入院が決まっても私はなんだか信じられずにいた。
お昼頃、先生が病室にやってきた。
症状の経過を、イチから順に、先生に話す。
先生も看護士さんから一通り話をきいているのだろうが、
確認するかのようにしっかり聞いているように見えた。
母子手帳をめくりながら、
”あ。9ヶ月検診、僕が診てますね。”
あぁ・・・
そういえば、この先生に診てもらった。
小児科医なのに無表情だった記憶がある。
決して悪く言っているわけではない。
血液検査の詳しい結果はもうしばらくで出るというので
それまで娘を抱っこして待っていた。
午後2時すぎ、先ほどの担当の医師2名に連れられ
病室から15メートルほど歩いて、面談室へ入った。
面談室は太陽の光が差し込んで明るい。
私の不安な気持ちとは
皮肉なことに対照的だ。
”ではご説明いたします”
私と旦那は娘を胸に抱き、固唾を呑んだ。
--------------------------
病名は「特発性血小板減少性紫斑病」(ITP)という。
血液中には赤血球・白血球・血小板とある。
娘の血液には、赤血球・白血球は正常値であるものの
血小板が8000しかない。
通常、血小板は10万~30万必要といわれるなかで
この数値は非常に危険で、
すぐに治療を始める必要がある。
血小板を増やすには
①ステロイド
②γグロブリン血液製剤
どちらかを使用するのが有効である。
ステロイドはゆっくりと数値が回復するのに比べ、
γグロブリンは即効性がある。
娘の場合は、急いで数値を1万以上に上げないと
もし脳内で出血を起こした場合に
取り返しのつかないことになるため
後者を使用して治療をすすめていく。
ただしこの治療で効果が上がらない場合もある。
その時は、同じ治療をもう一度する。
万が一それでも効果が見込めない場合は
骨髄に異常があると考えられるため、
骨髄穿刺をして、再度検査をする。
血液検査の結果では白血球値に異常は見られないので
白血病の可能性は低いが、ゼロとは言い切れない。
--------------------------
私たちにも分かるような言葉を使いながら
先生は説明をしてくれた。
今グロブリンが日本赤十字より搬送中との事で
同意さえ得られれば、到着次第、治療を開始するという。
もちろん同意するに決まっているのだが
もうすぐ私の両親が病院に来るので
治療方針について話をしてから同意書を書きたかった。
両親が到着し、満場一致で旦那が同意書にサインをした。
すぐに治療が始まった。
γグロブリンは静注で13時間以上かけて
娘の血液に流れ込んでいく。
心拍なども監視するため、足にモニターがつけられ、
娘の体は長いコードと点滴の管で動きが取りづらくなった。
18時。夕食の時間。
お膳には離乳食がたくさん並べられている。
娘は昼食を取っていなかったので
比較的よく食べたが、
いつもの食べっぷりとはほど遠かった。
私の気持ちが、そのように記憶させたのかもしれないが。
本当なら今日の晩ご飯は
家族3人で食卓を囲むはずだった。
バースデーケーキにはろうそくを1本たてて
3人で一緒にフーと消す。
プレゼントを開けて
娘の喜ぶ顔を見て
私と旦那は
普通の幸せを
普通に喜ぶはずだった。
それが、どうして病院で・・・。
とりあえず持ってきたケーキを前に
ハッピーバースデーの歌を小さな声で歌い
それが娘にしてあげられた
唯一の誕生日プレゼントだった。
病院に泊り込むこともできたのだが
・看護士さんが完全看護してくださる
・私の風邪を治すことが先決である
・病院から自宅まで近い
以上のことことから、
娘が眠ったのを見届けてから、
私たちは娘を病院に預け、帰路についた。
その晩、私は眠れなかった。
39度近い高熱と咳で眠れなかったのもあるが、
娘の命に何かあったら・・・
考えないようにしていてもチラリと頭をよぎる不安で
涙がこぼれた。
夜眠るときはおっぱいにかじりついていた娘。
ママのおっぱいが大好きな娘。
抱っこが大好きな、甘えん坊な娘。
ママがいないと
泣いてはいないだろうか。
パパがいないと
寂しがってはいないだろうか。
お部屋で毎日一緒に遊んだ笑顔
転んで泣いた顔
おもちゃを取られて怒った顔
何を思い出しても
涙が出てしまう。
この日は結局、ほとんど眠れなかった。
お昼頃、先生が病室にやってきた。
症状の経過を、イチから順に、先生に話す。
先生も看護士さんから一通り話をきいているのだろうが、
確認するかのようにしっかり聞いているように見えた。
母子手帳をめくりながら、
”あ。9ヶ月検診、僕が診てますね。”
あぁ・・・
そういえば、この先生に診てもらった。
小児科医なのに無表情だった記憶がある。
決して悪く言っているわけではない。
血液検査の詳しい結果はもうしばらくで出るというので
それまで娘を抱っこして待っていた。
午後2時すぎ、先ほどの担当の医師2名に連れられ
病室から15メートルほど歩いて、面談室へ入った。
面談室は太陽の光が差し込んで明るい。
私の不安な気持ちとは
皮肉なことに対照的だ。
”ではご説明いたします”
私と旦那は娘を胸に抱き、固唾を呑んだ。
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病名は「特発性血小板減少性紫斑病」(ITP)という。
血液中には赤血球・白血球・血小板とある。
娘の血液には、赤血球・白血球は正常値であるものの
血小板が8000しかない。
通常、血小板は10万~30万必要といわれるなかで
この数値は非常に危険で、
すぐに治療を始める必要がある。
血小板を増やすには
①ステロイド
②γグロブリン血液製剤
どちらかを使用するのが有効である。
ステロイドはゆっくりと数値が回復するのに比べ、
γグロブリンは即効性がある。
娘の場合は、急いで数値を1万以上に上げないと
もし脳内で出血を起こした場合に
取り返しのつかないことになるため
後者を使用して治療をすすめていく。
ただしこの治療で効果が上がらない場合もある。
その時は、同じ治療をもう一度する。
万が一それでも効果が見込めない場合は
骨髄に異常があると考えられるため、
骨髄穿刺をして、再度検査をする。
血液検査の結果では白血球値に異常は見られないので
白血病の可能性は低いが、ゼロとは言い切れない。
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私たちにも分かるような言葉を使いながら
先生は説明をしてくれた。
今グロブリンが日本赤十字より搬送中との事で
同意さえ得られれば、到着次第、治療を開始するという。
もちろん同意するに決まっているのだが
もうすぐ私の両親が病院に来るので
治療方針について話をしてから同意書を書きたかった。
両親が到着し、満場一致で旦那が同意書にサインをした。
すぐに治療が始まった。
γグロブリンは静注で13時間以上かけて
娘の血液に流れ込んでいく。
心拍なども監視するため、足にモニターがつけられ、
娘の体は長いコードと点滴の管で動きが取りづらくなった。
18時。夕食の時間。
お膳には離乳食がたくさん並べられている。
娘は昼食を取っていなかったので
比較的よく食べたが、
いつもの食べっぷりとはほど遠かった。
私の気持ちが、そのように記憶させたのかもしれないが。
本当なら今日の晩ご飯は
家族3人で食卓を囲むはずだった。
バースデーケーキにはろうそくを1本たてて
3人で一緒にフーと消す。
プレゼントを開けて
娘の喜ぶ顔を見て
私と旦那は
普通の幸せを
普通に喜ぶはずだった。
それが、どうして病院で・・・。
とりあえず持ってきたケーキを前に
ハッピーバースデーの歌を小さな声で歌い
それが娘にしてあげられた
唯一の誕生日プレゼントだった。
病院に泊り込むこともできたのだが
・看護士さんが完全看護してくださる
・私の風邪を治すことが先決である
・病院から自宅まで近い
以上のことことから、
娘が眠ったのを見届けてから、
私たちは娘を病院に預け、帰路についた。
その晩、私は眠れなかった。
39度近い高熱と咳で眠れなかったのもあるが、
娘の命に何かあったら・・・
考えないようにしていてもチラリと頭をよぎる不安で
涙がこぼれた。
夜眠るときはおっぱいにかじりついていた娘。
ママのおっぱいが大好きな娘。
抱っこが大好きな、甘えん坊な娘。
ママがいないと
泣いてはいないだろうか。
パパがいないと
寂しがってはいないだろうか。
お部屋で毎日一緒に遊んだ笑顔
転んで泣いた顔
おもちゃを取られて怒った顔
何を思い出しても
涙が出てしまう。
この日は結局、ほとんど眠れなかった。