳のバースディーに戻る」
エヴァは噴出して、素敵!と言ってギーガに抱き付いた。
「判った。約束の元に、俺を忘れていい
そのサファイアのネックレスを外そう」
「ギーガ... 」
「こんなネックレスをしていたらサ・ナールでしかいられないだろ
これがあるなら俺を忘れられない。それは望んでいないだろう?
避難所は寒かったから首元を隠せたが、夏の薄着では隠せない」
「ギーガ...嬉しい。ありがとう。わかってくれるの」
「ああ。しかし本当に考えることは同じだナ
ただ、もう1度訊く。それは本当なのか?」
ギーガはエヴァの後ろに回ってサファイアのネックレスのチェーンに仕込まれたどうやっても何を使っても切れないギーガの髪を切ることの出来るビリーの作った特殊な鋏で切ろうとして、切る前に、エヴァの顔を覗き込んだ。
「本当って?」
「 ...つまり...宇宙酔いしたわけじゃない。と」
「勿論よ!ここにいて、宙のモノサシが海と空であることは解った
だから、何しようと無駄だし、何をしても結果が得られるのよ?
そうでしょ?今ここで、私はこうしたいと思ったから素直に動く
それでちょっとギーガにお断りを入れるのはナール的誠意よ」
「はは...わかったよ。エヴァ。だが、ただ放っては心配だ。船にも
戻らないなら困ったり、女性故に怖い目に遭わないとも限らない
イーギンやトパーズやオリーヴは力になってくれるだろうが家庭
を持つ。柔軟欠くから...サファイアを」
「サファイア?私10年もいるのに会ったことないクルー?」
「会ったことないのか?血祭で見てるはずだ。会えば判る」
嬉しそうに抱きついてくるエヴァに―ギーガは我を失くす。
キシャン城では―レッディ王とオフィーリア后の結婚式。
エヴァはキシャンの自宅―ギーガのいない日常を始めた。
サファイアは45と言う立派なオヤジになったキースと意気投合
13年―独身のキースと親友として遊び呆けていた先の寝耳に水。
エヴァって誰?とは言わないが、そんなものは拒絶したい。
ひとつの生活に馴染むとなかなか腰が上がらない。
子供のように猿のように神経肉体共に軽いと思えて融通利かない。
「結婚しない相手との期限は20年。まだ余裕あるがキースはお前と
楽しく遣ってるから自分のこと目が行ってない?過去と縁切れた
途端新しい人と出会う」
ギーガに言われて―言われて見ればそうかもしれない。
そういうことは毎日が楽しければ楽しいほど気が付かない。
「俺との時間は楽しかったか?俺は楽しかった
これからそれぞれの道別れて人生を愉しもう」
キースは単に転勤と思ったが、二度と会えないと悟った。
昔から変わらない優しくさわやかな笑して、ああ。と言った。
FIND【完】
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