立正大淞南高 甲子園速報

立正大学淞南高校硬式野球部の甲子園での活躍ぶりをお伝えします。
―「モラリスト×エキスパート」を育む。立正大学―

立正大淞南 最高の夏 その3

2009-08-23 05:39:42 | 日記
さすがに疲労の色がでてきた崎田投手。
「どんなに打たれようとも、最後まで、エースとして投げたかったんです」
長打にならないように丁寧に低めに集めていた球も、いつしか、高めに浮き出していた。

そこを痛打され得点を重ねられていく。
「8回裏は、自分のわがままでストレートしか投げませんでした。キャッチャー成田の変化球のサインに一回、首を振ったら、もう、わかってくれました、好きにしていいよと。だから直球で押し通しました」
これぞエースの意地、プライドか。

「ホームランを打って、甲子園でダイヤモンドを一周できるなんて、本当に夢みたいでした」
そこで崎田はとっても優しい目をした。心底、嬉しそうだ。
「林田がいなくなって、まとまりがなくなりました。どうしていいのかわからず不安で、個々でばらばらに、そんな状態でした」
極限の状況で、ピンチに内野手がマウンドに集まり、顔を見合わせる。なんだかそれぞれがホッとしていた。

「でも、また国体で、みんなで野球できます」
悔しさはあるのだろうが、クレバーなまでに頭を切り替えつつ、国体でまたみんなで一緒に円陣を組み、野球できるシーンを思い浮かべるエース崎田投手。そのときにはブルペンでは控え投手もきちんと投げている。対戦相手が気にしていた驚異の集中力、それらをすべて打ち出せる。

さて、秋の新潟国体、立正大淞南高はフルメンバーで登場。
もちろんあの地元新潟県代表とのリベンジマッチを望む。

ミラクル立正大淞南、ナショナルパスタイム(国民的娯楽)だ。
いつもながらに野球を楽しんでいこう。

Photo:快心のホームランで逆転した主砲4番の崎田



文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)

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立正大淞南 最高の夏 その2

2009-08-23 05:37:41 | 日記
「力尽きました。満足です、これが限界です」
開口一番、太田監督はやや甲高い声で言った。
「子供たちには、もう余力がありませんでした。完全燃焼です」
そして、さばさばとそう続けた。

あまり表現してはならないだろうが、練習グラウンドから宿舎の往復、甲子園への往復などは、発症が見られあたり前のこと全員がマスクを着用し、人との接触を極力避ける。それで精神的に参ってしまう選手もいたはずだ。

「勝っても、今日までだと正直、覚悟しました」
控え投手がいない。準決勝はこれ以上のパフォーマンスはできない、最後は9人になっても闘うという気持ちはあるが、それには限界がある。
「全国のベスト8、初出場で4000校の残り8校に残ったのはとても素晴らしいことでした。頑張ればどうにかなる、その大切さを選手達が教えてくれました」
力を出し切っての準々決勝敗退。それで負けたらしょうがない、潔くありたい。

「最高の夏でした。でも、この悔しさを新潟国体で晴らします(笑)。リベンジです」
9月後半、今度はベンチ18人全員が揃い“本来の楽しい試合”が待っている。
また、グラウンドで、みんなの笑顔が見られるのである。

阪神甲子園球場。夏の甲子園。
「初出場でベスト8です。頑張れば優勝に手が届きます、そんな夢が目標になりました」
若き太田監督、ひとつため息をつき、すぐに、次、秋の大会に思いを馳せる。
そこに悲壮感はない。選手全員がサインに大きくうなずき、太田監督とアイコンタクトをして意思疎通は抜群。しかもフィールドでは笑顔でいつも楽しそうに野球している。

誰もが引き込まれてしまう立正大淞南野球、それは新しい時代の高校野球だ。

Photo:力投する崎田投手


文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)

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立正大淞南 最高の夏 その1

2009-08-22 23:43:15 | 日記
せめてベンチに18人全員が入り、ベンチワークも充分に試合にあたらせたかった。
そんな普通の状態であれば乱打戦にならずとも、後半のミラクル大逆転、その9回の熱気がこもる攻防が見られるに違いなかった。いや、そう信じたい。

6回表に主砲4番でエースの崎田がレフトスタンドへ本塁打を放って3-2と逆転。そこまでがまともな試合だった、と言えば語弊があるだろうか。
相手打線は打率が高い強力打線だった。しかし、1点差でリードしてから、ボールが浮き出した崎田に、リリーフの飯島や中尾、塚田を送り込みたい場面だったが、いかんせん三塁側ブルペンには、ひとりの投手も投げていない。

もはや屈伸運動すらきつくなった崎田のボールは、打ちごろの高さになり、相手各打者のバットから外野へと連続で、綺麗にはじき返されていった。

6回裏にパスボールなどで逆転され、マウンドで崎田はこみあげてくるものがあった。
キャッチングに定評ある成田捕手もなんやら動きが鈍そうだ。そして崎田は8回裏に大量得点をあげられ、ベンチに帰るときには涙があふれてきた。悔しくて、情けなくて、そのままベンチの奥で泣いた。
しかし、それは、誰も責められることではなかった。

明るく笑顔でチームをリードし続けたサード林田主将が、この日の朝の発熱で、ついに離脱。
ベンチ前での円陣は、笑顔があるものの、いつもの元気がみられない。
もはや手負いの立正大淞南。ショートの山脇は戻ってきたが、ふたりが離れてベンチ入り13人。選手補充は登録上、利かないというルール。いまの時代それでいいのだろうか、との見識ある高校野球ファンの声も多く聞こえてきた。

美談としてくくるには、しのびない。インフルエンザ騒動、それは、ただひとりの風邪?それが始まりだったのかもしれない。なにかの巡り合わせにしては、選手、監督やコーチなどに対する制約が生じ、ストレスのボルテージは上がってくる。
それでも選手はよく耐え、終始、笑顔を忘れずにいた。

が、最終13人のベンチでは、このベスト8入りが限界であった。

Photo:エース崎田を優しくかばう太田監督


文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)

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