【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

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2023/05/30~

 第5幕 聖戦 LICALD/第2章 CECIL 連載中  

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サイドバーの  は 完結の章
2024年01月01日

【甘露雨響宴】以外のNOVEL

Celebration Rain 獣人NOVEL

晴天天子 絵本NOVEL





 執筆予定表
第5幕 聖戦 LICALD/第2章 CECILANA
終 幕 NIRVANA



FIND【408】100年の約束

2009-10-19 | 3-3 FIND




 FIND【408】 


肌の仄かな交感が心地よくハートに沁みて純粋に潤う。

長く伸びたギーガの髪がエヴァの身体を優しく撫でる。

エヴァは船長室の壁一面の窓から差し込む朝日を跳ねて
光る綺麗なプラチナブロンドに魅入って―暫く見ていた。

ギーガの頬に手で触れた。

息をしているとは思えないほど穏やかに眠る顔に見蕩れた。

世界中の美を集めて創造されたギリシャ彫刻のような貴方。

今、ギーガの目が開いて―エヴァはくすっと笑った。

「おはよう...もう朝か」

「そうよ。今日は貴方の結婚式。ふふ」

「まだいい。時間ある」

「よかった。お話があるの。私。今日になったから言うわ?」

ギーガは、何?と言いながらエヴァの頬に触れてキスをした。

「これから100年、私を自由にして?」

「! ...え?」

「オフィーリアは美しい女性よ?なら尚、最愛になるギーガが自分
 だけを向いてないのがわかるわ。賢いの。いずれ本当の王の意を
 叡智って変わるでしょうけれど、幾らセレスタイン夫婦が育てた
 としてもまだ経験値が伴わないから...それは私がそうだったから
 解るのよ?半分はまだまだナール。だからそう覚るわ。自分だけ
 を見てないって。愛人や浮気やそんなカテゴリ外に何かあるとは
 若いうちは理解が届かない」

「だから消えると?」

「理由はもうひとつ。私は32年しか生きてない。今までここに居て
 ギーガと皆と居て、頭では凄く理解出来る。でもオフィーリアと
 同じ。経験値はない。経験が伴わなければイエスと思えない事柄
 が沢山ある。今までそんな事柄を沢山収拾だけしていた、そして
 そのとき思う。あれもこれも頭で知ってるけど実際がないって」

「それは俺にもどうにもしてあげられない」

「そういうことよ。だからお願い。100年経ったら戻るわ?」

「100年経たず事態が変化したら?」

「私が納得あったら戻る。けど50は有り得ない」

「エヴァの意思で強くそうしたいと思う?」

「ギーガのようになりたい。満ちた人...自分に納得したい」

「理解したくないが...わからないでもない。『シシィ』は?」

「それは資産管理のイーギンと相談する『FALCON』もあるし勿論
 当面続けるわ?会社から消えない。けど、ギーガとは会わない」

「中とって68年。エヴァの100歳のバースディーに戻る」

エヴァは噴出して、素敵!と言ってギーガに抱き付いた。

「判った。約束の元に、俺を忘れていい
 そのサファイアのネックレスを外そう」

「ギーガ... 」

「こんなネックレスをしていたらサ・ナールでしかいられないだろ
 これがあるなら俺を忘れられない。それは望んでいないだろう?
 避難所は寒かったから首元を隠せたが、夏の薄着では隠せない」

「ギーガ...嬉しい。ありがとう。わかってくれるの」

「ああ。しかし本当に考えることは同じだナ
 ただ、もう1度訊く。それは本当なのか?」

ギーガはエヴァの後ろに回ってサファイアのネックレスのチェーンに仕込まれたどうやっても何を使っても切れないギーガの髪を切ることの出来るビリーの作った特殊な鋏で切ろうとして、切る前に、エヴァの顔を覗き込んだ。

「本当って?」

「 ...つまり...宇宙酔いしたわけじゃない。と」

「勿論よ!ここにいて、宙のモノサシが海と空であることは解った
 だから、何しようと無駄だし、何をしても結果が得られるのよ?
 そうでしょ?今ここで、私はこうしたいと思ったから素直に動く
 それでちょっとギーガにお断りを入れるのはナール的誠意よ」

「はは...わかったよ。エヴァ。だが、ただ放っては心配だ。船にも
 戻らないなら困ったり、女性故に怖い目に遭わないとも限らない
 イーギンやトパーズやオリーヴは力になってくれるだろうが家庭
 を持つ。柔軟欠くから...サファイアを」

「サファイア?私10年もいるのに会ったことないクルー?」

「会ったことないのか?血祭で見てるはずだ。会えば判る」

嬉しそうに抱きついてくるエヴァに―ギーガは我を失くす。






キシャン城では―レッディ王とオフィーリア后の結婚式。

エヴァはキシャンの自宅―ギーガのいない日常を始めた。

サファイアは45と言う立派なオヤジになったキースと意気投合
13年―独身のキースと親友として遊び呆けていた先の寝耳に水。

エヴァって誰?とは言わないが、そんなものは拒絶したい。

ひとつの生活に馴染むとなかなか腰が上がらない。

子供のように猿のように神経肉体共に軽いと思えて融通利かない。

「結婚しない相手との期限は20年。まだ余裕あるがキースはお前と
 楽しく遣ってるから自分のこと目が行ってない?過去と縁切れた
 途端新しい人と出会う」

ギーガに言われて―言われて見ればそうかもしれない。

そういうことは毎日が楽しければ楽しいほど気が付かない。

「俺との時間は楽しかったか?俺は楽しかった
 これからそれぞれの道別れて人生を愉しもう」

キースは単に転勤と思ったが、二度と会えないと悟った。

昔から変わらない優しくさわやかな笑して、ああ。と言った。



FIND【完】






FINDもくじ FIND【409】につづく。




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FIND【407】2132年―10年後

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【407】 


「素敵な女性と出会ってもルーシーに気遣うから恋に走れない」

「社長...え...?」

「アンドレイの優し過ぎるところよ。だから結局離婚に至った」

「言えてる。優しいというより不甲斐ない」

「判ってるじゃない。はっきりすればいい。鈍重は必要ない」

「会社にね」

「会社を造るのは社員だわ?だからそういう社員は要らない」

「 ...わかった。はっきり別れる」

「そう。ね、ヴィクトリアが貴方をお気に入りよ?」

「え...はは。それはいいかもしれない。派手に振舞うコだが知性も
 品もある。会話もセンスいいし巧みだ...社長が大切に育てたのが
 よくわかる。クミエルの旅行中に...彼女に...言われた」

「何よっ、そうだったの?」

「だから...頭の中が蜘蛛の巣張っていて」

「そう!じゃあ今しっかり煤払い出来た」

「社長...はい。出来ました」

エヴァは、きゃああ!と叫んでアンドレイに抱きついた。

「あはは。それで、社長は?まだ過去癒えず?」

「いるわよ恋人は。でも、いいの。私はまだ若いから!」






2132年―10年が経った。

サギロン街地下のサ御用達娼館『ライオネル』

クミエルに広大敷地誇って今やラキス軍の空母ドック完備した造船会社『FALCON』

『リーベ・フロッス』の『フレハーウェグ』はカタチ整えて世に広く知られるブランドとなった。

『シシィ』は財界で表にも裏にも活躍していた。

ライジは医者になって『FALCON』に戻りトパーズと仲好い確執を続けている。

イオニアスは、行く宛ないので『FALCON』に骨埋める。と言う。

ラジオや街中から―氷った心を温かく優しく溶かすような
美しい歌声が聞こえる。それはペルセフォネの柔らかい歌。

19の容姿のままにエヴァは32歳『シシィ』社長。

おじい様の亡くなったことから本社をキシャンに移した。

『シシィ』サロンレディーは人数を増やして課となった。

アンドレイと結婚してヴィクトリアはサロン課に力入れた。

ヴィクトリアを課長に結婚していようがいまいが10代だろうが40過ぎていようが図々しくも自らをクリスティーナ・ガールズと呼んで皆の笑を誘っている。

劣化しそうな女性の特徴―適齢期に拘る、結婚自体が目的、責任経験しない、実現可能性低い夢を語る、楽に取れそう流行資格、お稽古や教室好き、難題達成努力経験しない、興味ないと言って人との対峙を避ける、嫌だ疲れた愚痴口癖、言われたことだけやる、我慢して遣る、趣味がない、滅多に人を褒めないが自分は褒められたいなど厳しく疎んで女性らしい辛辣視線でレディー教育に励んだ。

糟糠の妻と簡単に離婚する臣下は忠誠簡単に裏切る。

そんな臣下に要職与えない。が、古来からの王の知るところ。

エヴァ下サロン・レディーだからこんなところまで知識した。

すると、オリーヴも言い訳出来ず逃げられず。

エヴァに社内恋愛がバレて結婚しろと命令されて身を固めた。

小期間だけ『シシィ』お手伝いのつもりが永遠重役となった。

クミエル領主ラドミールはルナに愛されるならそれより愛するほど意中となって仲睦まじく。

その後『FALCON』のトパーズとラドミールの執務として残ったニコルに支えられて問題起こることなく観光地とラキス軍駐屯と造船所としての領地をよく治めた。

アランはデアン8人を連れてオースウ・ミゲル寺院レギオン下
に戻ったが、その後、アランだけが今度は城から召集を受けた。

任務はオフィーリアの護衛官―と言っても城にいて危険もないので御用聞、他の誰に任せるよりエヴァの困窮時に我々を欺きつつよく世話したアランが適任だ。とディーライが判断した。

オフィーリアは現在20歳。

ギーガはこの12年、会うか会うまいか悩んだ末、スリッパを放って投げて、その日まで会わない結果となり、それも天の采配―従って未だセレスタインに預けたままオフィーリアと再会していない。

再会の日は結婚式の日―2132年9月24日。

その日を今日に―エヴァはギーガの胸の中で目を覚ました。






FINDもくじ FIND【408】につづく。




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FIND【406】未来予想図

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【406】 


連れて来たのはそれもあったが『ライオネル』解放のため。

秘書をして貰っていずれ誰かと結婚して辞めて行くこと見越して。

それを今から言っておくのは...それがいいのか。
だが―ライジとの関係は幾らなんでも俺に悪夢。

エヴァの機嫌を損ねないよう何とか対策しなければ...。

翌朝になっても一向にエヴァが戻って来ないので―結局今日も
シュリンの仕事は、ヴィクトリアと観光に行かせることにした。

今はいいか...久しぶりだもんな...船長との時間。

そして、イオニアスに『FALCON』に居ないか?と言った。

「出来ればずっと。無理言うならせめて10年。医務室頼みたい
 こんな工場だ。保健士より救命士より医者を常備していたい」

イオニアスは、命を救って貰ったから。と喜んで了承した。

ペルセフォネはニコルとアランの警護の下で再び山に
登って、鎮魂の祝詞を上げて―それは21日間に及んだ。

そして、イオニアスの完治後、音楽活動にマリアに渡った。

ジルコン博士は『FALCON』オフィス・ビル最上3階全て、生活に十分行き届いた空間と研究設備のシンプルモダンの美しいフロアが与えられて―サニーが正式に世話と助手を任せられた。

『クワロフス』兵だったサニーはこのとき15才。

傷の癒えたライジは、トパーズから突然、医者になれ。
傷が治ったんだから、今直ぐっ出て行け。と言われた。

意味がわからないライジは馬鹿みたいにぼかんと口を開けた。

お前が『FALCON』に居たいと望むなら必要人材になれ。俺が
欲しいのは営業経営人材ではない。医者か..船の作れる職人だ。

今からならどちらでもなれる。だが、お前の鍛われた高慢では神聖と繊細の崇高神経と真摯に動く職人なんて無理だ?だから、今から予備校行って大学行って医者になって10年後に戻って来い。

全財産カルセドニーに取られたなんて理由にならん。俺が出す。
勿論、お前の本籍はここで、保護者は俺だ。養子にしてもいい。

だが、俺は社長だ。『ライオネル』でも『クワロフス』でもない。

だから結婚するっ。お前を会社に入れるが、俺に口出しするな。
わかったな?全て呑めないならどっか行け。二度と姿を現すな。

ライジに向かって言い、エヴァも文句あるまい。と悦に入った。

男の家に転がり込んで自分に都合よく付き合うも、本気で同棲とか結婚とか冗談でも無理。俺が背負える容量を越す。これで了承してくれ。エヴァ。

ライジは相変わらずトパーズが何が言いたいのかさっぱり不明。

しかし、ライジが欲しかったのは、自分を見てくれて自分を裏切らない人―ライジは欲するもののための努力を惜しまない。

条件を提案されたら断わる理由はどこにもなかった。

「それを受ける。母と縁切ってトパーズの養子になる!」

「ママが寝込むぞ」

「あの女はそんな人間ではない」

「なら、お前もそんなママのような人間だな」

「だったら何だというんだ」

「お前は要素を学んだだけだ。お前が何者だろうとどうだろうと俺
 は知ったこっちゃない。後で俺に愚弄されただの何だのその辺の
 馬鹿みたいにガタガタ言うな。俺の言うことがカンに触る嫌だと
 思うなら俺を忘れて今直ぐ出て行け。折角解放して遣ったという
 のに...お前が望んだことだ。好きにすればいい」

「 ...トパーズ...ありがとう」

「礼か?言われる覚えはない。俺はお前にプライドがあるから
 信用するんだ。プライド失くした行動してみろ今度こそ棺桶」

「了解だっ!」






『シシィ』に戻った後、エヴァはアンドレイを『シシィ』に置く『FALCON』営業副社長にした。

蓋を開けてみれば、アンドレイはルーシーのことで悩んでいた。

自分が荒れていた時代に知り合った女性 だからか
それは関係ないと思うが、そんな気がしてならない。

彼女から愛されていることは判っているし自分も
ルーシーを好きだ。しかし、結婚に踏み切れない。

過去の結婚の失敗からではなく生活観念、価値観、趣向、未来の
理想像、何もかも違う。それで言うなら元妻の方が一致していた。

だが、彼女はあんな人間だった。

今―何がどうなのかよく見えない。

『シシィ』に入ってから、無我夢中で仕事だけをしていた
せいでよく見ていないと言った方が正しいかもしれないが。

エヴァはアンドレイの吐露に、気持ちはわかる。と言った。

「でも、自分のことしか考えない独身者は社員に要らないわ」

「 ...それを考えて困っていた」






FINDもくじ FIND【407】につづく。




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FIND【405】解放甘美

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【405】 


「あっわかったっ!俺はっウソを付いてましたっ
 ライジのことを、とってもとても愛してます!」

「 ...そう。じゃあ、これからちゃんとっきちんと!表でそうして
 ライジが可哀相過ぎる。わかってるわよ?トパーズがどんな人間
 で今までライジに何してきたか。トパーズの今までのログを色々
 観たわ?それって卑怯者?根性弱い?毎回毎度結婚無く20年内に
 別離、それも相手の方から別れたいと言わせるための暴力に暴言
 不誠実、虚言我儘、思いつく限りそういうこと頑張ってる」

「 ...。」

「それはライジに利かなかったようね。それでライジがどんな神経
 でトパーズをあそこまで好きになったのか私はわかんないけど...
 人生賭けて収集して来たもの持っているもの全て捨ててトパーズ
 を追って来たんだから今度は本気で二度と相手に暴力暴言しない
 って私に誓って。誓わなかったら私」

「あ... 」

こればかりはギーガはくくっと笑った。

「 ...どうなのよ」

「あ...そればかりは即答が... 」

「誓えないの?」

「や、誓う。けど、いきなり優しくなったら気持ち悪、」

「じゃあ、優しくなるまでギーガと口利かない」

「えっ... 」

ギーガは腹を抱えて笑った。

「エヴァまで...まあ、船長と同じか...何だよ船長が笑うかっ」

「あはは。お前の責任だ。俺はお前を責めれば済む」

「 ...。」

「何ふたりでぶつぶつ言ってるのよ」

「えっわかった。戻ったら直ぐに優しく
 するっ!...不器用なのは見逃してくれ」

「そんなの意思の問題。始終見張ってる
 わけじゃナシ。カナン確認するけど?」

「ほらあ...頼むよ、俺そういうの苦手なんだ...大目に見てくれ」

「わかってるわよ。イオニアスもそれはいい提案と思うわ」

「ほんとかっ!じゃあ、一緒に戻ろう!」

エヴァの手を握ったトパーズにギーガが、待て。と言った。

「お前は戻っていい。エヴァは少しここに」

「だって船長、城...あ...わかりました」

トパーズはエヴァに、ありがとう。と言って―出て行った。






ギーガはベッドに上がってエヴァを抱き寄せる。

「夕べ、クルーを追い出したのは嬉しかった。のに俺まで追われた
 俺は扉外で一晩過ごした。それは俺の勝手だが、何で俺を干す」

「あ、ごめんなさい...自分を見失ってた...ギーガに
 依っては...ギーガはトパーズの味方すると思って」

「エヴァの判断は正しかった。俺も無神経だったと反省した」

「え」

「反省文述べるじゃない。それは聞き流して。エヴァを『シシィ』
 に戻してからディノウヴォウとマリアでは12時間時差。こうして
 友にベッドの中にいるなんてあってもたまに。それで夕べは期待
 した。その分ショック大きかった。どうしてくれよう?」

「わあん。本当にごめんなさいっ」

エヴァはギーガの身体に縋って―可愛く抱きつく。

「私もキシャンに...でも今はおじい様と暮らしたい」

「それはわかる。俺がマリアの夜に行く。それはいい?」

「ほんと?...でも城のこと、」

「これからは午後は姿消す王。午前と夕方から夜に現れる。ラキス
 は人の暮らしの明るくなるよう陰で組織し采配。見えない存在だ
 表で華々しい式典などするのはナールだけ」

エヴァは、好きっ!と言って抱きついて押し倒してキスした。






トパーズは、腹減った。と『SPRING』に来たが、立ち止まった。

もしかして?と思って『FALCON』に戻ったらシュリンが夕飯
を作ってテーブルにおいてあった―食べず戻って来てよかった。

しかし、食べながら、どうするか...。を思い悩んだ。

社長宅を建てライジと暮らすとして...連れて来たのに、明日
からご飯も掃除もいらない。来なくていい。なんて言えるか。






FINDもくじ FIND【406】につづく。




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FIND【404】籠城解除

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【404】 


「謝ったら?」

「謝るのは当然だが、機嫌直すのはアイディア必須」

「アイディア... 」

皆が話している脇でギーガは、怖かったのか。と思っていた。

いつも元気で明るいエヴァに見過ごしてしまう感情―。

エヴァにラギしても当然のように無視。

トパーズは船長室の前に来て扉を叩いたり
SPを鳴らしたりしたが、無視され続けた。

ギーガは船長室の扉を開けられるし、室内にサジ出来るが、それで怒り増幅されては意味がないのでトパーズと同じように努力した。

エヴァから反応はない。

船長室内は当然カナンも見れない。

仕方がないから出直すかな。なんて誠意ないこと出来はしない。
と思いながらギーガとトパーズは船長室の扉の前に座り込んだ。

そしてふたり肩寄せ合って眠っていた。






ハッと目を覚ましてトパーズは、何時だ?!と腕時計を見た。

クミエルは夜中12時...夕方から6時間ほど経ってる...遣り残し
は、ニコルとアランが居るから...あ、ディノウヴォウは朝6時。

「船長、起きろっお前のところは朝だ。行かなくていいのか」

トパーズの肩に顔を埋めていたギーガが、姿勢悪くして痛い...。と文句言いながら目を覚ました。

「あ...エヴァは?」

「わからん。ブリッジが何も言わないからまだこの中だろ」

トパーズは言いながらSPを掛けたが、ギーガが止めた。

「俺が開ける。こんなに時間経ってる。許されるはずだ」

「許されなかったら?エヴァの最愛の船長が、放られたんだぞ」

「む...それは考えない。行くぞっ」

ギーガは深呼吸をして気合を入れて―扉をそっと開けた。






船長室の中はしーんとしていた。

人の気配がない。

思えば、初めて会ったときもこうだった―妙な緊張感。

ソファのあるフロア、幾重もの薄布カーテンを捲って寝室。

ベッドで―エヴァがすやすやと幸せそうに眠っていた。

ギーガとトパーズ、ふたりでホッとした。

「起こす?」

「待つよ。船長は城に戻っていい」

「馬鹿を言うな。俺にも問題が浮上してる」

「じゃあ、ここで待つか」

「エーナ掛けとかないと逃げられるぞ」

「そんなことして更に怒らせたらっ船長だって当てにならない」

「 ...それが重大問題だ」

「おらっ凹ンでる場合か」

言い合ってるとエヴァが目を覚ましてすっと起き上がった。

「なっ...ふたりで何してるの?!」

トパーズが急いでエヴァの手を握って、怒るな。謝る。無神経だった!このとおりだ!済みませんでした!許してくれ!と言いベッド脇の床に場に土下座して深く頭を下げた。

エヴァは不満そうな顔をして返事をしない。

「だが、現実的に考えよう。いや、俺が考えて見た。あいつはこの
 世に存在する。妹から聞いてエヴァが『シシィ』の社長と知った
 だろう。あの医者が本気でエヴァを...っんなこと考えているなら
 『シシィ』に現れるかもしれない。だったら『FALCON』に縛り
 付けておく方がよくないか?」

そのアイディアにギーガはぷっと噴出しそうになったが堪えた。

更に怒るか機嫌が直るか一か八かだったが―エヴァは笑った。

「そお?じゃあ、ライジを大切にする?」

「え」

「それとこれとは話が別だという?だから
 違う場面で話してっ?すると追加条件が」






FINDもくじ FIND【405】につづく。




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FIND【403】船長室占拠

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【403】 


「終ったの?」

「ああ。まだ眠ってるが。隣の部屋に移したよ。行っていい」

ペルセフォネは走ってエヴァの部屋を出て行った。

「トパーズ、イオニアスの足は元に戻る?ゼルダは何て?」

「フツウ骨折のように1ヵ月で歩けると言った。骨は再起不能
 しかし、金属入れたから平気とか何とかとか言って...知らん」

「よかった。片足失ってしまうかもって少し怖かった」

「そういう現実は避けたいね?エヴァは会いに行かないの?」

「時間置くわ。明日とか...ふたりの事情は調べたの?」

「避難所でのこと見たよ。ハハ、ヤなもの拾ったか?
 だからああいう無茶するからそういう目に遭うんだ」

「そうよ、あのとき誰から逃げたかったかってあの医者、凄い
 遭遇。会わず退散希望。けどラドミールは会ってくれないし」

「いいじゃないか。ゆっくりして行ったら?しかし、なあ?」

「何よ?変な笑顔」

「フフフ...イオニアスは流浪の医者だ」

「なっ、まさか?!」

「そういうことはオーナーが口出しする?」

「 ...。」

エヴァはぷりっと怒ってふらっと消えた。

「あっ!どこ行きやがった!エヴァっ?!」

『こっち来たぞ』

エヴァにラギしたつもりが、パイからラギが来た。

「見てたのか。ブリッジか?!」

『船長室。暫く無理だな。船長に助け求めろ』

「くそっ手のかかるっ」






船長室にサジしたはいいが―ここでもエヴァはイラッと来た。

船はディノウヴォウ時間。

クミエルが夕方ならディノウヴォウは夜―添寝当番クルーが居た。

そんなことはわかっているが、寝るでもなく、ギーガとクルーが
悠長に語らっている場に現れて途端エヴァはクルーを追い立てた。

ギーガは呆気に取られて―笑い出した。

「どうしたんだ?...クルーに八つ当たりか?」

「ギーガも出て!」

「え」

「城で寝なさいよっ、今のクルーを城に呼べばいいでしょ!」

「ちょっ待て。落ち着け、一体どうした?トパーズと揉めた?
 俺に話すればいいだろ?そんな、俺をここから追い出すなよ」

よ と言ったときには既にギーガの身体はブリッジだった。

ブリッジの面々が突然現れて誰かに喋りかけているギーガを見た。

皆は驚き、ギーガは、え?と辺りを見回した。

「船長... 」

「何だ?」

「もしかして...エヴァに追い出された?」

ギーガは、信じられない...。と言ってひとりで呆然とした。

次いで、エヴァに何があった?とトパーズにラギした。

トパーズはラギで応えずブリッジに現れ―事情察して笑った。

「ハハハ...って笑ってられねえ...無敵だなあ」

「話をしろ」

トパーズが一連を話して、それを見ていたパイが補足する。

「その...イオニアスって医者が相当嫌いと言うことか?」

「嫌いというよりあのときの恐怖を思い出すんじゃないの?あんな
 コでもエヴァはまだ外見と同じ年しか生きてない女の子だ。頭で
 了承あっても言葉に出来ない恐怖拒絶は走る。まだ半分ナール」

パイが言ってトパーズが、気づかなかった。と言った。

「わかってやれないデリカシーのなさってヤツね。雄の」

「雄もそうだが、ついな。船長の片割れだから女の子でも
 年若くてもナールみたいなことはない、平気だろう、と」

「雄に拉致られるとなったらそら死ぬより怖いな...船長でもエヴァ
 共鳴無理ねソコは。それこそ下手に優しく同情共鳴したら、逆に
 ぶっ殺される。見透かされるからな。女は敏いのだ。エヴァの気
 が済むまで放っとくしかない」






FINDもくじ FIND【404】につづく。




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FIND【402】イオニアスとペルセフォネ

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【402】 


待望のヘリが来てくれた!と飛び上がって喜んで空に
向かって手を振り回して、横たわる男を励ます女の子。

岩影にサジして、そのふたりの前にエヴァとトパーズが現れた。

エヴァが、ペルセフォネ?!と思わず叫んだ。

後先考えない自分の発声に、しまった。と思ったがもう遅い。

「えっ?!クオラっ?!どうしてっ無事だったのっ!よかった!
 私とても心配していたのよ、そう、お兄ちゃんも貴女のこと」

「あっ...ありがとう。どうしてここに?救助待って?」

「何だ、知り合いか?こっちに倒れてる男がお兄ちゃん?」

トパーズが指した方を見ると横になっている男の人がこちらを
向いて憔悴し切った顔で笑った―それは、あの医者イオニアス。

「お兄ちゃんって?!」

「私がここに来るのを止めたのに私が言うこと利かず それで一緒
 に来てくれて、けど昨日の夜、足場が悪くて私が上から落ちたの
 お兄ちゃんが降りてきてくれて上から岩が...SP充電切れて」

イオニアスの右足が大きく重そうな岩に挿まれていた。

「身動き取れなくて...救護警邏は...今はしてないのね」

災害処理の終った先にそれはなかったが、『FALCON』敷地内侵入者の探知はしている。だが、湖の観光客排除はされていなかった。

「さて、どうするか」

言いながらトパーズは、横たわるイオニアスに寄って
ポケットから出すフリをして、液体の瓶と布を出した。

意識はっきりしてるイオニアスが、君は医者か?と言った。

「医者じゃない。だが、放っておけない」

「それは何だ?」

「眠れる薬。お前より先に彼女から眠らせよう」

トパーズは、エヴァと喋っていたペルセフォネの背後に寄って
突然抱き付き―ペルセフォネはトパーズの腕の中で気を失った。

びっくりしてエヴァが、何っ?!と叫ぶ。

「眠らせないと救い出せない。大掛かりに救助隊呼ぶ?
 夕べからここにいたんじゃふたりとも腹減ってるだろ」

成程。とエヴァが感心している中、お前たちは何者っ?!と叫んだイオニアスも静かになった。

ヘリはいらねえ。とトパーズがラギ。

低くホバリングしていたヘリは回れ右して飛んで行った。

そして、アランがサジして戻って来た。

「やれやれ。医者はいないと言うのに今日は医務室大入りだな」

トパーズがイオニアスの足を押えていた大岩をアジして消した。

アランがペルセフォネをアジして共に消えて、トパーズがイオニアスをアジして―エヴァも同時に消えた。






ふたりを『FALCON』のビルに移動して―ペルセフォネはエヴァの部屋のベッドで目を覚まさせた。

シュリンがいないのでトパーズはキッチンの勝手が全くわからず―『SPRING』からアジしてペルセフォネに食事を出した。

コース料理のように豪華な食事に、ペルセフォネは
驚きながら事情を話しながら―空腹を満たして行く。

イオニアスの足は、応急処置しか知らないイアルでは対処
出来ずゼルダが呼び出されて―処置室で手術を始めていた。

「お兄ちゃんは...手術時間掛かるの?」

「骨砕けてるそう。痛いのによく意識あったって言ってた
 あ、治るって言ってた、心配いらない。でも、どうして」

「あっ、人がいるの、聴こえた。違う...何て言ったら良い?自分が
 死んでしまったことを自覚してない魂が呻いている。鎮めなきゃ
 と思って呼ばれて夢中で...お兄ちゃんはいつもばかばかしいって
 怒る。誰かが事実教えてあげないと...あの場所に縛られる」

「そう...私はよくわからないけど...それは本当ね。でもひとりで
 行かなくてよかった。もしかして道連れされるところだった」

「そうなの...そうだわ。でも、もう一度行かせて?」

「そう言うと思った。ふふ。じゃあヘリで。レスキュー同行」

「クオラ...ありがとう」

「あ...ペルセフォネが言ったことは本当よ?私は...クリスティーナ
 ここ一帯、ジウォルから『FALCON』になったこと知っている?
 敵情視察で違う人になってたの『FALCON』は私の会社」

ペルセフォネは言葉にならないまま驚いて―エヴァを凝視した。

「やっ...ぱり!そうっ!嬉しいっ!私、本物のクリスティーナと」

「そんな風に言って貰えて嬉しい」

「元気になったか?」

トパーズが新しいスーツに着替てエヴァの部屋に入って来た。






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FIND【401】救助要請

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【401】 


沈んだエヴァが水面に顔を上げて、最高!と言ってはしゃぐ。

トパーズが顔出して、無茶も船長と同じかっ!と言って怒る。

「それで、どこに向かうんだ?このまま水中遊泳か」

言ったアランにエヴァが、そう!と言って水中に潜った。

トパーズが、馬鹿あ!と追い掛け、アランは呆れて続いた。

毎年起こっていた洪水に加えて前回は大洪水となって過去の汚泥が一気に海まで押し流されたが、その後、流れて来て溜る瓦礫や死骸で酷く濁った湖の水―しかし、今はとても綺麗に澄んでいた。

まるで南の島の色とりどりの珊瑚礁が太陽に反射してきらきら光る綺麗な水質の海のよう。

コゼセットの湖の水は水草なく透明で澄み渡ってる。そして塩味。

エヴァが、何故?と訊いてトパーズが笑った。

「だからっ説明しようと思ったら災難遭った。舐めなくてもいい!
 ここも『FALCON』敷地内だ。環境保全約束上、それは王にね?
 この前の洪水前までこの湖はコゼセットとトカーナの生活用水に
 使われていた。それを使用禁止にして海水にした。ここで進水式
 して海に出す。ラキス軍のドックはセタがいたところ」

「ここから海まで結構距離あるのに?」

「ここから海までもずっと『FALCON』敷地内。1年内に工事完了
 トカーナの生活用水はセンルー山に貯水池作った、コゼセットは
 ルコから給水契約。ナールに湖任せると汚すばっかだしな」

「はあ...そうか」

「湖については以上です。って何で湖の中で解説だよっ」

「うふふ!了解したわっ。ご苦労様っ」

水中できらきら光る午後の陽を纏って裾長い白いワンピースで
深く遠く潜り行くエヴァは人魚のように嬉しそうに泳いで行く。

幻想的で美しく―トパーズとアランは息を呑んで見惚れた。

船長が10時間も溺れていたのは・・・わかる気がする。






水面に顔出してトパーズが、そろそろ上がろう。と言った。

「いやよっ。いいじゃない、夜まで居たって楽しいわ」

「おいい、俺たちまで溺死させるかっ」

「ニコルが待ち草臥れてる。空見ろ、ヒマそうにうろうろ」

アランが言って―空を見上げると天高くに小さい姿で動くヘリ。

『やっと出て来た!ロープ下ろすぞ』

ニコルからラギ―エヴァは、いやっ!と言って泳ぎ出した。

「こらっおいっ!」

トパーズがエヴァを追って、アランがニコルに、向かった
岸に下りてくれ。そこで捕まえる。水中は無理。と言った。

エヴァにエーナを掛けてサジして即ヘリの中 も出来るが、
無理矢理そんなことをしたら後が怖い―付き合うしかない。

『岸に上がるか?日暮れまで水中に居そうだ、あっ!』

「何だ?」

『真っ直ぐの地点。泳がずサジで岸に上がれ、人がいる!』

「ニコル、そうか、その手があったか。わざと人を、」

『違う、本当だ。今確認する。兎に角、岸に上がれ!』

ニコルの尋常ではない声に3人は驚いた。

エヴァは文句垂れつつ仕方なく―言うとおりにした。






ずぶ濡れで岸に上がって―トパーズがクリア機を掛けて
乾かそうとしたが、エヴァが、ダメよ?と言って止めた。

「人がいるんでしょ?私たちどこから来たのよ?水の中よ」

「え、その方がずっと怪しい。違うだろっ。俺たちは水の中に
 いなかったことにする。だから焦って岸上がったんだろうっ」

『そんなことはどうでもいいっ、岸に上がったらお前ら
 はもう向こうからは見えない。救助を求めてるようだ』

「え、救助?!」

『どうやら...負傷してる。男が横になっていて女の子が俺、ヘリに
 手を振ってる。画像を送る。俺はそいつらの上空行く。アランは
 ヘリに戻って救護を、』

アランは消えて、ヘリはエヴァとトパーズの上空から遠く去った。

「ちょっと...山向こうに行ってしまったわ?遠いの?」

「空から肉眼で見えたからひとつ向こうの山って程度だろ」






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FIND【400】ヘリから湖ダイブ

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【400】 


その後、トパーズだけがエヴァたちの許に戻って来た。

第一声、何てこと!とエヴァとその場にいた皆、歓喜して叫んだ。

「ラドミールに断わる理由なんてないよな。それ以上に意識不明だ
 暫くふたりだ。付き合ってられないから、俺たちだけで行こう」

嬉しくて顔が緩んだままトパーズはクミエルの秘書官や執行幹部らラドミールが連れて来た役人に、今日は仕事ナシにして領城と連絡取って結婚式の段取りでもしたらどうか?と提案する。

「え―私またクミエル領城に行けない?」

エヴァはこれ以上ないというほど嬉しそうに不満を口にする。

「ああ。俺も想定外だ。あれじゃ暫く仕事なんて出来ないね」

「ふふ!私はイーギンがそんなことしたのが信じられない!」

「まさか?イーギンは彼女の能力について紹介状を事務的に添えた
 だけだ。んで、書面の端の方に、ラドミールに会わせてやれって
 ラクガキしてあった。例の暗号語でな。しかし、訳わからんから
 カナンでルナのログを見た」

「トパーズ...ふふ、そう!?トパーズのそんな優しい配慮が
 自分にも手配されたのね!!とてもとても素敵な話ねっ!」

トパーズは瞬間ぶすっとして、行くぞ!と言った。






予定は、ラドミールも彼の臣下も乗せたヘリで『FALCON』
全敷地を飛んでトパーズから説明を受ける半分遊覧だった。

今日でなくてもよくなったラドミールと臣下面々を『FALCON』に残し―トパーズとエヴァはアランとニコルを連れてヘリに乗った。

ニコルが操縦桿を握って横にアラン、下を見渡せる扉近くにトパーズとエヴァが座って最初にセンルーの山の方、元トカーナ領の端に向かって空高く飛び立った。

トパーズは『FALCON』全敷地のホログラフを現して実際現場
位置を示して、どこに何を作るか作っているかをエヴァに説明。

しかし、緑の中を飛んで、機体の扉は開け放たれて風が通って
気持ちいいとは言え真夏の空を飛べば太陽に近くて気温は熱い。

エヴァは水筒を手放さなかったが、終に、暑い。と言った。

「秋に来たらトカーナの不可視の街は披露されて移住済んでる?
 ホログラフで見るお伽の国のような町並みよっ!空から見たい」

「ああ、また見せてやるよ。だが、それは春だな」

「春かあ~ほとんど1年後ね」

「今始めた規模でかい会社。あ、コゼセットの端に来たよ」

セタが現場にいる建設現場、建築中の機械や車両の込み入った
地帯の上を飛んでいたかと思ったら突然視界が開けた―あの湖。

「え...凄い...広いっどこまでも...海のよう!」

機体外に身を乗り出すエヴァの腕をトパーズが支えた。

「落ちるぞ。覗くんならベルトしろよっ」

「ねねっ、ここってあの湖?!だったら行きましょうよ!」

「え」

「私ひとりで行っても良いのよ?それは困るでしょ?ほらっ!」

「何っ、何を言ってるんだ?!」

トパーズが気を緩めた隙にエヴァはヘッドホンを外してトパーズの腕を握り返し、ヘリの空と繋がる空間、機体外に―飛んだ。

咄嗟トパーズは機体縁に捕まって―エヴァに腕を掴まれていたもう片方の手はエヴァの腕を掴み返した。

「馬鹿なっ、何考えてるんだっ」

「何言ってるのよっ泳ぐのよっ!行きましょうよ?放して!」

ヘリの機体にぶら下がる姿勢で宙にいるエヴァはトパーズ
から腕を捕まれたまま面白そうにきゃっきゃと笑っている。

「きゃああああ~気持ちいい~!!」

慌てニコルが、トパーズ、機体下げるから放すなっ!と叫ぶ。

アランは踏ん張るトパーズの横に移動して下に向かって叫ぶ。

「エヴァ、飛んでいいが高度下がるまで待て!死にたいのかっ」

「飛んでいいって、おいっ、」

「ダメと言えるか。俺も行く。水面近くなったら手を放せ」

「手を放せって!?」

「機体握ってる方の手だっ。エヴァは放すな」

「まじかよ...俺、スーツ... 」

「ハハ。上から見て着いた陸に救助に来るよ。付き合って遣れ」

ニコルの陽気な声の聞こえたヘッドホンを外して―トパーズは
水面の距離測って機体を手放した。同時アランも水面に飛んだ。

激しい水飛沫を巻き上げて大きなものが落下する音が3つ響く。

ヘリは大風で水面に波紋を作って旋回して空高く戻って行った。






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FIND【399】ラドミールと再会

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【399】 


イアルにライジを頼んでエヴァとトパーズ、ニコルとアランの4人は医務室を後にヘリポートのある屋上に向かった。

「それで、どうするの?」

エヴァがトパーズに訊いた。

「どするか...捨てたところで自殺する玉じゃない。こうなったら
 問題は20年経っても老化しない俺をそのときどう説明するか」

「そんなこと20年後に考えれば?判断なく迷ってるでしょ?
 てことは、ライジと一生付き合う気なんじゃない。ふふ!」

「 ...。」

ふたりの背後を歩くニコルとアランから失笑の音が聴こえた。

オフィス・ビルの屋上にヘリが到着するとオースウ・ミゲル寺院で会ったきり電話しか交流なかった懐かしいラドミールと彼について臣下が数人、降りて来た。

エヴァはラドミールを見止めるなり駆け寄って抱き付いた。

「会いたかった!私のために沢山ありがとう!」

「俺の方こそ。どれだけ会いたかったか!クミエルは感謝しかない
 長年困窮していた問題の何もかもが解決した。名を変えて避難所
 にいるなんて何をしたいのか不思議だったけど実情見てたんだね
 凄いよ。そういうこと俺は忘れ掛けていた。自省した」

「ふふ!そんなこと!ラドミールの役に立てて嬉しいっ!」

もじもじして言葉に詰まったエヴァにトパーズたちが笑った。

そして、トパーズが前に出て来た。

「ラドミール、中へ。外は暑い。直ぐ帰るのか暫く居るのか」

「現状説明を受けて視察後にクリスティーナを城に招待するよ」

「わっ本当?!やっとクミエル領城に行ける!...視察って?」

「後でヘリで空から『FALCON』敷地全てを見て回る。いつもは俺
 がヘリで迎えに行ってたし、現状の報告も俺が領城に行っていた
 なのに今日わざわざ呼んだのは会わせたい人がいるから...それは
 クリスティーナじゃなくて」

言ったトパーズにラドミールとエヴァが、え?と反応した。

「クリスティーナなら連れて行けば済む話だ?そうはいかない
 人。ラドミールがお持ち帰りするかどうか。決めて貰うのだ」

エヴァが、お持ち帰り に反応してキャッキャと笑う。

「どういう意味だ?誰?」

先頭を歩いて社長室に向かいながらトパーズはやにやに笑う。

「キシャンでお前に一目惚れして以来ずっとお前を慕ってた女性」

「え... 」

「お前と絶対結婚すると思っていたが掠ることなく時間経ったそう
 イーギンとこの社員。彼女はうちの社員研修の講師で来てお前と
 出会う工作しようとしていたが、事情を知った俺は、んな面倒臭
 段取付き合ってられるかってことだ。連れて帰るならとっとと」

ラドミールは呆気に取られてぽかんとした。

エヴァは、きゃあああっ!と嬉しい悲鳴を上げた。

「なんてこと!ステキ!誰?!私知ってる?」

「クリスティーナでなくとも沢山の人が知ってる
 『フレハーウェグ』のモデル。とても有名な、」

「え゛っ?!ルナ!?本当?!ラドミール、凄いわっ素敵!」

エヴァははしゃいでラドミールに抱きつく。

ラドミールは誰かわかっていないのか突然の不思議
な話に意識が付いていけないのか―呆然としていた。

トパーズが笑いながらラドミールの肩を抱き寄せて耳打する。

「モデルだぞ。飛びっきりの美女。ロセッティア大経済学部卒のっ
 エリート。MBA取得して大企業幹部に当る..能力を持つ。しかし
 彼女の希望はそんなところにはない。希望はお前の奥さん。んで
 イーギンの話では家庭のことが出来るかどうか不明。クミエルの
 領主夫人、ど?イーギンが押すくらいだから性格はよいだろう」

「イーギン...ハハ...よいというのも色々だが」

「なあ、書類情報より何年も前からお前を好きだったことが重要だ
 もう忙しく走り回る問題もなくなったんだ。領主もそろそろ結婚
 それとも俺たちが知らないだけで既に結婚を考えている人が?」

「いやない」

「そうか!だったら決まりだ!」

「おいっ、」

「怖気付くか?ハハ、お前はそんなことしたことないだろ?
 男に惚れてる女は素直。領主の妻らしく再教育すればいい」

「トパーズ、」

ふたりは話しながら社長室に入って行ったが、エヴァは立ち止まってニコルとアラン、ラドミールの臣下に、これ以上は立入禁止でしょ?と言って笑って―開かれた扉を閉めた。

直ぐに中から、何だよっ?入れよ?とトパーズが扉を開けた。

しかし、エヴァが、うふふ。と笑って無理矢理閉めた。






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FIND【398】ライジのスキル

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【398】 


「じゃあ博士のお蔭で『FALCON』助かりました にすれば?」

「博士がいたから宇宙船が造れた?それもいいが工程面倒だな」

「何で?」

「だってあれ悪党が嫌がる博士を脅して、情報渡せ!なんて映画
 みたいなことしなきゃ?あっ...ハッカー雇ったってのもありか」

「友好的にやればいいじゃない。闇のスポンサーでどうよ?」

「まあそうだが、マジで?俺、軟禁幽閉する気しかなかった」

「オーナー命令よ。折角の人材、何もさせないで
 死ぬまで寝る食べる暇ですう なんて有得ない」

ニコルが、それもそうだ。と笑って言いトパーズの肩を抱いた。

「終りました」

再びカーテンが捲られて―イアルが出て来た。

ニコルはイアルを呼び、トパーズとエヴァは中に入った。






ベッドの並ぶ一番隅、寝台フロアの出入扉に近い場所にジルコンが寝ていて、その様子を見舞ってからトパーズとエヴァはライジの寝ているベッドに寄った。

ライジの横でサニーが救護隊員を手伝って道具の片付。

エヴァはサニーを呼び止めてトパーズの脇を小突いた。

トパーズはサニーに向かう。

「ここでは『クワロフス』は使わない。残って何がしたい?」

「ボス...あ、社長...私は博士の助手を...必要かと思いました」

「そうか。したいことがあって残ったのなら社員とする。いいか?
 『クワロフス』ではない『FALCON』の社員だ。午後から手続き
 してやる。それまではこでイアルを手伝え」

サニーはその綺麗な若い顔を輝かせて―感謝した。

教護隊員らと共にカーテンの外にサニーが出て行くとライジが、トパーズとエヴァに、ありがとう。と言った。

トパーズがくすっと笑ってライジに寄った。

「別に、お前のお蔭じゃない。博士をこっちで引き取るなら世話と
 助手出来る極秘兵は必要だった。自分から志願してくれたんなら
 言うことない。で、論外のお前は?何したくてこんな目に遭って
 までここに来た?」

「俺を捨てて新しい犬を飼うつもりだったのか?悪かったな だ」

反抗的に偉そうに吐いたライジにエヴァがくすっと笑った。

トパーズはむっとして、そんなに俺から殴られたいか。と言う。

「あんたのDVは慣れてる。そんなのどうでもいい。トパーズから
 犬だ飼うだ言われ続けて俺は逃げられなくて腹括った。その矢先
 無情に捨てるならトパーズが俺にしたこと倍返しで付き纏うんだ
 新しい生活の邪魔する。逃げられると思うな」

「 ...ハハ、それも見ものだな?」

「ふたりでいつまで遣り合うの?」

「え」

「ライジもそんなことを幾ら羅列したって、トパーズが手放せない
 仕事上のスキルを持たないから手放すに軽いの。何出来るの?」

「スキル...?」

「『アスカ帝』でエリート営業だったんでしょうけど『FALCON』
 はそんな優秀な営業は要らない。自分が提供出来るものは何?」

ライジは縋る目をしてトパーズを見た―トパーズは反応しない。

「何があるでしょう...俺は今まで営業しかしたことがなく、」

「トパーズはどうしたい?貴方が決めないなら私が決めるわよ」

考え込んでいたトパーズは、参った。と言って笑った。

「わかった。クリスティーナ。俺が決める。俺が要求する
 クリスティーナが決めては後が怖い。俺は君の責任には」

エヴァは、そう。と言って嬉しそうに笑った。

「クリスティーナ...『シシィ』のクリスティーナですよね?
 棺桶に聴こえてた。クリスティーナがユリウスの恋人って」

エヴァはトパーズを見て、ライジも幽閉決定っ!と言った。

トパーズはエヴァに笑いながら―ライジを睨んだ。

「声に出してそれを言うな」

「え」

「お前が知らなくていいことがここは沢山ある
 ここにいたかったら口を慎めよ。耳は無くせ」






FINDもくじ FIND【399】につづく。




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FIND【397】医務室の難事

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【397】 


トパーズはエヴァの話に反論したかったが、エヴァを怒らせたり嫌われたりすればどうなるかブリッジのクルーから言い聞かせられていたので反撃出来ず―已む無く項垂れて降参の顔をした。

「トパーズ...?」

問質すライジにトパーズは、好きにしろ。と言った。

「よかったわねライジ。私そろそろ貴方が来るわって言ったの
 夕べ!そしたら本当に現れた!カルセドニーも粋なことする」

「粋なこと?...俺は扉を開けず殺すところだった」

言ったトパーズにエヴァが笑う。

「プレゼントって言われなかったならね。そこで察しがついた」

トパーズはエヴァの話を振り切るように黒服に向いた。

「帰っていいぞ。結果はこうだ。ジルコン博士はこっちで幽閉する
 揉めた原因華倉はフローラか?フローラが嫌がらないなら寄越せ
 女原因で他所に情報流出されてはつまらん。俺は殺さん」

「わかりました。失礼します」

黒服たちは恭しく一礼をして―兵隊に向かって、戻るぞ!と言ってヘリに向かって歩き出した。

そのとき、ライジが慌ててトパーズに寄って耳打した。

『俺を助けてくれたサニーはここに残して!』

トパーズは訝しい顔をしたが―ライジの言うようにした。

そして、ライジは高い空間に軽々上げられた。

トパーズがライジを担ぎ、エヴァに、戻るぞ。と言って乗って来た車に歩き出す。

サニーはニコルとアランに促されて―車に乗った。






『FALCON』オフィス・ビルの医務室。

ここからコゼセットの病院に遠くトカーナ街も人口
4万は超えるので、病院は幾らか造るがそれも遠い。

ビルに寝台10と設備は整えたが、保健員なる医者はまだない。

ヘリでコゼセットの病院まで運ぶか?とトパーズが言ったが、
ニコルが、拙い。と言ってレスキュー救護隊員を呼び寄せた。

平和な田舎町に銃弾の治療?と言ったニコルにトパーズが苦笑。

クミエルのレスキュー本部からヘリで駆けつけた、その中にイアルがいた―エヴァは気が付いたが、彼女はエヴァに気づかなかった。

ニコルとアランは救護隊員を手伝ってジルコンとライジの傷の
手当中―トパーズはエヴァを横に診察室で待ちながら、気拙い。

エヴァに、よかった。と言われて、はい。なんて言えない。

トパーズは、だからと言ってあいつをどう?と言って考え込む。

SPでログを見続けていたエヴァが顔を上げて―くすっと笑った。

「オーナーは私よ?私が決めるわ。それでいいでしょ」

「え...ああ。そうかよ。好きにしろ」

寝台と診察室を仕切るカーテンが開いてニコルが出て来た。

「ふたりともたいしたことしない。ジルコンは眠っているが、意識
 戻れば連れ出していい。ライジは歩かせれば無茶するだろうから
 暫く磔かな。イアルを残すよ。しかし早々専属医者を見つけたが
 いいな。博士と同じように外部に情報漏らさないヤツ」

「だから医者捜すの苦労してる。イアルというヤツは無理?」

「医者が見付かるまではいいだろうが、イアルは救命士」

「そうか...やっぱどっかから拉致して来るか」

「何?拉致って」

「無免許や膨大借金や事故隠蔽そんな弱点持った陰ある医者に取引
 それで捜すしかないなと...ここに幽閉だが、誰でもいいってわけ
 じゃない。人柄良好で家族親族知人友人の柵ない等、条件当てて
 捜すも早々いないんだ」

「じゃあ、ライジに医者になって貰ったら?まだ若いから、」

「お―それはいいな?な、トパーズ?」

トパーズはむっとして無言になった。

「ね、ログ見たけど意味わかんないわ?ジルコン博士って何?
 トパーズ?...どうして殺しても幽閉でもどっちでもいいの?」

「ログ?」

「サニーがライジに喋ってる...トパーズも見てよ?」

「サニーが?...はあ、ふたりで何か示し合わせて来たわけか」

「そうみたい。サニーがいなかったらライジを殺したわ?ふふ」

「む...ジルコン博士はデスク上だが王に秘密でスポンサー出て来て
 研究所持つなら『FALCON』がやろうとしていることいずれ可能
 にする能力持っている。だから要注意人物。彼が他でそんなこと
 にならないよう囲う必要あった。で、カルセドニーが世話しない
 と言うならこっちで殺すか面倒見るかだ」






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FIND【396】墓場の再会

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【396】 


当然のように、私も行く。と言ったエヴァに反論余地無く。

トパーズたち3人は墓穴を掘った処刑場にエヴァを連れて行った。

ひとりでシゴトしてたと言っても、トパーズとシュリン以外の
人間が『FALCON』オフィスに全くいないと言うわけではない。

早期採用した庶務課に相当する事務社員、システム
や経理の社員はシュリンと同じように出勤している。

トパーズはシュリンに、今日はヴィクトリアと居てくれ。と頼んでオフィスに行かず、現場に直接向かった。

アランが無線で本日の処刑場に輸送ヘリを誘導する。

センルーの山間の深い谷の森の中。

着地したヘリは黒々光るふたつの棺桶と『クワロフス』兵20と年若いが軽さのない黒服ひとりを降ろして、やがてエンジンを切った。

20の兵は直ぐに手馴れた様子で墓穴場所に棺桶を移動する。

黒服がサニーを呼びつけて自分の横に並ばせ、トパーズたちの前に挨拶をしに来た。が、この場にそぐわない可愛い女の子がいることに驚いて少し途惑った。

「気にしなくていい。彼女はユリウスの恋人」

黒服は再び驚いてサニーも驚き―感心して挨拶を終えた。

トパーズが、中身は?と訊こうとしたとき、サニーの首輪に気づいて、お前はバカか。と笑って言った。

黒服はトパーズが怒り出さないよう気を揉みながら、済みません。と言い掛けたが、トパーズはそんな話は訊かずアランに向いて、取って遣れ。と言った。

「それで中身は?」

「例の科学者です。ジルコン博士」

「はあ?何で?誰の命令?カルセドニー?ユリウスか?」

「違います。支配人とジルコン博士が華倉のことで揉めて、どうせ
 いずれボス・トパーズの下に送るから今から向こうに送って幽閉
 殺すならそれも構わない。と」

「成る程。理由がそれならディノウヴォウに置いておきたくないか
 それで、俺が反対すると思って俺に極秘、中身極秘 日中指定...
 ったくカルセドニーは何でも押し付けやがる。もうひとりは?」

「はい...プレゼントと...言えと言われました」

「プレゼント?!」

トパーズの横でエヴァが反応して―可愛く笑った。

「どういう意味?生きてるんでしょ?開けてよトパーズ」

トパーズが少し考え込むと―お願いします!と聞こえた。

発声したのは首輪の外されていたサニー。

「誰かは知りません、しかし、ボスを慕ってます!ボスに会うため
 『ライオネル』に来たのですが、支配人が...どうか!私を襲って
 私に首輪を掛けたのは彼!私は彼を撃って負傷をしています!」

トパーズはサニーを一瞥して―更に訝しい顔をする。

その間にエヴァが棺桶に近寄って兵隊に、ふたつとも開けなさい!と命令していた。

慌ててトパーズがエヴァに寄って、待て。と言った。

「何言ってるのっ?そんなのライジに決まってるでしょ!早く開け
 てっ。開けないと貴方たち全員この穴に埋めて銃で撃つわよっ!
 早くしなさいっ」

エヴァに怒られて途惑う兵隊にトパーズが仕方なく―開けろ。と言って棺桶の扉がふたつ同時に開けられた。

呼吸は出来るが、密閉された狭い中に長時間入れられて
いたためか初老のジルコンは青い顔をして憔悴していた。

ニコルとアランが、ジルコンを縛っていた縄を解き、
車に。と命令して丁寧に担ぎ出されて運ばれて行く。

もう一方は、エヴァが言ったとおりライジ―驚いて自分を見る
トパーズの顔を見て胸が詰まって何も言えず目を潤ませていた。

「ほらねっ言ったとおり!こんなカタチで来るって想像しなかった
 けどっ!トパーズ、何遣ってるのっ感動の再開は後にして!早く
 縄を解いてっ!血が滲んでる!」

喚いて叱咤するエヴァに促されてトパーズは、馬鹿がっ!とライジを貶しながら棺桶から引き摺り出して身体の荒縄を解いた。

途端ライジはトパーズに抱き付いた。

皆は、トパーズにそんなことをしたら瞬殺!と驚いた。

『ライオネル』や『Golden Wheat』のトパーズを知る黒服や兵隊は怯んで―そんな様子もないトパーズに不躾と思いながら凝視した。

「トパーズ...俺は実験動物として送ると言われた」

「新しい支配人に?」

「そうだよっ俺を一生飼うと言ったっ何で捨てる!」

「誰がそんなこと言うんだよ。お前を利用してただけだ」

「ウソよっ。今のトパーズはウソばっかり!いいわよ。ここにいて
 トパーズはライジがいなくなったら次の男を捜すのよ?ライジは
 それを阻止する権利があるわ。長年パールの面倒見てたんだもの
 トパーズに責任取らせなさいよ。本心は喜んでる」

エヴァがトパーズの真横に来てトパーズの耳元で叫んだ。






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FIND【395】処刑棺桶

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【395】 


『FALCON』仮設住宅で―エヴァはヴィクトリアに起こされた。

「よく眠れました?シュリンが朝食に来て下さいってさっき」

「あ―そう、食事ってどこで?」

「社長の家だそうです。場所は隣です。ふふ」

家って...仮設じゃない。自宅くらいとっとと造ればいいのに。

ヴィクトリアの魔法が施した華やかな服装とメイクで現れたエヴァに、昨日と何も変わらないスーツのトパーズが、今日も綺麗だ!と感激して抱き寄せた。

大きなダイニングテーブルには豪華な朝食がテーブルから
零れんばかりに並んでいるのに―他は閑散として何もない。

「呆れた...トパーズって私物何もナシ?」

「布団とパジャマと...あと何だっけ?ここは寝る食うだけだ」

「そういうこと言ったんじゃないわ?『FALCON』に落ち着く気が
 なさそ。腰据えて取り組むんだったらきちんと自宅構えて、ねっ
 凄く美味しい。料理人みたい...ひとりでこれ?贅沢!」

エヴァとトパーズふたりだけで食卓囲んでヴィクトリアと
シュリンはシュリンの家に料理を持って行って既に居ない。

にも関わらず、トパーズは姿勢低くしてエヴァに小声。

「食は大切。だから誘った。自宅建てたらどうなる」

「え...あ」

「秘書にそれ頼めるか?家政婦を雇うか、アクア。アクアの料理も
 美味いが、あと半年、トカーナが開放されてシュリンもそっちに
 移るまでは」

「う...まあ、言いたいことは解るわ。そうね... 」

「美味そうな匂いだ、腹減った、食わせる?お、エヴァ!」

玄関のベル音もなしに、どかどかと足音を立てて泥塗れの
救助作業の服装でニコルとアランが当たり前に入って来た。

「ニコル!アラン!会いたかった!ハグしたいけど寄らないで」

ふたりは笑いながらエヴァに寄らず、席に着いて食べ物に夢中。

「何で朝早くからそんなどろどろ?表で叩いてきたの?」

「俺は聞いてないぞ?今日は誰が運ばれて来る?」

トパーズがニコルとアランに向いて少し不機嫌な顔で言った。

「俺たちもこんな早くからエヴァがいるとは思わなかった」

「え?私が何?聞いてないって何?...何なの?」

話の見えないエヴァにニコルとアランとトパーズが苦笑する。

3人で 誰が説明する?の顔をして―結果ニコルが喋り始めた。

『ライオネル』後任はカルセドニーてクルーだが、あいつ処刑命令しないどころか、処刑命令が上...デイヴィッドや船長から下っても自分で手を掛けない。

『ライオネル』で該当者は捕まえるが、その後はトパーズに送る。

生きたまま棺桶に入れてな。それが届くと連絡あった日は
俺たちは日の出る前に墓穴掘り。終ったらここに来てご飯。

今終ったところ。トパーズに連絡が来てないから
俺たちの朝食ないのか...いつもより色数少ないな。

「どうやって運ばれて?アジだと他の人が疑う...秘密裏?」

「まさか。公の処刑だから当たり前にする。穴掘りも。だから皐の
 会社の輸送飛行機でクミエルに届いてそこから輸送ヘリ。今日は
 2体だから穴ふたつ。センルー山頂もいいけど森の中」

「どうしてわざわざトパーズ?そんなこと誰でもするでしょ」

「処刑対象が誰でもないなら処刑人も誰でもいいよ。そうじゃない
 からトパーズ。カナンが映す処刑風景はそこから影響あるやつら
 の手元に届ける」

「あ...そう。でも、今日はトパーズが連絡受けてないって?」

「誰を送るか事前連絡があるのに、それは同行兵隊に訊けって
 カルセドニーに言われた。が、ここのところ処刑標的いた?」

トパーズは、朝食不味くなった。の顔して、知らん。と言った。

「で、エヴァはそんな嫌悪感情は脇に置いておいてくれてる」

「ニコル...いいわ。今は意味わかんないけど受領する」

「うん船長片割れ。トパーズ気にし過ぎ。エヴァを信用しろ」

不機嫌増してトパーズが、到着はいつもの時間か?と訊いた。

黙々と食べていたアランが、今回は夜にするなと...。と言った。

「昼間にしろって?...到着は何時だ?」

「到着はいつもと同じ午前10時。処刑は昼間。それでは記録画像が
 怖くないじゃないか、何者だよ?と思ってカルセドニーが棺桶を
 造ってるところのログ見たんだが、削除してた。か切ってたか」

「 ...何だそれ...相当愉しい死刑囚か?」

「ハハ。そうらしいな」






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FIND【394】今更疑っても

2009-10-18 | 3-3 FIND




 FIND【394】 


「俺は宇宙に行きたい」

「あ?...はあ?」

「あの紳士は宇宙船を作る鍵を持つ...と言うか研究中の科学者」

「え」

「ナールが宇宙に出るならゴミを撒き散らすだけの高額遊戯という
 理由からデスク上の研究は好きにしていいが実際の研究施設建設
 は禁止されている。前ボスの、その前のボスの時代から今日まで
 『ライオネル』の背後に誰がいるのか知らないけど、あの学者を
 『ライオネル』上等客にして研究資金援助をして来て何を揉めた
 か知らないけど今あの通り。俺は宇宙施設あると思う。じいさん
 はそこに送られる。だから俺も一緒に連れてって欲しいんだ」

「 ...まじかよ」

「輸送されるのに兵隊も行くが俺みたいな若いのは外される
 だから俺に付けてくれ。これを外す鍵は向こうにしかない」

「ちょお前を人質にしろって?」

「違うそんなことしたら向こうに行けない。俺が付けられたら
 向こうに送られる。お前は俺が庇ってやる。前ボスの情報も」

「信じられるか。だったら俺はこのままでも向こうに行ける」

「だから、今のボスは殺したい人間がいると自分で殺さずどこかに
 送っている。人の入った輸送箱、通称棺桶は箱を開けて中身確認
 されることなく銃で蜂の巣か焼かれるかタイタン輸送放置らしい
 前ボスは『クワロフス』に干されたと言われているがそんなこと
 して笑ってられるのは誰だ?皆、前のボスだと思ってる、から」

途端ライジはパールがタイタンに送ったシザルコを思い出した。

「それは『Golden wheat』ボス・パールのことだ?
 俺が追ってるのはパールの補佐だったトパーズ」

「それは判ってるよ。今はパールは完全に隠れてる」

「え...てことは... 」

いやそうだよなあ...パールもトパーズもやることは変わんない。

「俺が現場で棺桶の蓋を開けて貰えるように言う」

「あのじいさんも棺桶に入れられるのだろう?大切な首輪は?」

「あの人の棺桶の蓋は開けられる。必要学者だから。しかし君は
 棺桶に入れろって言うのは処刑命令の意味。首輪が取られたら
 直ぐに蓋をされて、」

「やる!」






ライジは誰が真実で誰がペテン師かわからないが―即答した。

科学者と言われた紳士に話し協力仰いで3人で格闘。

―棺桶から救い出されると信じて。

紳士がサニーを襲い、サニーから手錠の鍵と銃を奪ってライジの手錠を外し、両手の自由になったライジはサニーに首輪を着けて銃を向けたが、銃なんて手にしたこともないライジは、サニーに簡単に反撃されて銃を奪われ、右の太股を一発撃ち抜かれた。

そん...?!

痛みより驚いて―猜疑心いっぱいの顔で訴えながらその場に崩れたライジに首輪を付けたサニーはもう何も有利な話はしてくれない。

首輪を付けて一声、サニーが、大人しくしろっ!と叫んでライジと紳士に交互に銃を向けた。

そのとき、扉が開いて兵隊数人がどっと入って出たり入ったりの、その中、黒服が入って来た。

真っ白い床に赤い鮮血を流して倒れ、痛えっ!腹立つっ!と言いたげなライジと壮年紳士の怯えた姿が黒服の目に入って―どうした?とサニーに訊いた。

訊いたが、サニーに付けられた首輪が見えて―察しが付いた。

「優秀なお前もこのバカには一杯食わされたのか。まだ青いな
 ハハ。だが、仕留めた。こいつを診て遣れ。死なれたら困る」

黒服の言葉で兵隊がライジの足の手当てを始め出した。

「仕方ないな。サニー、同行して向こうで取って貰って来い」

威圧ある空気を纏った黒服はサニーの肩を抱いて出て行った。

サニーは...『クワロフス』の中で嘱望されているのか...?

ふたりを見送っていると自分の足の手当てをしていた兵隊が部屋から出て行こうとする。

「もう終った?何で?!撃たれたんだぞ」

「我々は医者ではありません。応急手当。しかし、弾は取って
 縫いましたし消毒もしました。抗生物質と痛止め飲んでれば
 化膿も失血もしません。薬はこれです。水も置いておきます」

数個錠剤の入った瓶をふたつと水の入った容器を床に置いて―兵隊全員が出て行った。

それは、どうせ死ぬんだからそこまでしません態度。

ライジは不貞腐れて横になった。

サニー...本当かよ?...今更疑っても仕方ないが...。

て、宇宙に行きたいって何だそれ.......少年の夢なのかなあ。

じゃあ、何で『クワロフス』に入った...?






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