ALLION【144】
「慣れないうちはあんまり見ないほうがいいよ?アリオンと喋った
ときに話の辻褄が合わなくなる。アリオンが自分の友だちを紹介
していないのにエヴァが知っているなんて変なことになる」
「見なくていいものは見ないわよ」
「でも、程よく見た方がいい。リツコのことだってある
アリオンに心配ないだろうけど、誤解するくらいなら」
「それ...クルーが関わったり結婚した相手を守るって言う?」
「そう。浮気調査じゃなく守るため。自分は厭でも『クワロフス』
関わるから。と言っても万全のためだ。だいたいシゴト以外では
使わないよ。エヴァも『シシィ』に使うためだろ」
「ネットに繋がるのと規模が違うわね」
「欲のためじゃないし...アリオンの過去恋人全部入ったよ」
「 ...いいわよ、過去なんて」
「興味ないって言われるのも酷だよね」
「私が過去を言えないのに興味あるも言えないわ?」
「そう臨機応変で。あ、アリオン、帰ると言い出した」
エヴァがアリオンの画像を見ながらサファイアの持っていた自分のSPに触れると、音が鮮明に聞こえた。
SP画面に映っているアリオンは宴会ホールから隅に移動してSPを手に―突然エヴァとサファイアが触っていたSPの画面表示がアリオンの着信画像に変わって音が鳴った。
「っ、私っ?!もう!?」
「みたいだね...まだ9時なのに帰るって、」
「やだっ、まだ考えてなかった、どこに居たことに」
「アリバイ...大変だ~こういうの『クワロフス』のバーで
いいんじゃない?用があって兵隊の誰かを訪ねたとかで」
エヴァは、OK!と言って電話に出た。
案の定、アリオンはそれを訊いて来て―エヴァはサファイアに言われたように返し、シルバーウェイの近くにいると言った。
アリオンは、直ぐに向かうよ。と言って切った。
通話の切れたSPを見詰めて―エヴァはホッとした。
「カナン状態で本人から自分に電話が掛かるとびびるよね」
サファイアがくすくすと笑って言った。
「 ...どっきり」
サジしないとイーギンと約束したが、その約束はもう終了、しかしアリオンと恋人になって気軽にサジしてはいつバレるとも危ぶまれるのでサジしないと決めたエヴァ―サファイアにサジして貰った。
シルバーウェイのフロントに入って数多いソファのひとつに座って―エヴァはアリオンが来るのを待った。
まだ9時では人の往来も多い。
ぼうっとして行き交う人々を眺めていると手に持っていたバッグの中からアリオンからの呼び出し音がした。
『どうやらまたつけられたようで、気づいてよかったけど、参るよ
ティムを返さなきゃよかった。会場を出た後に気づいて...戻った
すぐにそっちに行けない』
「 ...アリオンが出て来るまで待つわ」
エヴァはカナンを使って何とでも出来る方法を、また、自分の身分を使えばシルバーウェイの支配人を頼れるも思ったが、そこまではしなくてもいいかあ...。と当たり前に困った。
『甘く考えてたよ』
「いつもはティムがBGしてくれるの?」
『会社の連中と常に一緒だからティムと別れてもスタッフが巻いて
くれたり、今は君のことがあるからひとりになりたいばかりに先
走って...しくった』
「なら、スタッフは?今居ないの?」
『いるんだけど、今夜はトレイシアが場を仕切っていて
こんなことは...彼女にだけは頼りたくないんだよなあ』
「え、何で?」
『いいよ、そんなこと、それより』
「いいじゃない。話してる間に追っ手はいなくなるかもよ」
『あ...トレイシアは親会社の社員だけどティムの会社入りたい僕の
専属になりたい...ティムから打診あったけど、仕事が出来るから
ティムはOKしたい、僕は苦手...ああいう気の利く人は』
その辺はアリオンはティムと合わないもんね。
『頼ったら、何で頼られたかは問題じゃなくて、頼られただけ先行
して彼女得意のあの手この手で詰められたらと思うと...苦手だと
本人には言えないし。ティムには言ったけど』
ゆるいっ...つか、ぬるいわ...ふふ。
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