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にわか日ハムファンのブログ記念館

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「四球で流れが悪くなる」は間違い? セオリーの検証結果を考える

2008-12-21 05:40:17 | プロ野球あれこれあれこれ
■ 野球のセオリー、実は“錯覚” 名古屋大大学院・加藤教授らデータ分析(産経・2008年12月20日)

 確かこの話題は、1,2年前にも新聞記事になっていたような。
 野球のセオリーとしてよく言われるのが、「四球で走者を出すよりヒットの方がまし」「エラーで流れが悪くなる」「2アウトから走者を出すと流れが悪くなる」などなど。
 しかし、データを分析してみると、それらのセオリーは検証されないばかりか、むしろ逆の結果すら出てくる……というのが、記事の主旨です。
 野球中継の解説ではいろいろなセオリーや「流れ」についての話が出てきますが、それらの根拠はまず示されません。せいぜい、解説者の経験やカンから導き出されている、という程度でしょう。
 なので、具体的なデータを使った分析結果というのは、根拠がしっかりしている分、強い説得力を持っている、と言えそうにも思えます。
 だいたい、「四球で流れが悪くなる」のならコバマサやMICHEALはなんなんだという話ですし。
 ですが、こういう結果が出たからといって、上の記事の分析結果が正しく、いままでのセオリーが間違い、ということには必ずしもなりません。
 というのも、この分析はいささか厄介な問題を含んでいるからです。それは、「2005年の試合結果だけ見て、野球の全てが分かるの?」というものです。
 この分析では、問題となる「野球の試合」という集団(母集団)のうち、2005年のプロ野球全試合という一部の対象を抜き出して、分析が行われています。これは「標本調査」と呼ばれる手法です。
 ここで決定的に重要なのが、「抜き出された標本が、母集団を忠実に代表しているか?」という点です。
 母集団から見て標本が偏っている場合、調査結果にも偏りが生じます。そのような結果をどう分析したところで、母集団について正確な知識は得られません。
 例えば、日本人の平均的な労働時間を知るのに、女性が異様に多い標本について調べる場合を想像してください。
 この場合、専業主婦やパートタイマーが多く含まれるので、標本の平均労働時間は日本人全体のものと比較してかなり少なくなるでしょう。
 仮に政府や企業経営者が、そのような調査結果を利用するとどうなるか?「日本の労働者は働かない」とか「働く時間が少ないんだから給料を下げさせろ」という話にもなりかねません。
 これはあくまでも仮想の話ですが(ですよね!?)、標本の偏りは、それだけ危険なものなのです。
 ですから、標本調査を行う場合、調査者は偏りが出ないよう細心の注意を払います。その際、すべての対象(者)が等しい確率で選ばれるよう、ランダムに対象(者)を選ぶのが、基本中の基本です。
 この場合、偏りは最小限に抑えられます。もちろん母集団全体を調べるわけではないので、偏りをゼロにはできませんが、ランダムな選定方法を使うと、偏りは数学的に計算できるのです。

※ 世論調査・社会調査で、数千人程度しか調べてないのに、日本人全体のことを表すように言えるのは、実はこのランダム性が根拠なのです。ただ、この辺は長くなるので省略。

 逆に言えば、ランダムでない対象(者)の選び方は、ランダム性にこだわらなくていい理由でもない限り、基本的には認められません。
 ところが、ここでのデータ分析の対象は、2005年の全試合。明らかにランダムではないのです。
 これでは、球界から「たった1年調べたぐらいで何が分かる!」という声が出ても、反論するのはちょっと難しいでしょうね。

※ ただし、このデータ分析を行ったのが行動経済学者というのが気になります。行動経済学は心理学の手法を取り入れた学問なんですが、心理学では人間を等質なものとしてみるので、サンプルのランダム性にはこだわらないと聞きかじった経験があるので……この辺、詳しい方はぜひご教示ください。

 それに、セオリーの例として「ラッキー7」が出てますが、これを本気にしている人がどれだけいるのか? むしろ、単なる遊びや儀式的なものにすぎないと思うんですけどねぇ。
 ともあれ、「過去に起こった回数よりも、印象の強さが、ゲームの流れといわれているのではないでしょうか」という加藤教授の言葉は至言。
 人間の心理は、ともすれば経験の回数よりも印象に支配されがちなもの。野球に限らず、気をつけないといけませんね。


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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (M・K)
2008-12-22 22:44:29
四球を連発されると、守っている野手はどうすることも出来ません。
これが、四球一つか二つなら取り返しもつくでしょうが、
極端に守っている時間が長くなれば、野手も一球一球に集中している訳ですから、
それだけで集中力が切れてしまいます。

ここで注目すべき点は、野手の脚が動いているか、です。野手の脚が動いているということは、
まだ野手が試合に集中する余地があるということ。

気持ちが切れていなければ、守備での凡ミスはもちろん、その後の攻撃に悪影響が出ることもありません。
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つまり (M・K)
2008-12-22 23:02:19
>小林雅やマイケル
彼等は、ランナーを出すにしても、四球だけでなく
ヒットを織り交ぜるので、何ら問題は無いのです。<違う

あとは、月並みですが投手の性格(いわゆるメンタル面)の問題もありますね。
四球で走者を出すと、焦りからますますコントロールが定まらなくなって、
結局、四球連発、もしくは連打の嵐、時に両方の悪循環に陥ってしまう投手が。
この手の調査を見る度に思うのですが、
人間のすることを何でもかんでも数値化して語らなくても、と思います。

何が起こるか分からないのが、野球の醍醐味の一つなのですから。
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あくまで参考程度… (naotch2918)
2008-12-23 06:44:25
その先頭打者のヒットの中にはホームランも含まれる訳だから、そりゃ失点の確率も高いでしょ…と単純に思ったんですが、違うかな(苦笑)。

あと言いたいのは、2005年シーズン公式戦の調査っていうのが…
戦力に明らかな偏りがあった+未知数の交流戦というこの年をサンプルに上げるのは…。
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M・Kさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-12-23 13:25:21
>人間のすることを何でもかんでも数値化して語らなくても
数値化というのは物事を分かりやすくするにはいいんですけど、
分かりやすくなることで、かえって見えなくなるものもあるんですよね。
特に、数値の算出プロセスが間違ってると、出てくる数値もヘンになるわけですが、
プロセスが検証されず、数値が独り歩きすることもしばしばですし。
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naotch2918さん (ルパート・ジョーンズ)
2008-12-23 13:28:44
>ホームラン
原典を当たってないんでなんとも言えないんですけど、
もしホームランについての処理を行っていなかったとしたら、
データ分析としてはちょっとアレですよね

>2005年
明らかに打高投低のチームもありましたからね(苦笑)
やはり、プロ野球でデータの入手できる全試合から、
分析対象をランダムに選ぶのが正道なんですよね。
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