【憧れのハワイ陸路】(1)Introduction - Blue Hawaii

　冬である。そして、冬はこれから深まる。
　これからの寒さに心が重くなるのを押し止めるのに、せめて季節を忘れるひとときが欲しい。
　そんな思いが、柄にも合わないリゾートへと駆り立てた。
　それにしても、リゾートとは？グアム、サイパン、セブ、プーケット、パタヤ、モルジブ、モーリシャス……上げようと思えば、いくつも思いつく。
　しかし、戦後の日本で生まれ育った者にとって、他とは比較にならない特別な響きを持つ地がある。
　それが、ハワイ。

- Elvis Presley "Blue Hawaii"


　リゾートという言葉すらなかった時代。海外旅行がまだ高嶺の花だった時代。ハワイは、特別な人のみが行く、憧れの楽園であった。
　そのイメージが実際のものであったかどうかは、この際問題ではない。「憧れの南の島」「夢の楽園」「クイズ番組の優勝賞品」「福引の特等賞」……そんなイメージが定着し、再生産され続けたことが重要なのだ。
　初めて海外に行ってこの方、南の島のリゾートとは縁のない土地ばかりを訪れたのが私。強いて言えばバンコクに滞在したことはあるが、これも乗り継ぎ目的だ。
　とすれば、初めてのリゾートの旅は、やはり定番で決めておきたい。
　日本人なら、ハワイだ。なにもハワイは芸能人だけのものではないのだ。
　しかもわれわれには、年内の旅にこだわる理由があった。実は9月にも渡航を試みていたのだが、台風のために途中で引き返さざるを得なかったのだ。それが、さらなる憧憬を高めていたのだ。
　そして12月下旬、われわれはついに念願の渡航を実現させた。

　朝一番の新幹線で東京に行き、上野に出て「スーパーひたち」に乗り換え。
　ハワイへの旅が、今度こそ始まる。