
このところメディアをにぎわせていた阪神・阪急の経営統合ですが、ついに正式な発表があったようです。以下長くなりますが引用。
まずお断りしておきますが、このエントリは直接阪神タイガースに関するものでは一切ありません。カテゴリも違いますしね。
村上ファンドだろうがゴールドマン・サックスだろうが、マトモに利益を追求する企業なら「阪神タイガース」というブランドに手を加えるはずなどありません。なので、阪神電鉄の経営形態がタイガースに与える影響を論ずるのは無意味だからです。
さて、阪神沿線住民にして阪神電車のヘビーユーザー(笑)である私の立場から言えば、今回の経営統合には大いに賛成したいと思います。鉄道会社の経営権を握る者として、村上ファンドや村上世彰氏は非常に好ましくないと思われるのが理由です。
昨年の福知山線脱線事故の教訓が伝えているように、鉄道会社には法律や規定を順守し、その上で社員一人一人がさらに安全のために厳しい規律を自らに課すことが求められます。そのような規律順守の姿勢がなければならないのです。
その経営権を握るものが、(善悪はさておき)いわば法律や規定に反しなければ何をしてもいい世界で巨万の富を得てきたであろう組織の頭領ともなれば、安全への取り組みがないがしろにされそうで、利用者としては非常に不安です。
加えて、今回村上氏は阪神・阪急の経営統合に対抗する形で、現在の経営陣の更迭を求めていると見られる株主提案を阪神電鉄に送っています。ただ、村上氏の人脈に鉄道会社を経営する能力のある人物がいるかは非常に疑問であり、このことも不安を一層かき立てます。
その点では、同じ関西の大手私鉄として歴史と実績に富む阪急電鉄は、経営統合のパートナーとしては最適と言えるでしょう。正直に申せば、今回の話は非常にありがたいですし、阪急電鉄グループを率いる阪急ホールディングスさんには心から感謝したいと思っています(笑)
ただし厄介なのが、今後村上ファンドから阪急ホールディングスを買い取る際の価格です。以前からの話では市場価格より安く買い取るということになっていましたが、ここへ来て村上ファンドが強気に出ている模様です。
現在の阪神電鉄株はどう考えても過大に評価されています。仮に村上ファンドが株式市場で株を売ったとすると、株価は大幅に下落するでしょう。
そうなると、ファンド側は阪急の提案するであろう株価より安い値段で株を売らざるを得なくなるでしょう。最悪の場合、買った時よりも安い値段で手放すか、含み損を抱えたまま株を「塩漬け」にすることを強いられる可能性も出てきます。
それだけに、村上氏の立場からすれば多少市場価格より安くても阪急側の話に乗るのが合理的な気はするのですが、ただ彼の投資した資金は彼個人のものではなく、他の人や組織から運用を依頼された他人のお金です。
そうなると株を大量に売る時にはそれら投資者への説明責任が生じますから、ハイそうですか、とは簡単に言えないのでしょう。
今後の展開は阪急と村上ファンドの交渉次第ですが、交渉が失敗すればこの話が立ち消えになってしまいます。何とかうまくまとまってほしいと切に願っています。
と、書いてはみたのですが……阪急ねぇ……
今まで書いてきたように、村上ファンドにはとっととご退場願いたいわけで、彼らと阪急で言えば、
阪急>>>欽ちゃん>>(越えられない壁)>>>村上氏
というのが私の評価です。ですが……
現在の阪急電鉄の前身である阪神急行電鉄が神戸線を開設して以来、阪神電鉄と阪急電鉄は常にライバル関係にありました。
神戸高速への共同乗り入れ、あるいは「スルッとKANSAI」や「PiTaPa」の導入など、最近でこそ共同関係はありますが、この2つの企業は80年以上事あるごとに対決を繰り返してきたのです。
阪神が「待たずに乗れる阪神電車」といえば、阪急は「待っても10分」とやりかえす。
阪神がプロ野球チームを作れば、阪急も西宮にチームを作る。
どちらも頓挫しましたが、阪急が宝塚から尼崎への路線を計画すれば、阪神も計画する。
そんな対決姿勢は沿線住民の感覚にも乗り移るもので、阪神沿線と阪急沿線とでは住民の気質にも違いを及ぼしています。その辺りはかんべむさし氏が書かれた『決戦・日本シリーズ』という小説にも表れています(この本については後ほど触れます)。
それだけに、今回の経営統合、形としては対等な経営統合でも、実質的には阪急による阪神の救済というのに対して、阪神沿線住民としてある種の敗北感を感じずにはいられないのも、私の偽らざる心境です。
先日祖母とも話したのですが、祖母は私よりも甲子園での生活が長い分、もっと不快に思っているようでした。おそらく、古くからの阪神沿線住民で、同じような気持ちの方々は多いことでしょう。
ただ、逆に勝ち誇ったような阪急沿線住民をあまり見かけないのも不思議なものですが。時代は変わったんですかねぇ(笑)
付記:『決戦・日本シリーズ』について
かんべむさし氏の『決戦・日本シリーズ』は、阪神・阪急の日本シリーズで、ライバル意識の高まりから親会社同士が「勝った方が負けたほうの路線で凱旋列車を走らせる」という賭けをした結果……という内容の小説ものですが、現在絶版になっております。
そこでこれを復刊させようという動きがあり、私も協力しております。もしご賛同いただける方は、下記リンク先をご覧の上、復刊リクエスト投票にご協力いただければ幸いです。
登録が必要など少々面倒な点はありますが、どうぞよろしくお願い申し上げます<(__)>
復刊ドットコム・復刊リクエスト投票『決戦・日本シリーズ』
村上氏側、阪神に役員退陣要求か 阪神・阪急は統合確認
村上世彰氏率いる投資ファンド(村上ファンド)が保有する阪神電気鉄道株(発行済み株式の約46%)を巡り、阪急ホールディングス(旧阪急電鉄)が取得を打ち出した問題で、阪神は28日、村上ファンドから株主提案が届いたと発表した。提案の内容は不明だが、阪神経営陣の刷新を求めている可能性が高い。一方、阪神は同日の取締役会で阪急との統合方針を決議し、阪急も取締役会で再確認した。両社が歩調を合わせて村上氏側に対抗する構図だ。
阪急と村上氏側との阪神株買い取り交渉がまとまれば、戦後初めて大手私鉄同士の再編が実現する。阪急は、あらかじめ買い取り価格を示す株式公開買い付け(TOB)で村上氏側の保有分を丸ごと取得する方針だが、高値での買い取りを求める村上氏側との間で開きは依然大きいと見られる。
村上氏側が送付した株主提案は、5月2日が提案期限となっている。2日まで開封しないことを阪神側から提案し、村上氏側も同意したという。
ただ、関係者によると、村上氏側は既に阪神に対し、村上氏側が推す人物を過半数とする役員選任案を阪神が自らまとめて株主総会に提案するよう求めた模様。送付された株主提案も、同様に経営陣の刷新を求めた可能性が高い。村上氏側としては、阪神の経営権を握る姿勢をちらつかせ、阪神株の売却交渉を有利に進めたい思惑もあると見られる。
阪急と阪神は取締役会終了後にそれぞれコメントを発表。「既に(経営)統合の実現に向けた方策につき一定の共通認識を持っている」(阪急)、「引き続き経営統合に関する協議を進めていく」(阪神)と、初めて正式に経営統合方針を認めた。
28日に記者会見した阪神の西川恭爾社長は、4月に入って阪急の角和夫社長と会い、阪神側から統合協議を持ちかけたことを明らかにした。阪急を選んだ理由について、「鉄道、不動産などの一体経営の継続が可能になる」と語り、阪神の優良な不動産への関心が高いとされる村上氏側への警戒心を示した。阪急と村上氏側の交渉がまとまらなかった場合、阪神が自社の株式を買い戻す自社株買いに乗り出す可能性も示唆した。
阪急と阪神は、株主提案の期限である5月2日までの決着を目指す構えだ。同日までに合意できず、村上氏側の提案内容が公表された場合も交渉を継続する可能性が高い。ただ、阪急関係者は「価格面で折り合えないと見れば、交渉から撤退することもある」としており、今後の展開は価格交渉次第の様相だ。(朝日新聞・2006年04月28日23時45分更新記事)
まずお断りしておきますが、このエントリは直接阪神タイガースに関するものでは一切ありません。カテゴリも違いますしね。
村上ファンドだろうがゴールドマン・サックスだろうが、マトモに利益を追求する企業なら「阪神タイガース」というブランドに手を加えるはずなどありません。なので、阪神電鉄の経営形態がタイガースに与える影響を論ずるのは無意味だからです。
さて、阪神沿線住民にして阪神電車のヘビーユーザー(笑)である私の立場から言えば、今回の経営統合には大いに賛成したいと思います。鉄道会社の経営権を握る者として、村上ファンドや村上世彰氏は非常に好ましくないと思われるのが理由です。
昨年の福知山線脱線事故の教訓が伝えているように、鉄道会社には法律や規定を順守し、その上で社員一人一人がさらに安全のために厳しい規律を自らに課すことが求められます。そのような規律順守の姿勢がなければならないのです。
その経営権を握るものが、(善悪はさておき)いわば法律や規定に反しなければ何をしてもいい世界で巨万の富を得てきたであろう組織の頭領ともなれば、安全への取り組みがないがしろにされそうで、利用者としては非常に不安です。
加えて、今回村上氏は阪神・阪急の経営統合に対抗する形で、現在の経営陣の更迭を求めていると見られる株主提案を阪神電鉄に送っています。ただ、村上氏の人脈に鉄道会社を経営する能力のある人物がいるかは非常に疑問であり、このことも不安を一層かき立てます。
その点では、同じ関西の大手私鉄として歴史と実績に富む阪急電鉄は、経営統合のパートナーとしては最適と言えるでしょう。正直に申せば、今回の話は非常にありがたいですし、阪急電鉄グループを率いる阪急ホールディングスさんには心から感謝したいと思っています(笑)
ただし厄介なのが、今後村上ファンドから阪急ホールディングスを買い取る際の価格です。以前からの話では市場価格より安く買い取るということになっていましたが、ここへ来て村上ファンドが強気に出ている模様です。
現在の阪神電鉄株はどう考えても過大に評価されています。仮に村上ファンドが株式市場で株を売ったとすると、株価は大幅に下落するでしょう。
そうなると、ファンド側は阪急の提案するであろう株価より安い値段で株を売らざるを得なくなるでしょう。最悪の場合、買った時よりも安い値段で手放すか、含み損を抱えたまま株を「塩漬け」にすることを強いられる可能性も出てきます。
それだけに、村上氏の立場からすれば多少市場価格より安くても阪急側の話に乗るのが合理的な気はするのですが、ただ彼の投資した資金は彼個人のものではなく、他の人や組織から運用を依頼された他人のお金です。
そうなると株を大量に売る時にはそれら投資者への説明責任が生じますから、ハイそうですか、とは簡単に言えないのでしょう。
今後の展開は阪急と村上ファンドの交渉次第ですが、交渉が失敗すればこの話が立ち消えになってしまいます。何とかうまくまとまってほしいと切に願っています。
と、書いてはみたのですが……阪急ねぇ……
今まで書いてきたように、村上ファンドにはとっととご退場願いたいわけで、彼らと阪急で言えば、
阪急>>>欽ちゃん>>(越えられない壁)>>>村上氏
というのが私の評価です。ですが……
現在の阪急電鉄の前身である阪神急行電鉄が神戸線を開設して以来、阪神電鉄と阪急電鉄は常にライバル関係にありました。
神戸高速への共同乗り入れ、あるいは「スルッとKANSAI」や「PiTaPa」の導入など、最近でこそ共同関係はありますが、この2つの企業は80年以上事あるごとに対決を繰り返してきたのです。
阪神が「待たずに乗れる阪神電車」といえば、阪急は「待っても10分」とやりかえす。
阪神がプロ野球チームを作れば、阪急も西宮にチームを作る。
どちらも頓挫しましたが、阪急が宝塚から尼崎への路線を計画すれば、阪神も計画する。
そんな対決姿勢は沿線住民の感覚にも乗り移るもので、阪神沿線と阪急沿線とでは住民の気質にも違いを及ぼしています。その辺りはかんべむさし氏が書かれた『決戦・日本シリーズ』という小説にも表れています(この本については後ほど触れます)。
それだけに、今回の経営統合、形としては対等な経営統合でも、実質的には阪急による阪神の救済というのに対して、阪神沿線住民としてある種の敗北感を感じずにはいられないのも、私の偽らざる心境です。
先日祖母とも話したのですが、祖母は私よりも甲子園での生活が長い分、もっと不快に思っているようでした。おそらく、古くからの阪神沿線住民で、同じような気持ちの方々は多いことでしょう。
ただ、逆に勝ち誇ったような阪急沿線住民をあまり見かけないのも不思議なものですが。時代は変わったんですかねぇ(笑)
付記:『決戦・日本シリーズ』について
かんべむさし氏の『決戦・日本シリーズ』は、阪神・阪急の日本シリーズで、ライバル意識の高まりから親会社同士が「勝った方が負けたほうの路線で凱旋列車を走らせる」という賭けをした結果……という内容の小説ものですが、現在絶版になっております。
そこでこれを復刊させようという動きがあり、私も協力しております。もしご賛同いただける方は、下記リンク先をご覧の上、復刊リクエスト投票にご協力いただければ幸いです。
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復刊ドットコム・復刊リクエスト投票『決戦・日本シリーズ』
会社の資本力から言って、横綱の阪神に、横綱から大関に落ち込んだ阪急、阪急よりさらに落ち込んだ近鉄が一手になるかもしれないというこの情勢。利便性は格段に高められるかもしれませんが、各々の会社は性格が違います。
利便性といっても「スルッとKANSAI」でどこまで行けるのかな?位ですけどね。
果てさて、村上氏の背後にヒットマンが差し込まれる日はいつか…(冗談ですよ~!(`ロ´;))
ただこの持ち株会社の株が上場されたとして、株主優待はかなりの魅力になりそうです。阪神・阪急どちらでも使えるタダ券に加えて、両グループのレジャー施設の優待券も付くでしょうからね(笑)
>ヒットマン
どうせならゴノレゴιэをミヤウ(以下自粛
神戸方面で阪急が乗り入れている他社線区間は神戸高速鉄道の部分だけですよ。
>十三からは大阪市営地下鉄が乗り入れています。
乗り入れてません(^^;
大阪市営地下鉄と阪急の相互乗り入れは地下鉄堺筋線と阪急千里線・京都線が淡路で接続しているだけです。
御堂筋線は架線ではなくレール横から給電するタイプなので、構造的に阪急線は走れない車両です。
報道でも何度か指摘されてるように、統合によるメリットのほとんどは不動産でしょ。あと百貨店とバスぐらい。
鉄道に関しては阪神線の大半が競合路線になっているので、どちらかを廃止しない限り統合の効果なんてほとんどありません。
おししいとこは取り込んで、鉄道に関しては10年くらいで再分離してどっかに売り飛ばすつもりじゃないの?
と思ってるから経営統合には反対したいにわか阪急HD株主ですた。
それにしてもムラカミふぁんどは予想以上にダメダメでしたね。
実行できそうにない、実行したら企業価値を損ねそうな提案しかできなくて筆頭株主の立場をまったく活かせない。
さっさと手を切りたいのは理解できるけど、阪急と統合はねぇ…
すでに切符の原紙など共同で仕入れできるのはしてますし、どちらも車両の仕様などが違うでしょうから、整備方法を統一するわけにも行かないでしょうし。
ただ西宮市民としては、バス部門を統合して路線をうまくまとめてくれると嬉しいですね。
現状だと妙な住み分けがあるせいか、同じ市内でも行きにくいところが結構ありますし(笑)
>鉄道
共同で設立するという持ち株会社の人事次第でしょうが、阪急側が主導権を握ればアルビレオさんのおっしゃるような可能性もあるでしょうね。
ただ阪神の鉄道部門だけを買うところがあるかなぁ、という気はします。あるとすれば、近々乗り入れる近鉄あたりですかねぇ?
>村上ファンド
株を長期保有して経営にも乗り出したかったんでしょうが、鉄道会社の経営ノウハウが分かる人が人脈の中にいなかったんでしょうね。
しかも、ここまで大量に買い付けてしまうといつもの要領で高く売り抜けるというのも難しくなりますし。
エントリにも書いた通り「敵」に情けを受けるのは忸怩たるものがありますが、今は村上さんにご退場願うのが優先なので、まぁ仕方ないのかと(苦笑)
やはりルパートさんやアルビレオさんの言うとおり阪急の狙いは不動産、百貨店、バスでしょうね(バスも競合していた路線は廃止でしょうが)。
百貨店は地下食料品売り場をピンポイントで狙うでしょうね。
で、やはり鉄道は近鉄に売るんでしょう。
いまこの統合に京阪・近鉄が反対してましたが、これで近鉄を賛成がわに組み込めます(京阪は過去の歴史から言って説得は無理でしょう)。
そのうえ近鉄は難波で止まっていた路線を三宮まで伸ばせ、甲子園と大阪ドームに行く客で財布はホクホクになるわけです(アホみたいな赤字もある程度解消ですね)。
大人の事情が絡んでんだなぁ、と思ってみること然り。
さて本業の鉄道目当てて買収するのではなく、付帯する不動産目当てというのが何ですなあ。
熱狂的なファンの皆さんが「阪急タ○ガースなんかいやや」とおっしゃる、予定どおりの報道もありますが、
皆大人ですぞ。そんな「金の卵を産むガチョウ」を潰すわけありませんよ。
万が一、欽ちゃんが気まぐれで「ム○カミタイガースにしたいよー」と仮に言ったとしても、合併したり本拠地動かしたりはしないでしょうから。
しかし現に、パリーグではそれ以上のことが行われたのです。
同じ野球ファン仲間、これを機に同じ関西で「そんなおかしなこと」があったことを察してあげてくださいね。
先ほどは近鉄を例に出しましたが、阪神と近鉄ではレールの幅が一緒なだけで、あとは車両の仕様から何からかなり違うんですよね。
それを統一しようと思うとかなりの投資が必要になるわけで(実際相互乗り入れの際どうするのかもはっきりしません)、近鉄側にそんなに旨みはないんじゃないかなぁ、と思っています。
ただ南海はもっとあり得ないでしょうし、京阪は面白いのですが阪急が嫌がるでしょうからねぇ……