FIND【388】
エヴァとエレベータに乗って―オリーヴが、あ?と言った。
「何で5階を押す?それにパリスは?連れてかないの?」
「クミエルによ?『シシィ』じゃないから秘書はなし
ネハーソンに付けたわ。代り連れてく。それが5階」
「5階って...第一営業課」
5階の扉が開いて5階フロアの社員がびっくりして次々頭を下げて―通り行くふたりを歓喜と不思議で見送った。
社長がここに来るなんて?!何で?
足元を見ると噂に名高いサンダルではなくヒール。
ただの噂?と思うほど、5階の社員は社長クリスティーナを間近で見たことがなかった。
そして、社長の横に居るちょっと可愛い青年が誰か気になる。
社長が現れたことが知れ渡って―課長が飛んで来た。
「済みません、お迎えに上がらず、」
挨拶を遮るようにエヴァは、いいのよ。と笑って真っ直ぐフロア端にある給湯室のひとつに向かった。
オリーヴは課長を伴って―課長のデスクへ別れて行った。
デスクにいて立ち上がって挨拶してくる社員たちに傍観されながらエヴァは閉まっている給湯室の扉を開けようとした。
そのとき、女性社員が慌てて現れて、扉を開けてくれた。
椅子8つのテーブルのある広い給湯室の奥。
男性社員が背を向けてひと息をつく姿勢でお茶を飲んでいた。
が、誰か入って来たと気づいて姿勢を正してこっちを向いた。
「あっクリス...社長?!」
「何年ぶり?お久しぶり。アンドレイ。こんなところでお茶?
貴方くらいの位になったら誰か気遣って淹れてくれないの?」
「え...あ...少しひとりになりたくて」
「何よ、また何か傷心?」
「そんな、止して下さい。社長を失望させることはしません」
「それはわかってるわ。じゃあルーシーのこと」
「え...まあ...そうじゃなくて一段落ついたので溶けようかと」
「『サンシャス』で遊ぶなり公園でぼうっとする家に帰る?」
「午後から帰宅するとか勿体無いことしません」
「そう。なら今から私に暫く付き合って?あ、結婚したの?」
「いえまだ、あの、どちらに?」
「質問に応えない人ね?いいわ後で訊く。だったらいい?
私ね、今から諾威の山奥に行くの。うふふ。宇宙基地よ」
「えっ...宇宙?!あの...今から?」
「荷物は要らないわ。デスクだけ片付けて来て。課長には
話つけてるから挨拶しなくていいわ。飛行機に遅れる!」
アンドレイが他の社員の注目を潜ってデスクに戻り、帰宅準備してエヴァを待たせていたエレベータに入ると―見知らぬ男。
「彼はオリーヴ。若いけど私の参謀。一緒に行動するわ」
オリーヴが少年のような無垢な笑で、宜しく。と言った。
アンドレイは少し驚きながらオリーヴに挨拶を返した。
「参謀って...露骨に戦略参謀?」
「そうよ。私に頭下げる社員ばかりでは頭痛い。外の風よ」
「社長になっても変わらないね、あ、失礼しま」
「いいわよ。よく付いて来たわ?四の五の言って断わるかと」
「まさか。社長の命令には絶対だ。命の恩人として」
「そう?おじい様の命令で私をつけたでしょ?ロータスの個展」
「え」
「ふふ。同じエレベータに乗り合わせるとは思ってなかった?
私もびっくりしたけど。ロータスと会うのを阻止だったの?」
「え...違う...単に」
「いいわ。そのことは訊かない。何を言われても過去だから
でも今回はその罰よ。つけるのはいいわ?でも私に教えて」
「そんな、」
横でオリーヴがくくっと笑った。
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