マチコ様より頂いたヒュー・ジャックマン主演 "The Boy From Oz" シドニー公演レポート第四弾。いよいよAct 2ラストまでお届けします。
『17.I still call Australia home
「僕はオーストラリアへ帰ったんだ。なんてったって僕はオーストラリア人だからね」と客席にピーターが話しかけてると、記者たちがピーターの周りを囲みます。「オーストラリアに戻られてどうですか?」「ああ、やっぱり落ち着くね。ここは故郷だから」「あなたはアメリカで成功されましたけど、オーストラリアについてどう思われているんですか?」「それは今夜のステージを見てもらえばわかると思う。それじゃ」と記者たちを引き連れてピーターは舞台から去ります。
そして、オーストラリアの国旗の柄のシャツに白いパンツのピーターが登場。本物のピーター・アレン自身、本当にこういう柄のシャツを着てたのをどこかで見た気がします。
「I still call Australia home」が始まります。途中で少女合唱団も登場しました。この曲を歌う間中、ヒューの顔は誇らしげに輝いていました。私自身、ブロードウェイ版CDを聞いたときに、一番気に入った曲がこの曲だったので、すごく感慨深いものがありました。
ブロードウェイ版CDと違って、今回はフルコーラスで、それもうれしかったです。
最後のサビの前で「みんなも歌って!」とピーターが言い、本当に会場全体で大合唱でした。
ピーターが高らかに歌い上げると、毎回客席は全員でスタンディングオベーションです。それを見つめるヒューの表情が本当に嬉しそうで誇らしげでした。オーストラリアでこの曲を歌うことは、ヒューにとって大きな意味があるんでしょうね。
18.When I get my name in light
舞台にはお母さんとちびピーターが現れます。ふたりは映画「レッグス・ダイアモンド」を見た後のようです。
「おもしろかったわね」「僕だったらあれをミュージカルにするよ」「ミュージカルですって?あれはドラマよ」「こんな風にだよ」と言ってちびピーターはちょっと踊って見せます。「そうね、おまえはなんでもミュージカルにしてしまうものね」と言い、お母さんは舞台から去ります。ちびピーターが残る舞台に左手から白いギャング風の衣装を着た男性ダンサー一人が登場。ちびピーターの周りを踊ります。そして、二人三人とだんだんダンサーが増えていきます。舞台の真ん中で目を見張っているちびピーターの後ろに、縦に白い縞が入った黒いスーツを着て、帽子を目深にかぶった男性(ピーター)が登場。「坊や、下がっていろ」と言うと、ちびピーターはあわてて舞台から退散します。
うしろに男性ダンサーと女性ダンサーを引き連れてピーターが踊りだします。
ここのヒューは・・・。衣装といい、ダンスといい、このショーの中でも一番かっこよかったです~。
レッグス・ダイアモンドのリハーサル中という設定らしく、いすに座ったディーが話しかけています。「ギャングのミュージカルに本当に客が入るとでも思っているのか?」「ああ、僕はやるよ」とダンスをしながらピーターが答えます。「ばかげてる。いい加減にしろ。やめるんだ。成功するわけがない」「口出ししないでくれ。僕はやると決めたんだからな」「口出しするなだと?それは俺を首にするってことか?」「ああそうだ。いますぐ、完全に首だ」
怒ったディーは舞台を去ります。「When I get my name in light」を歌います。ここのダンスは厳しい顔をして踊るヒューがすごくかっこいい!明るい表情も好きですが、時々こういう表情をされるとたまりませんね。
19.Donユt cry out loud
曲が終わると、半月型スクリーンに映し出された「LEGS DIAMOND」という文字が銃声とともに打ち抜かれていきます。
ショーが失敗したことに打ちのめされているピーター。舞台中央にはお母さんとちびピーターが現れます。
「ママ、僕お金をもらったよ」「すごいわピーター」そこへピーターの父親が登場します。
「酒場で歌うなんてばかげたことはやめろ」「でも、僕お金をもらったんだ」「なんだと。そいつをよこせ」「やめて!これはピーターのお金よ。あなたに手出しはさせないわ」と父親に食って掛かるお母さん。怒った父親は、お母さんに向かって手を振り上げます。「ママをぶつな!こんな金くれてやる!」と父親の手のひらにお金をたたきつけるちびピーター。父親はそのお金をまじまじと見つめてから、後ずさりして舞台から去ります。
舞台中央でお母さんとちびピーターが話をしていると、後ろの半月型スクリーンに父親のシルエットが映し出されます。そして銃声。「No!!」と叫びお母さんはちびピーターを抱きしめ、「Donユt cry out loud」を歌いだします。
この曲も私のお気に入りだったんですが、このお母さん役の方は本当に上手でした。1コーラス目は歌うというよりセリフのように語っていました。2コーラス目から滑らかに歌い上げるのですが、その歌声も見事でした。一度、本当に涙を流して歌っていて、完全に役に入っているようでした。ブロードウェイ版に比べ、ピーターとお母さんの関係を強調していたオーストラリア版ですが、このシーンで見事にその部分を完結させていました。
この曲が終わった後、かなりの間、毎回拍手が鳴り止みませんでした。
20.Tenterfield saddler
お母さんとちびピーターが舞台から去ろうとすると、ちびピーターがピーターに気づきます。「あなたは誰?」「ピーターだ」「僕もおんなじ名前だよ。ピーター・ウォーノフ(でいいんでしょうか?)っていうんだ」ピーターはひざまずくと、ちびピーターに語りかけます。「君のこれからの人生はいい人生だよ。もちろんいいときもあるし悪いときもある。でも、生きる価値のあるすばらしい人生だ。がんばれよ」去っていくちびピーターをいとしげに見送った後、ピーターは客席に続く階段に腰掛け、「Tenterfield saddler」を歌います。
ショーの前にプログラムを見たとき、この位置にこの曲が入っていることに驚き、どういう流れで入っているのかなと思ったのですが、まさしくぴったりの場所でした。
21.I go to Rio
「これで僕の物語はおしまいだ。でも1曲やり残した曲があるよね?」とピーターが言うと客席からすかさず「Rio!」の声が上がります。「みんなプログラムを見てるな。そうだよRioだ!」と叫び、ピーターは舞台を去ります。
オーケストラが「I go to Rio」を奏で始めると、舞台上段から派手な衣装のダンサーたちが現れます。そして例の「ウォウウォウ」のところでピーターが登場。写真が上がっているように、銀色のパイナップル柄のシャツ&銀色パンツ。ブロードウェイ版の白い衣装も派手だなと思っていましたが、比じゃありませんでした。派手なマラカスを手に歌い踊ります。ここでも客席に下りて通路を走ってました。途中、ハイタッチをしたり、お客さんに手を握られたりしながら、客席を駆け抜けます。
2コーラス目からキャストが登場。まずはディーと父親役の俳優さんとクリスが登場。それからグレッグ、ライザ、お母さん、ジュディの順です。お母さん役のときが一番拍手が大きかったですね。その後舞台上段からちびピーターとピーターがおそろいの衣装で登場。ヒューの笑顔はきらきら輝いていて、どっちが子供なんだかわからないぐらいでした(笑)。
お客さんもみんな立ち上がって、拍手をしたり踊ったりしてました。あの笑顔とこの陽気な音楽では、もう踊るしかないという感じです。
曲が終わると、そのままお客さんは全員スタンディングオベーションでした。
22.Once before I go
再びピーターが登場。青いシャツと黒いパンツに着替えています。
客に話しかけることなく、「Once before I go」を歌いだします。
ブロードウェイ版ではRioの前の最後のシーンで、かなり悲壮感が漂っていたように思いますが、オーストラリア版では笑顔を浮かべながら歌っていました。
ヒューの力強い歌声が会場を満たします。
曲が終わると再びスタンディングオベーション。このときのヒューの表情がまたすばらしかったです。顔をくしゃくしゃにして、本当にうれしそうな笑顔でした。
拍手が収まってくると、一言もしゃべることなくピーターが後ろを向き、半月型スクリーンを見上げます。そこに「Peter Allen」の文字が映し出されます。それを見つめた後、そのままピーターは舞台から去っていきました。
最後の「Once before I go」は、ピーターとしての死ぬ前の大事な人へのメッセージとしての意味と、ヒューの観客に対する感謝の意味と、二つの意味がこめられているように感じました。
最後、「Peter Allen」の文字を見上げるヒューの後姿に、ヒューのピーターに対する尊敬の念が感じられて、後姿にじんとしました。
何も言わずに去る演出も、うまいな~と思いました。この会場の規模でカーテンコールをやったらきりがなかったでしょうからね。先にカーテンコールをやってしまって、最後はあっさりと終わりでしたが、そのあっさり感が逆に余韻を残して、私はよかったと思います。』
オーラスがRioじゃなくて "Once Before I Go" だと聞いた時には「え?」と思いましたが、そういう意図があったんですね。
マチコ様、詳細なレポートありがとうございました。でも、実はまだ続きがあるんですよね。皆様お楽しみに。
"Once Before I Go"については、Ozalotsさんのヒュー・フォーラムにも何枚か画像が出ました。
それを見たら、マチコ様の書かれたことが実感できて、実際に観てもいないのに、じんと来てしまいました。
最後の"Peter Allen"の文字、本当に胸がいっぱいになります。
そうなんです!私も公演の前にパンフレットで曲順を見て「なんでRioが先なの?」と
驚いていたんですが、最後は↑のような演出だったんです。
BW版のように明るく終わるのもきっと楽しかったと思いますが、
今回のラストは、何も言わないだけに余計に雄弁、といいますか、
ヒューの「Peter Allen」の文字を見上げる最後の後姿を見ているうちに
いろいろな思いがこみ上げてきて、毎回胸が詰まりました。
私はすばらしい演出だったと思います。