晴れたり曇ったり

夫のステージⅣ 切除不能進行食道癌の闘病記録と旅立ちからの日々

思い出の帰り道

2017年05月26日 | 旦那の旅立ちからの日々
旦那の入院中、帰りにいつも寄っていたコンビニの従業員の人が
「いつもありがとうございます」と声をかけてくれていた。

そのうち
「いつも遅い時間に来られますがお仕事ですか?」と聞かれ
「旦那が入院してるので病院の帰りなんです」と答えると
「あらら・・そうなんですか。知らずに余計なこと聞いてすいません。早く良くなるといいですね」と言った。

それ以上言うつもりは無かったのに「早く良くなるといいですね」という言葉に反応しちゃったのか
つい・・
「末期癌でもう長くないんです。亡くなっちゃったらここに寄ることもなくなるかもしれないです」と言ってしまった。

さらに従業員の人は、申し訳ないという表情に変わり
「なんと言っていいのか・・本当にすいません」と言った。

私のような年配の女が毎日遅い時間に朝食用のパンや夜食を買いに行くのが珍しかったのでしょうね。
毎日うつむき加減で辛そうに買い物してたのかもしれない。
きっと不思議に思って聞いてきたんだと思った。

その翌日の朝、病院から電話が入り
容態が良くないので私は病院に泊まり込み。
それきりコンビニへ行くことは無くなってしまった。

旦那が亡くなってしばらく経ってから、ずっと気になっていた。

あの従業員の人は、余計な詮索をしてしまって避けられてしまったんじゃないかと
今頃、後悔していないだろうか・・とね。
私もそこまで言わなくていいことを言ってしまったと後悔していた。

なので昨夜、話した従業員の人が出勤してることを祈りつつ、そのコンビニへ行って来た。

私の顔を見るなり
「お久しぶりです。この前はほんとうに申し訳ありませんでした」と謝ってきた。

ああ・・相当気にしていたんだと思い
「ずっと来れなくてすいません。声を掛けてくれた翌日から容態が悪くなり旦那が亡くなってしまい来ることも無くなってしまったんです」
「もしかして余計なこと聞いたと後悔してるんじゃないかと思って顔を出してみました」

そう一気に伝えると従業員の人は、今にも泣きそうに顔をくしゃくしゃにしながら
「大変だったんですね。お悔やみ申し上げます。わざわざ伝えにきてくれてありがとうございます」
「本当に余計なことを聞いてしまったと後悔してました」と気持ちを教えてくれて頭を下げた。

私は
「最初から末期癌で余命宣告も受けてて、今回の入院で退院できないことも知ってたし
ここに寄れなくなったのもあなたのせいじゃないので気にしないで下さいね」と気丈に言ってみた。
「毎日精神的にも肉体的にも疲れていた時だったので、つい私も誰かに病気のこと言ってしまいたかったのかもしれません」
「私こそ余計な気遣いをさせるようなこと言ってしまって後悔してました。ごめんなさいね」と謝った。

コンビニからの帰り道
まだ雪が積もっていた頃の歩道を泣きながら歩いていたことを思い出して同じように泣きながら帰って来た。
でもこの道に私が頑張ってきた思い出があるんだと改めて感じた。


誰が悪いわけじゃない。
誰のせいでもない。

誰かを悪者にしたり誰かのせいにするのは自分だけ楽になりたいからだ。

私は誰も恨まない。
私は何も憎まない。

父さんは、無邪気な天使のようになって旅立ったのだから
汚してはいけないんだ。

悲しみや寂しさは消えないけれど
父さんを最後まで看取れた事、自分で自分を褒めてあげたいと思う。




7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2017-05-26 22:42:12
蘭さま お晩です。(私の田舎の方言です)

 色々と大変でした。
 私は、昨年暮れに父を亡くして、あれよあれよという間に時が過ぎていったような気がします。
 
 自分や家族が病気になると、今まで気付かなかったことにも気づくようになり、人との接し方が変わってきますね。
 健康なときは、周りを気にすることなく生活できるものでしたが、病気になると人との触れ合い方が大切になり変わってくるのではないでしょうか。

 私は、人と接することが苦手な方ですが、今は、いろんな人に助けられています。
 その心遣いが持てるように生きて生きたいものです。
返信する
人との触れ合い (faze_suki)
2017-05-26 22:44:33
お晩です。
いつもなのですが、名前とタイトル抜けちゃいました。m(_ _)m
返信する
Unknown (yuu.sho2049)
2017-05-26 22:50:29
蘭さま
何か鬱陶しいお天気が続いて。
梅雨は、間近かな?

私も主人の状態をまわりの人に言って、救われていました。
誰かに、誰か伝える事が自分の苦しみ、悲しみを癒していたのがも。
コンビニの方の気遣い、その方を思われる蘭さまの優しさに、涙😢出てます。

何か一人ぼっち、でも、必ずまわりの方にささえれていますね。
私は、まだまだ悲しみから抜けだせまん。
悲しい、無念、思いまだまだあります。

だけどだけど、生きていきます。
返信する
faze_sukiさんへ ()
2017-05-27 12:15:53
お晩です。は北海道でも使う方いますね。
私は使いませんけど意味はわかります。

私も人と関わりを持たないような生活を10年以上送ってきましたから
何を言うのか忘れてしまい、どうでもいい話をしなければ会話が繋がらないようなことがしょっちゅうあって
どんどん自分の中の闇に引き込まれていきました。

今は、闇に引き込まれる日もありますがそこから抜け出せる自分になれました。
それはやっぱり周りの温かい心に触れたからだと思います。
私も誰かを温かくできるような人になりたいと更に一歩考えが前に進みました。

「心遣いが持てるように生きて生きたいものです」
同感です。
返信する
yuu.sho2049さんへ ()
2017-05-27 12:29:58
今日は札幌も朝から雨です。
北海道に梅雨は無いといいますが梅雨っぽくなる時期はありますね。

私も寂しさや悲しみが消えることは無いですね・・。
それでもあの闘病中の胸が締め付けられるようなモヤモヤする気持ちや
病室を出る時の後ろ髪を引かれる思いが無くなった分
精神的には心穏やかな日々を過ごせていると思います。

だって・・だって・・残された者は残されたなりの生き様を見せなくちゃって思います。
旦那が一人は寂しいからって迎えに来る日までね。
返信する
夢見ました。 (saori)
2017-05-29 13:41:55
蘭さん、こんにちは。
蘭さんは優しいですね。ご自分もつらいでしょうに、コンビニの店員さんへの配慮、素晴らしいですね。
そして、誰も恨まない、何も憎まないってそう簡単に言えることじゃないですよね。
私はどうしても父の命を奪った癌という病気が憎いです。
でもそんな優しい蘭さんだからこそ、ブログを読んで私もついつい蘭さんファンになってしまったんでしょうね。
ブログを読んでいて蘭さんの優しさに触れ、惹かれたんだと思います。

先日、蘭さんのブログを一気読みして、さらにコメントを送らせていただいて、蘭さんとのつながりをうれしく思っていたその夜、亡くなった父の夢を見ました。
亡くなって約3か月、これまでの3回見た夢では、どれも生前の父が出てきていたのですが、その時の夢は父が亡くなったことを理解している夢でした。
夢では、朝起きてリビングへ下りていくとリビングの隅にちょこんと父が座っていて、『おぉ~』って片手を挙げてにこにこしているいつもの父がいました。
駆け寄った私は、『久しぶりだね、元気だった?』って涙を溜めながら話しかけていました。亡くなっているのに元気?なんておかしいですよね(;一_一)
覚えているのはそれだけなんですが、なんかとても温かくて、あぁ、もう苦しみはないんだなって、今はご先祖様や、先に旅立たれた知人たちと一緒で寂しさもないんだなって安心しました。

父が亡くなってから、キマグレンの“天国の郵便ポスト”という歌をよく聞いているんですが、その詩の中で『いつか逢える時までまたね』という歌詞があるんですが、私もいつか旅立ったら、仲良しだった父に会えるんだな、じゃあそれまでは一生懸命生きて、会えた時には『頑張ったね』って言ってもらおうって…寂しくても頑張ろうって気持ちにさせてくれる、最近の私の応援ソングとなっています。
私も母と一緒に父のことで後悔することはあるのですが、それでも頑張って病院に通ってあげられた愛情は父へ届いているよねって言っています。
蘭さんが旦那様の意志を尊重しながら最後まで看病されたことは、誰よりも旦那様が『よくやってくれてありがとう』って感謝されていることと思います。
蘭さんも大切な旦那様を亡くされたのと引き換えに旦那様が引き合わせてくれた縁もあるかと思います。
ぜひ、旦那様との生活や闘病のお話をたくさんしてあげて、思い出を濁らせないようにしてあげてくださいね。
もちろん、ブログでお話ししてくれるのも大歓迎です。
お時間があるときにお話ししてくださいね。
長々と自分の話をしてしまってすみませんm(__)m
蘭さん、お体に気を付けてくださいね。
返信する
saoriさんへ ()
2017-05-29 22:17:29
旦那が闘病中はがんって病気を憎んだけどね~。
こうして日が経つにつれ、諦めの境地なのかな?
怒りとか憎しみはエネルギーが必要でね。
今はもうそんなエネルギーが残ってないんだと思うわ。
優しいとかじゃないよ(笑)

にこにこしてるお父様の夢見られてよかったね。
きっといつまでも悲しんでいるんじゃないよ~って応援に来てくれたのかもしれないね。

私はまだ旦那が夢に出てきてくれてないんです・・。
そろそろ出てきてよ~って遺影に話しかけてるんだけどね(笑)


返信する

コメントを投稿