ねこぱんち

絵日記のようなもの。
本や映画、生活のこと、思うことなどを気ままに書き連ねています。

透明な旅路と

2006年04月20日 23時09分41秒 | 
淡いような、深いような水色に、一輪の彼岸花が美しい表紙です。
この小説にピッタリと合った、良い表紙だと、今は納得です!

最近この人ばかり・・・。
あさのあつこさんの『透明な旅路と』を読みました。
バッテリー』シリーズとは打って変わって、ミステリーです。
正確にはモダン・ミステリーらしいけれどね。
よく分かんねー。

あさのあつこさんって、現実主義なのかなと思っていたけれど、
霊界とかの話も強いのですね。
まぁ、児童文学とかで、よくあるかんじだけども。
「死んじゃった主人公が天国の門番に試練を受けさせられる」みたいなやつね。

この本は、大人向けに書かれていますので、そんなに安直ではありません。
それに、そんなに明るい話でもありませんね。
親が無意識のうちに子供に植え付けるトラウマが印象的でした。
それが元で、主人公は自分の子供も妻も愛せません。
悪循環はどんどん、その軌跡を大きくしていきます。

兄が幼少の頃に、山に引かれて行方不明になってしまった主人公。
母親は、自分の事を、わざとなのか何なのか、兄の名前で呼びます。
仕舞いには、自分が生きている事に罪悪感を持つようになってしまい、
自分は本当に弟の方なのか、本当は兄ではなかったか?と
混乱するようになります。

元凶は、そこなのですが、大人になるにつれて事態は複雑化する一方。
暗い暗い闇の中を、這いずり回る主人公の男性。
子育てって、こんなにも恐ろしいものなのですね。
この母親は、本当に罪深いけれど、同情の余地アリなのです。

霊界に片足一方を突っ込んだような内容なので、
そういうのが嫌いな方は、やめといた方がいいかもしれません。

理不尽な死に方をしてり、突然何の前触れもなく死んでしまった人って、
やはり自分がどうして死んだのか理解も納得も出来ないから
その辺をフラフラしているものかもしれません。

それだけで切ないけれど。

一度犯した罪は、今生で清算できるとは限らないし、少なくとも
一生背負って生きていかなければならないと思います。
大小様々ですが、罪を犯さない人なんかいないだろうから、
私も、読んでいる間中、ポツポツと色んな事を思い浮かべました。
少なくとも私は、それを忘れてはいけないなぁ、と思います。

相手が忘れたフリをしてくれていてもね。

辛いけれど、そこには深い信念のようなものを感じた小説でした。








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