『じゅげむの夏』。わかりにくいタイトルですが、「ぼくたちの夏休み冒険」ということです。
なぜ、じゅげむなのかは読めば分かるようになっています。
ぼくたちは四人です。天神集落の小学四年生。筋ジストロフィーのかっちゃん、山ちゃん、シューちゃん、ぼく。
物語は三つの冒険で出来ています。冒険といっても海へも砂漠へも行きません。すべては集落の中です。でも、それが四人にとって大切な冒険、夏休みであったことは、天神集落の野花のような丁寧な文章から伝わってきます。
筋ジストロフィーは進行しています。かっちゃんは、今年、橋から淵へ飛び込めなければ来年は飛び込めないと(感じています)。三人も。
かっちゃんは飛び込みます。川ではシューちゃんとぼくが待ち構え、山ちゃんが浮き輪を持って、かっちゃんに続きます。少年たちの小さな成人式です。ゆっくりとしか歩けない、かっちゃん。そのゆっくりはぼくたちのふつうでした。
第三話の「おばけトチノキ」は四人の夢です。かっちゃんの夢がいちばん多く「落語家、医学者、宇宙飛行士、歌手、画家」。あなたの夢はなんですか?
マメイケダの絵は、最上の世界とよく協奏し、天神集落の夏を、ひとを、風を伝えてくれます。
12日 銀の鈴社より詩集 『たちつてと』の初稿が届きました。絵はまだ出来ていないので予定は未定です。その絵を描いてくださっているのは上矢津(かみや しん)さんです。
少年よ
しろと
くろのあいだの
はいいろ
あかと
きいろのあいだの
だいだいいろ
あわいは
いつも
やさしいいろをしている
だまっているきみの
ことばのように
まえに
たぬきは
かなしくて かなしくて
こころが うしろをむいた
だが
たぬきは
めが まえについていた
へそも あしも
まえを むいていた
たぬきは
まえへ あるいていった
すこしうつむき あるいていった
こころにはみえない
きれいなゆうやけを
みながら
木
少年は木になる
りょううでを広げ
空へのびていく
葉がしげり
風がうたい
雲がやすんでいく
いばしょをこしらえる鳥や虫
町がみえる
海がみえる
少年は
空のない教室でも
雲とはなしている
空のない教室でも
雲とはなしている」
こういうフレーズ、好きですね。
子どものころ、雲と話している詩を書いて、文集に載せていただいたことを憶えています。
一平さんの行く川を上っていくと、いくつか「集落」の跡がありました。今は車で上って行きますが、その話を、物語にして読ませてくれたような気がしました。お母さんの里、空気神社のある山、宮宿、いいところばかりです。
雲はいいですね。いつまでもはなしていたいなあ。
ひでちゃんさま
少年時代と、郷土への愛なのかなあ。