FIND【361】
「だからどこ行く?まさか、連絡あったのか?」
「連絡あったら船長に言う!...逸れたなんてどうして?」
「訊くな。よくわからん。お前の服を貸せ。俺もジルフォ隊」
ギーガが着替の棚に手を掛けたとき―アランが遮った。
「そのよくわからない話をしてくれ。参加は認めない」
「お前っ、俺に命令?!」
「会ったなら直接ユリウスに連絡かもしれないが、俺に連絡
かもしれない。経緯把握しておきたいだけだ。知る権利だ」
「む... 」
ギーガは渋々クリスティーナと会った出来事の始終を話した。
話し終えるまで服を着ることを許されず。
「 ...10時間も?」
「判らん。結構長い間一緒に居た。夢ではない...氷張る冷たい水中
にいたことに驚きもなかったようだから、彼女も自分が生身肉体
でなくなっていることは受け容れていて...俺を求めた。なのに俺
を放置したってのが意味わからん。未だ水中から上がって来ない
のか別の場に移ったか...サジとは思えない。出来るならジャネル
川下にいないだろ」
「求めたのに連絡取らない...クリスティーナは夢と思って?」
「え...突然あんな場所に現れた俺が馬鹿だったか...有り得る。だが
救い出すには躊躇した...逃げられるのが怖かった。気絶をさせて
でも強引に水中から引き上げればよかった...彼女は俺を待ってた
と言ってもそれが解ったのは接近した後だ。今更どうにもならん
では何か?俺は用済みか?」
「それはない。連絡取りたくない事情あるかもしれない」
「事情?」
「この前のようにSP、若しくは信号、あると思う。意識戻ってる
ならそうそう隠れてられない『シシィ』捨てたわけじゃなし」
「『シシィ』か...そうか。仕事には戻るな」
アランは、ああ。と言ってギーガに下着と救助服一式を渡した。
話から―クリスティーナは船長と会いたがってる。と踏んだ。
「一緒に居るのは構わないが、俺の上司では困る」
「そらここの仕事も何も知らん。当然部下です!」
ギーガは寝台の影から覗き見たスガヤの真似をしてキリッと姿勢
正して敬礼をした―冗談のつもりなのにアランは笑ってくれない。
「 ...部下って」
「何でもいいだろ。ニコルにアラン付と言われて配属された
素性喋らなければ誤魔化せる。何でもいい上手く合わせろ」
「船長が部下なんて、幾ら何でも、」
「お前なあ、地上に溶けるとは何か?何でも出来る
と言うことだ。ではっ先に行って整列してます!」
アランは呆然として―敬礼して出て行くギーガを見送った。
確かに...そうなんだが、過去に王の近衛だったときの意識、ギーガを遥か偉大な存在として敬愛畏怖して身の竦む気持ちで観てしまう自分が完全に無くなったわけではない...から厄介だ。
だから...Nクルー期間必要...がよくわかる。
ギーガか消えた後―アランはジルフォ隊の今日の仕事場所をクリスティーナのいる場所の近くに設定しようとカナンを開いた。
クリスティーナがいた病院は、家を失ったメリーとルーが避難してデグが手伝っているコゼセットの避難所。
その近く、あの湖の河口ジャネル川のずっと川下にしよう。
しかし、クリスティーナとメリーは、コゼセットの避難所
からトカーナ領コムルの避難所に移ろうか。と言っている。
元々メリーとルーはトカーナ領メルセット住人、センルーに登山に来ていたデグはトカーナ領メルセットの中、ホテルに荷物を置きっ放しにしていて自分たちが救助されて後、クオラも救出される!と祈って3人でコゼセットで待っていた。
これは更に厄介か...いや、そうではないのか。
しかし...この恩義でクリスティーナは避難所に長居なのか?
コムルの避難所と言っても10箇所ある、そのどれかは幾ら待っても喋ってくれなかった。
コムル町なんて被災地から離れた住宅と緑地しかない場所近く。
ジルフォ隊は何を仕事とすればよいか。
しかしコムルはクミエル領城グラクスに近い―それ関係ないか。
何か得策はないか...。
考えても、他のクルーのように悪戯なアイディアも浮かばなければ経験値低い気性真面目アラン―当たり前の任務にした。
ギーガとクリスティーナを、運よく出会わせたい―
運に任せたいなら人の手で何も操作しないがいい。
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