ALLION【145】
「じゃあ、今回トレイシアがスタッフのチーフなのは
そうね、ティムの采配だもの、ティムが決めたのね」
『明日の帰りの飛行機も同じ便。席は
離れているけど同行。僕のBGだそう』
そーいうの仕方ないわね、芸能人!
「それ当然としてトレイシアはアリオンのこと好きなの?」
『え?!何だよそれ?今のそれは恋愛対象?ないない。彼女の好み
の派手仕事に就きたい極みで僕だ?ティムが僕を動かすのに難儀
しているそれを自分ならやれると思っている。ティムに聞いた』
「それ、だからティムも認めて自分の会社にOK...?
いえ、違うわね。ティムがトレイシアに乗り気ね」
『そう、だからそれは絶対困る。僕はティムにはどうでも
彼女に反論する言葉を持っていない。だから大いに困る』
「成る程...アリオンを懐柔するのにティムに嬉しい話ね
それでアリオンはトレイシアに怒りたくても怒れない」
『ああ、それが一番。向こうは僕に気に入られるように
機嫌取るし仕事はパーフェクト。僕は...居た堪れない』
「ふふ、萎えるわね」
『そうその通り。それで速攻解決方法ないから無視徹してる
トレイシアに触りたくない。あ、愚痴を言ってるような、』
「あはは、アリオンのそんなの知りたいわ?」
『 ...ありがとう...君を抱きたいよ...あ、ごめ』
「何やってるんだよ?アリオンの生殺し?」
!
エヴァの目前にサファイアが現れて―言った。
いつから?!
サファイアは、しっ!行って来る。と言って去って行った。
それを呆然と見送ったエヴァが我に返ってアリオンに戻った。
「あっ...サファイアがそっちに行った」
電話の向こうでアリオンの、あ!が聞こえた。
『え、どうして?』
「サファイア来たのね?じゃあ、待ってる」
エヴァは電話を切ってカナンにした。
パーティー1階下のフロア、この階もパーティーか、人の行き交う賑やかな中、広がるソファに数人座っていてそのひとつにアリオンが座ってエヴァと話をしていた。
帰ったということになっているアリオンは知人からの目は避けられていたが、アリオンのファンが数人、彼女たちは人の中に紛れて、アリオンを思い慕っているそれがサファイアに見えた。
アリオンはエヴァとの電話を切るのも忘れて、目の前に突然現れたサファイアを見止めて―驚いた。
サファイアは先日アリオンと会ったときと同じスーツを着て普段はふわりと流している輝く金髪も整髪し、まるで本物の従者のように礼儀正しくお辞儀をした。
「お待たせしました、お迎えに上がりました」
アリオンは呆然として言葉が出てこない。
サファイアはアリオンのSPを触ってエヴァと繋がったままの電話を切り、アリオンの間近で、お荷物は?
と訊いた。
「え、いや、ない。もう空輸...ってあの」
「俺は自宅の執事、そう扱って。ファンに見られている」
「え、ここにも?!」
「バカだなあ、出口で待ち構えているとでも思ってたの?
彼女たちは電話が終わるのを待ってるんだ、どうする?」
サファイアが言うに遅かった―彼女たちがアリオンに押しかけてきて途端サファイアは弾かれた。
サファイアが認知していた数よりもずっと多い。
どこから集まってきたのか、何人がどこに潜んでいたのか、何人が今現れたのか、アリオンは30ほどの女性に囲まれてサファイアからアリオンの姿が見えなくなった。
食人族かよ.......食われてる...。
この程度の人数はまだいいのか...。
10分ほど黙って見ていたが、やがて、アリオンが真ん中だろう人垣の中に割って入り込んでサファイアは、アリオンも驚く品と穏便な丁寧態度で接近していた彼女たちを巧く剥がして遠避けた。
彼女たちがいなくなるとアリオンの脇には花束やプレゼントの箱やメールが山とあった。
「 ...荷物、あるじゃん」
「あ― 」
「欲しがるものを与えれば気が済む...けど、車も追われる」
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