脳科学研究センター-脳研究の最前線

脳の研究を総合的に行うべく、脳科学総合研究センタが1997年に設立された。

国の未来を左右するほどの影響力

2024-07-25 23:14:33 | 脳科学
そして、ほぼ全ての人間が、十分に長生きすれば、アルツハイマー病を発症する宿命があることが、近年わかりました。65歳以上で1割、85歳以上で5割、100歳以上で九割が認知症を患っていると報告されています。これはなかなかショッキングなことですが、一方で、根本的な原因が明らかになってきたことによって、アルツハイマー病を予防・治療するだけでなく、全ての中高年が対象となる脳の老化を制御できる可能性が見えはじめています。
アルツハイマー病が恐れられるのは、各人がそれぞれの人生において何十年もかけて培ってきた人間としての尊厳を奪い去られてしまうからです。本人のモラルや信条まで失われてしまうと、まさに生ける屍であり、社会的地位の高い人にとっては絶対に言われたくないであろう「晩節を汚す」ことになりかねません。また、社会的コストにおいて、医療費や介護費用のみならず家庭内介護のために失われる労働力まで考慮すれば、国家レベルでは実に年間10兆円以上が失われていると言ってよいでしょう(認知症の家族を介護するためには、仕事をやめる人々のことを考慮する必要があります)。しかも、高齢者人口の増加によって、患者数は近い将来倍増すると予測されます。このコストの負担は、自分には関係ないと思っている若者にまでおよび、日本の活力を奪っていく危険があります。
アルツハイマー病が個人と国の未来を左右するほど全国民的な問題であることを、理解していただけたと思います。逆にアルツハイマー病を克服することができれば、これらの非生産的コストを抑えることが出きるだけでなく、社会全体の生産性も向上させることができるでしょう。さらに、中高年の脳劣化を制御することが可能になれば、やがて訪れる超高齢化社会は必ずしも暗いものではなくなってきます。



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