リコの文芸サロン

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歌友を偲ぶ③

2023-02-18 | 短歌
②から続く
女孫抱き相好崩す君の顔叶わぬ夢よ嗚呼百箇日  高井 秀和



歌を詠み病のうさを脇に置く君の境地に思いは巡る  高村 俊彦



君通う馴染みの店につと寄りて歌ってみたし「青春時代」 中曽根 千春



君を呼ぶ声あまたあり聞こゆるか歌に託せる友の多かり  枡見 円


    
酒を酌み短歌を語る優しさが瞼の奥に刻み込みたり  吉森 康代





柘植さんが亡くなられてから、この茶色の歌集『短歌による自分史』の発行に至った経緯を小笠原嗣朗代表が書いてみえます。

  製本にあたって
 この歌集が製本されてこの世に残されるようになたことを、嬉しく思っています。この歌集は、柘植恵介さんが製本できる形で月々に作成してパソコンの中に保存されていたものをご本人がお亡くなりになった後、ふみ子夫人からお届けいただいたものです。
歌集のサイズ、記事の内容、詠草の字体もご本人の原稿そのままにしてあります。
 この歌集に詠者がつけられている題名のとおり、また「あとがき」に加え書かれている「十五年を振り返って」にあるとおり、ここに収められた歌歌は詠者の心からのほとばしり出た生き様であり、それを集大成したまことの自分史となっています。
詠草が入賞し、あるいは講評や批評に取り上げられたことを喜んで、それを付記されているが、詠者の喜びの気持ちをのまま表したものであり、そのまま印刷しました。
 その最後の一節に、「最後まで命の続く限り思いのままを佳き歌を残し続けていきたい」と書かれて、発行日付を令和三年三月とされています。この時に製本しょうと思い準備をしておられたが、無情にも運命は待ってくれず、1月16日にこの世を去られてしまいました。詠者の思いを込めてこの日付はそのままにしてあります。   

製本に当たって、中曽根千春さんに詠者の電子原稿を印刷用に体裁を整えて頂きましたこと、お礼申し上げます。

令和四年六月            小笠原嗣朗


柘植さんが準備されていた「あとがき」の抜粋をご紹介します。
あとがき


(後略)


もえぎ歌会の皆様の10首選から私も選んでみました。

〇初月給母に贈りし絹ショール箱入りのまま妻に継がるる

〇わが部屋に、おのが布団に、大の字に、至福かみ締む退院の夜

〇ながながの病の床の真夜さへも短歌(うた)は添ひ寝に癒しくれたり

〇ながながと患ひし身に付き添ひて励ましくれし短歌(うた)の深淵

〇飛び跳ねるほどに嬉しき師のお誉め「次も!」を夢み励みたる日々

〇ひれ伏して吹雪に堪える笹の葉のぴんと直ぐ立つ風の途切れて

〇授かりし胃も肺もはや半ば失せ令和とともに八十路に入りぬ

〇三分の二を切除せし胃の哀れ妻と分け合う蕎麦の大盛り

〇こしかたを息らに遺さん拙くも三十一文字の自分史として

〇ひたすらに耳を傾け逃すまじ師のみ教えのひとつひとつを


もえぎ歌会の皆さんの選歌集。

柘植さんは大津留温主幹に心酔してみえたのですね。
これほどに短歌に晩年を懸けた人を他に知りません。
柘植さんの人生は知れば知るほど胸が熱くなります。


柘植さんが敬愛していた、大津留温主幹



コメント
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