1歳ムスメ闘病日記

1歳の誕生日を迎えた娘を待っていたのは
特発性血小板減少性紫斑病。
闘病について、書き記していこうと思います。

誕生日(午後)

2006年01月13日 | Weblog
入院が決まっても私はなんだか信じられずにいた。



お昼頃、先生が病室にやってきた。

症状の経過を、イチから順に、先生に話す。
先生も看護士さんから一通り話をきいているのだろうが、
確認するかのようにしっかり聞いているように見えた。


母子手帳をめくりながら、
”あ。9ヶ月検診、僕が診てますね。”


あぁ・・・
そういえば、この先生に診てもらった。
小児科医なのに無表情だった記憶がある。
決して悪く言っているわけではない。

血液検査の詳しい結果はもうしばらくで出るというので
それまで娘を抱っこして待っていた。







午後2時すぎ、先ほどの担当の医師2名に連れられ
病室から15メートルほど歩いて、面談室へ入った。



面談室は太陽の光が差し込んで明るい。
私の不安な気持ちとは
皮肉なことに対照的だ。



”ではご説明いたします”


私と旦那は娘を胸に抱き、固唾を呑んだ。


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病名は「特発性血小板減少性紫斑病」(ITP)という。

血液中には赤血球・白血球・血小板とある。
娘の血液には、赤血球・白血球は正常値であるものの
血小板が8000しかない。
通常、血小板は10万~30万必要といわれるなかで
この数値は非常に危険で、
すぐに治療を始める必要がある。

血小板を増やすには
①ステロイド
②γグロブリン血液製剤
どちらかを使用するのが有効である。

ステロイドはゆっくりと数値が回復するのに比べ、
γグロブリンは即効性がある。

娘の場合は、急いで数値を1万以上に上げないと
もし脳内で出血を起こした場合に
取り返しのつかないことになるため
後者を使用して治療をすすめていく。



ただしこの治療で効果が上がらない場合もある。
その時は、同じ治療をもう一度する。
万が一それでも効果が見込めない場合は
骨髄に異常があると考えられるため、
骨髄穿刺をして、再度検査をする。

血液検査の結果では白血球値に異常は見られないので
白血病の可能性は低いが、ゼロとは言い切れない。


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私たちにも分かるような言葉を使いながら
先生は説明をしてくれた。
今グロブリンが日本赤十字より搬送中との事で
同意さえ得られれば、到着次第、治療を開始するという。



もちろん同意するに決まっているのだが
もうすぐ私の両親が病院に来るので
治療方針について話をしてから同意書を書きたかった。




両親が到着し、満場一致で旦那が同意書にサインをした。




すぐに治療が始まった。


γグロブリンは静注で13時間以上かけて
娘の血液に流れ込んでいく。
心拍なども監視するため、足にモニターがつけられ、
娘の体は長いコードと点滴の管で動きが取りづらくなった。



18時。夕食の時間。
お膳には離乳食がたくさん並べられている。
娘は昼食を取っていなかったので
比較的よく食べたが、
いつもの食べっぷりとはほど遠かった。
私の気持ちが、そのように記憶させたのかもしれないが。




本当なら今日の晩ご飯は
家族3人で食卓を囲むはずだった。


バースデーケーキにはろうそくを1本たてて
3人で一緒にフーと消す。


プレゼントを開けて
娘の喜ぶ顔を見て
私と旦那は
普通の幸せを
普通に喜ぶはずだった。



それが、どうして病院で・・・。



とりあえず持ってきたケーキを前に
ハッピーバースデーの歌を小さな声で歌い
それが娘にしてあげられた
唯一の誕生日プレゼントだった。



病院に泊り込むこともできたのだが
・看護士さんが完全看護してくださる
・私の風邪を治すことが先決である
・病院から自宅まで近い
以上のことことから、
娘が眠ったのを見届けてから、
私たちは娘を病院に預け、帰路についた。


その晩、私は眠れなかった。
39度近い高熱と咳で眠れなかったのもあるが、
娘の命に何かあったら・・・
考えないようにしていてもチラリと頭をよぎる不安で
涙がこぼれた。



夜眠るときはおっぱいにかじりついていた娘。
ママのおっぱいが大好きな娘。
抱っこが大好きな、甘えん坊な娘。



ママがいないと
泣いてはいないだろうか。
パパがいないと
寂しがってはいないだろうか。




お部屋で毎日一緒に遊んだ笑顔
転んで泣いた顔
おもちゃを取られて怒った顔



何を思い出しても
涙が出てしまう。




この日は結局、ほとんど眠れなかった。




誕生日(午前)

2006年01月13日 | Weblog
2006年1月13日。

娘が初めて迎える誕生日。

初めての誕生日ということで、旦那は休暇を取ってくれた。
せっかくだから一緒に検査結果を聞きに行こうということで
予約の入っていた9時半に小児科へ向かった。

朝早いので、他の患者さんはおらず
受付をすませるとすぐ、診察室に通された。


”結論から言っちゃうとね”


とりあえず先に結論から述べる・・?
イヤな予感がした。

”血小板の数値がものすごく低いの”


・・・。


血液関係の病気が疑われていると、すぐにわかった。

先生の説明によれば
通常は10万~30万と言われる血小板の数が
娘は1万2000程度だという。
ただ、血液の成分である赤血球、白血球、血小板のうち
赤血球と白血球の数値には異常がないという。

”血液のこわい病気だといけないので
紹介状書くから、この足で今から行ってきなさい”

そんなに急を要するものなのか?

旦那とともに不安を抱きながら一旦自宅へ帰り
急いで車を走らせた。

国立成育医療センター。

子供の医療に関しては国の中心的な医療機関が
幸いにも自宅から15分ほどの距離にある。
実はこの病院で、娘は生まれた。
設備が整っていて、お産で何かあった時に安心だからという
周りのすすめもあって、
この病院でのお産をしたのだった。


生まれてちょうど1年後に、
生まれた病院に来るとは思わなかったね・・・

旦那とこんな会話をしながら救急外来で順番を待った。

ここの救急はトリアージといって
受付順に診察を受けるのではなく、
緊急性の高い順に先生が診てくださるため、
長時間待たされることは覚悟していた。

ところが、比較的早めに名前を呼ばれた。

そして診察室へ。

症状の経過をひととおり説明して
再度採血となった。

”お父さんとお母さんは外で待っていてください”

そう言われて待っていると、
押さえつけられることに敏感に反応する娘の
ものすごい泣き声が聞こえた。

病院に行くたびに聞く、わが子の悲痛な泣き声。
もうちょっとの辛抱だから我慢して・・!

ほどなくして私と旦那が診察室に呼ばれると
娘は採血されただけではなく
左のヒジから下を板と包帯で固定され、
そこからは点滴の管が垂れ下がっていた。

”血小板が8000しかないので
いますぐ入院の手続きを取ってください”


先生、今なんと??

私と旦那は先生の言葉を聴いて呆然としてしまった。

入院せずに帰りたいんですけど。今日、誕生日だし。

もちろんそんな事は言葉にしなかったけど
どうすれば良いのかわからず、
とりあえず我に返って入院の手続きを済ませた。

手続きが済むとすぐに病室の手配が済み、
病院を訪れて1時間半後にはすでに病室にいた。

初めて足を踏み入れる、小児病棟。

具合の悪い乳児って、こんなにいるんだ・・・
もちろん、娘よりももっと小さい赤ちゃんもいる。
胸が痛かった。