ダメオタRの徒然雑記

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感想:D.C.II~ダ・カーポ2~ その2

2006-06-06 22:00:00 | エロゲー感想
ストーリー雑感

◆アニメ「セカンドシーズン」とD.C.II

 D.C.IIのストーリーを考察するに辺り、何気に欠かせない要素として存在しているのが、アニメ版D.C.のセカンドシーズン(D.C.S.S.)だったりします。
ラストエピソード『D.C.』まで全て読了した方なら気付いたはずですが、桜の木に寄り添うさくらの回想に、名指しではなかったものの、アイシアの存在とセカンドシーズン終盤の展開を指しているものと思しき描写がありました(シーン回想【芳乃さくら】【聖なる夜:12月24日】)
アイシアがしつこい程に訴え続け、彼女を主人公として展開された物語の果てに、ようやく理解し、手にした「幸せ」。『D.C.II』において、桜内義之という少年と魔法の桜を中心にした物語の結末が、彼の存在消失と帰還のセットになっていたのは、単なる物語上のご都合主義だけでなく、『D.C.の物語』としての明確な理由付け、謂わば前例があっての事だったわけです。

◆存在の認識
 アイシアは、自らが桜の木を復活させた事による事象の歪曲(さくら的に言うならば「奇跡の代償は軌跡の解消」)を正すために、自らの「存在」と引き替えに桜の木の影響下にあった面々の軌跡を修復した。本来ならばその時、アイシアの存在は誰も認識できなくなったはずだった。しかしその数年後、純一と音夢の結婚式場に姿を現したアイシアは、全員からその存在を認識されている。この事は、その時の面々の意識に、「アイシアという名の、世間知らずで我が侭で、でもとても必死で一生懸命な魔女」の存在が強く刻まれていた事、つまりは純一達の「世界」を構成する「存在」としてしっかりと記憶されていたということに他ならない。
人は色々な事を覚え、色々なことを忘れていく。でも、決して忘れることのない記憶、思い出――意識の奥底に刻まれる大切なもの――その人をその人たらしめる重要な記憶は、決して消えることはない。
 「桜内義之」という少年は、音姫、由夢、小恋、ななか、美夏、杏、茜、渉、杉並……そしてさくら。彼ら彼女らの世界に強く刻み込まれた「存在」になり得たからこそ、最後に帰還することが出来たのである。


◆消える義之、消えない義之
 さて、そういう前提で義之消失関連イベントを回想していくと、シナリオによって義之が消えたり消えなかったりしてますね。消えないまでも体調が悪くなったりしてるのもありますが。消えないのは正に上で書いたとおりで、彼女(小恋・ななか・美夏)にとっての義之の存在意義が強すぎるが故の事でしょう。
 逆に、消えるシナリオ(音姫・由夢)の場合は、桜の木の事情に入り込み過ぎてしまっているが故の絶望、諦観によるものと推測。音姫の場合は事実そのものを知ってしまっていますし、由夢の場合は予知夢という形で「別れ」が不可避なのだということを知ってしまっています。ついでにいえば、悲劇のヒロイン好きの祖母がいる二人ですから……などと邪推も出来たり(笑)
 半分イレギュラーなのが杏。彼女のシナリオでは、彼女自身の記憶そのものを桜の木の魔法が肩代わりしていただけに、彼女の中と桜の木、欠けてはならないピースの両方ともが抜け落ちるという、義之にとってはイジメ同然の事態になってしまっていました。結局、杏の持論「体の繋がりという前提での心の繋がり」がドンピシャで当たり、肉体に、魂に刻み込まれた義之の存在が、杏の中に甦った、という展開だった訳です。
キャラ雑感で杏シナリオをベスト1,2に据えた理由というのもこの辺の目新しさが理由ですね。D.C.という枠において、と但し書き付きですが。


◆忘れられたくない、さくら
 周りが時の流れに逆らわずに老いてゆく中、さくらだけはいつまでも姿を変えない。それは、あの時桜の木に念じた願い。大好きな人と自分のためにと念じた純粋な願い。

 でも、その願いも、想いも、結局は叶わなかった。大好きな人は、もう一人の大好きな人と結婚した。自分はいつまでも変わらない。友人達が、同僚達が、どんどん大人になっていく中で、自分だけは変わらない。周りはどんどん変わっていく。それでも自分だけは変わらない……。

 自分を知る人がいなくなる――それは、世界に、自分の存在を忘れられてしまうことと同じ。純一も、音夢も、ことりも、美春も、萌も、真子も――環、アリス、叶、ななこ、アイシア――かつて心を通わせた友人達も、いずれ自分を置いて、いなくなる。そんなのは、嫌だから……

と、さくらが自ら枯らせた桜の木を復活させてまでやりたかったことは、自分の存在の証を残したかった、ということなのだろう。人は命を紡いでいく中で、自分の生涯の伴侶と共に、かけがえのない子供を産む。そうして生まれた子供は、自分と、自分の愛する人の存在の証と成る。でも、さくらはいつまでも歳をとらず、それゆえいつまでも孤独だった。このまま時が過ぎ、かつての仲間達が一人もいなくなったとき、誰がさくらの、「芳乃さくらとして生きた証」を立ててくれるのか。さくらは、それが怖かった。世界に忘れられてしまうのが怖かった。
 だから、かつて否定さえもした桜の木の魔力に頼ってまで、存在の証明を欲しがったのだ。結果、望んだのは自分の「子供」。もしかしたら、あり得たかも知れない可能性。自分の幸せの証。それを義之に求めたのだ。

 そしてD.C.IIの物語の結果、さくらの願いと桜の木の魔法によって作り出された存在である義之は、音姫や由夢ら家族と、小恋やななからの大切な仲間達に望まれる事により、明確なる個としての存在を獲得するに至った。本来なら、桜の魔法と共に消えゆくはずの義之が「存在」として残った事で、ようやく、さくらの願いも叶ったのである。


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