脳科学研究センター-脳研究の最前線

脳の研究を総合的に行うべく、脳科学総合研究センタが1997年に設立された。

アルツハイマー病の最大の謎

2024-07-28 10:36:14 | 脳科学
このように、家族性アルツハイマーのと関連疾患原因遺伝子の同定は、病因論における因果関係の樹立に決定的な役割を果たしました。1990年代の10年間はその研究のために費やされたといってよいでしょう。また、孤発性アルツハイマー病も家族性のものと同様の病理変化を経ていることから、共通のメカニズムによって進行すると考えられますが、実は肝腎なことがまだよくわかっていません。
遺伝子変異が原因となる全アルツハイマー病の1000分1程度にしか過ぎないのです。残りの大半(99パーセント以上)を占める孤発性アルツハイマー病におけるAβ蓄積の原因は、これから解決されるべき謎といってよいと思います。後述するように、私たちはその答えの最も近い位置にいると考えています。なお、アポリポタンパク質Eの遺伝子多型Latin_4が原因遺伝子だと考えている人がいますが、これは誤りです。Latin_4のキャリアは発症率は高いのは事実ですが、80歳、90歳過ぎても発症しない方は沢山います。あくまで危険因子として考えるべきでしょう。国際的な診断のガイドラインにおいても、Latin_4の有無は診断基準には含められていません。
第二の謎としては、Aβが蓄積された結果、どのような経路を経て、神経細胞が機能低下をお越し、最終的に神経細胞死に至るかがわかっていないということです。言い換えれば、Aβ蓄積から神経変性に至るメカニズムの解明です。原因から結果に至るまでの必須のプロセスが何であるのか、また、それがどのように関係しあっているのかを明かにしなければなりません。いずれの謎も、病気を予防し、治療する糸口を見いだす上で避けては通れません。また、アルツハイマー病における「時間」の謎を解く鍵になるでしょう。


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