皆さんこんにちは。USBeです。本記事はペンシルパズルAdvent Calendarの7日目の記事になります。
まずは簡単に自己紹介から。3年くらい前(?)からUSBeというペンネームで時々ニコリに投稿していて、何回か掲載していただいています。お手元のニコリをご確認ください。
さて今回の記事ですが、ズバリ「さしがねについて」、です。先日Twitterで「Twitter上にあるさしがねは大部分がひとりの作なんですね」といった旨のツイートを見て、「確かにそうかも」と思い調べてみました。すると、2018年6月1日~2018年12月3日の期間にTwitter上に投稿された全39作品のさしがねの内、34問が拙作でした(USBe調べ)(「さしがね pzv.jp」でツイート検索)。みんなもっと作ろうよ!僕が作り過ぎているだけな気もする
※この記事はとても長いです。以下のような流れになっているので飛ばし飛ばし読む人は参考にしてください
①さしがね座談会
┗さしがねの歴史
┗ルールのおさらい
┗ビジュアル面はどうなの?
┗実際に作ってみよう!(※画像たくさん。2問作ります)
②おまけ。さしがねならではの考え方の話
┗「発生」
┗「空間処理」
③終わりのコメント
現在のさしがねの寡占状態は何たるや...このままではさしがねの未来は明るくないのでは...そう思った有志が集まり、さしがね普及委員会(会員1名)を立ち上げたのであった。
ここからは12月某日に上委員会主催で開かれた「第一回さしがね座談会」の様子をお送りします。
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U「本日はお集まりいただきありがとうございます。本会はさしがねのこれまでとこれからを考えるシンポジウムとなっています。よろしくお願いします」
S,B,e「よろしくお願いします」
U「では早速、さしがねはなぜ人気が無くなってしまったのかについてを議論して...」
e「その前にちょっといいかな。そもそもさしがねってどんなパズルだっけ?」
S「確かに私もさしがねのことよく知らないかも」
B「右に同じ」
U「え、ちょっと大丈夫ですかそれ。ちゃんと議論になるのかな...。さしがねはルールに沿って盤面をL字型に切り分けるパズルです。ニコリ134号で誕生し、138号でオモパの後ろのコーナーに昇格しました。しかし定食化はすることなく149号のオモパコーナーで「縦横さん」の昇格が決まったことにより引退しました。その後3年の時を超えて161号で「さしがねⅡ」というパズルが登場し復活の兆しが見られたものの、こちらは残念ながらすぐに消えてしまいました」
S「L字型ってあんまり見ないけど急に現れたルールなの?」
U「いい質問ですね。131号で「笑福」という、盤面をL字型に分けるパズルが生まれました。その後L字系オモパの流行の中133号で「エルート」が誕生。エルートの丸に数字を入れてマス数を表すという進化を遂げて今のさしがねになりました」
S「二段階進化なのね。コドラ→ココドラ→ボスゴドラみたいな」
e「ナマケロ→ヤルキモノ→ケッキングじゃね?」
B「イシツブテ→ゴローン→ゴローニャでは」
S,e「それだ!」 U「???」
U「話が逸れましたが、さしがねのルールを確認しておきましょう。さしがねは盤面を幅1マスのL字型に切り分けるパズルです。〇はL字型のブロックの角のマスになり、〇の中の数字はそれが入るブロックのマス数を表します。数字のない〇は何マスのブロックに入るかわかりません。矢印はL字型のブロックの端のマスになり、矢印の指す向きに角があります。以上がルールの概要です」
e「うーんちょっとわかりにくいー」
U「例題と答えを見れば一目瞭然でしょう。比較的シンプルなルールのパズルだと思います」
S「ルールはわかったけど解く時のとっかかりはどういったものがあるのかしら?」
U「うーん...あんまりこういうのは言いたくないんですけどね。定石としてはこんな感じですね」
S「ちょっと地味じゃないかしら?美術館みたいにバーンって線が引けたりしないわけ?」
U「そう言われましても...まぁ確かに解き味がちょっと地味というのは否めないですね...でもこんな感じに数字と矢印を使って長いL字を確定したりできますよ」
e「マス数数えるのメンドイ」
U「そこは我慢してくださいよ。それ言ったら塗る系のパズルはみんな塗るのメンドイですよ」
S「だったらさ、さしがねの魅力ってどこにあるの?今のところ「L字型が珍しい」くらいしか無いけど」
U「数字と矢印をうまく使った問題は軽めでロジカルで楽しいですよ。136号のオモパコーナーのコメントにもありましたが、数字をうまく使った問題は魅力的です。ただ私は個人的には記号の無いL字がいっぱい出てくる問題が好きですね。何も無いところからL字が生まれるのが面白いと思います。でもこれはあんまり一般向けでは無いような気もしますが...」
S,e「話が長い!」
e「やっぱりさしがねって見た目が地味じゃない?ヘルゴルフだったら池で絵が描けるし、四角に切れや数独だったら点対称配置が基本じゃん?」
B「あと解き終わりにも遊び心がないわよね。シャカシャカみたいに派手でもなければ絵が出るとかも無いし」
U「それはそうなのですが、点対称配置をはじめとした見た目にこだわった問題もちゃんと作れますよ。こんなのとか(ツイート紹介)」
https://twitter.com/usbe6/status/989284046084558848?s=21
https://twitter.com/usbe6/status/968314862106480643?s=21
https://twitter.com/usbe_puz/status/968067576797409282?s=21
S「ハートマーク可愛い~」
e「ちょっと解いてみたくなるかも」
B「でも現状作る人少ないよね」
U「それは言わないでー」
e「作る人がいないパズルの未来は明るくないよ。作る上でのコツとかを広めたらいいんじゃない?」
U「じゃあこの場でちょっと作ってみますね」
─ ─ ─ ─ ─
U「まずは無難に左上に入り口を置いて、ついでに点対称な位置に〇を置いちゃいましょう。せっかくなので点対称配置にします」
U「次に矢印を使って左側を埋めちゃいましょう。点対称な位置に〇を追加して、この時一番右の列下から2番目のマスからLじブロックの一部が伸びてくるので忘れないように注意」
U「ちょうどいいので左下に⑦を入れます。右上はいちおう?を置きますが、↓か←にしたいですね。⑦を置いたことでここまで進められます」
U「左から4列目下から3列目のマスは左に境界線ができると答えが2通りになってしまうので危険ですね。右にある〇に数字を入れて回避しましょう」
U「左下の⑦に合わせて7を入れてみました。すると右から伸びていたL字のおかげで今置いた⑦が決まりさっきのマスが決まりましたね。ここまで来たらあとはラストスパートです」
U「試しに5を入れてみたら盤面が完成しました。あとはチェックで解き直せばOKです」
e「ちょっと、普段の感じで作っちゃダメだよ~。フィーリングでガンガン埋めていくのもいいけど慣れない人に伝わらなかったら元も子もないよ」
B「途中がちょっとよく分からなかった」
U「おっと。失礼しました。では今度は配置にとらわれずに数字をうまく使って解く、初心者向けの問題を目指して作ってみます」
U「左上と右下に入り口を設けました。〇は後で数字を入れることで調整が効くので、作る上では便利だと思います」
U「④を2個入れてみました。自然な流れで数字の無いブロックも発生しましたね。いい感じです」
U「④をさらに追加して、右上をテキトーに処理して完成です」
e「なるほど~。今度はちゃんとわかった」
─ ─ ─ ─ ─
U「以上がさしがねの作り方の一例の紹介です。これで皆さんもさしがね作ってみたくなりましたよね?」
S「誰か作ってくれるんじゃないかしら」
B「右に同じ」
e「誰か作ってくれるっしょ」
U「皆さん作りましょうよ~!」
【ここからはさしがねにおける「発生」と「空間処理」の話をお送りします】
戻ってきましたUSBeです。僕は個人的に「記号の無い空間でL字が発生する」というのが好きで、それを使った問題をよく作ってます。初心者には重い問題になりがちですが、「表出を減らしたいけど大きい数字に頼りたくない!」とか「綺麗な見た目の問題を作りたい!」といった時にこの考え方は便利なので紹介します。
[目次]
1.「発生」とは?
2.「空間処理」とは?
3.使用上の注意
1.「発生」とは?
「発生」というのは、「記号の無い空間からL字ブロックができ、それが周囲に影響を与える」ということを表した造語です。周囲に影響を与えるというのが大事で、序盤だけでなく中盤以降にも容易に入れられます。
では具体例を見ていきましょう。
一番簡単なのは下の例です
下向きの矢印と同じ効果を持つマスが発生しています。少し発展させると下のようになります。
これらの手筋は「端」が発生するのでその先の展開も作りやすくて便利です。
L字型ブロックの「端」からは角に向かってブロックの範囲が伸び続けます。逆に角が決まってしまうと、角に数字入りの丸を置くか周囲を埋めるかをしないとブロックが確定しません。「先の展開の幅を広げておくために角をなるべく決めずに作り進める」というのが僕なりのやり方です。
ちなみに2つ目の例ではその先にこうやって伸ばし続けたり、
下から矢印をぶつけて曲げたり、
同じ形をぶつけたり()
できます。
また、「発生してはいけない」というのを使うこともできます。
左下の矢印から伸びているブロックがもし隣のマスで曲がると、右下のマスで「発生」が起こります。するとその上にある④が5マス以上のブロックになるため不適です。そのため下のようになります。
「発生」は問題の中盤以降にも入れられます。例えばこんな感じです。
そしてここで発生したブロックは伸びに伸びて
なんと9×9盤面の下3分の1を埋めるほどになりました。ぐーんと伸びるのが楽しいですね。
発生の連鎖の例をもう一つ見てみましょう。
周囲の記号により3マスの記号なしブロックが発生し...
それにより新たにもう一つ発生しました。
それを別の場所で発生させたブロックと合流させて...
さらにもう一つ発生しました。
⑤のブロックを確定させるために使った矢印を再利用して最後に発生したブロックが伸びていきます。同じ記号を2度、違った用途で使うのは萌えポイントですね。
「発生」をうまく使うと盤面の表出を減らして見た目をスッキリとさせつつ、サクサク進む面白さも持たせられます。
2.「空間処理」とは?
続いて「空間処理」についてです。「空間処理」というのは「記号の無い空間が、その形によって一意に分割される」ということを表す造語です。「空間処理」では「発生」を伴うこともあります。ちなみに「空間処理の逆」というのもあります。
空間処理は埋めたら終わりのため序盤には出てきません。盤面を埋めていったらある形が残り、ちょっと考えたらその切り分け方がわかる、といったものです。
例えば下のような形はどれも1通りで分割できます。
こういった空間処理は解いていても目立つので問題のアクセントとして役立ちます。「記号を使ってサクサク進んだと思えばこんな空間が現れ、「どうやって分ければいいのかな」と考える」というのも、メリハリがあって面白いと思います。
ところで「メリハリ」の「メリ」ってなんですかね。なんだか漢字の「刈」に見えてきました。
ーー 閑話休題 ーー
また、この形は必ずL字型に分割できないという「空間処理の逆」というのもあり、例えば下のようなものです。
「これらの形ができないようにするにはどうするか」ということを考える問題も作れます。
「空間処理と空間処理の逆を組み合わせたギミックも作れそうだな~」と、この記事を書きながら思いました。
3.使用上の注意
「空間処理」はあんまり調子に乗って入れまくると重い問題になることもあるので、容量を守って使用しましょう。
「発生」と「空間処理」について長々と書きましたがこの2つは必ずしも独立したものではありません。今回は記号の無い場合のみを書きましたが、「空間処理」には記号が絡んでくることもあります。
最後に
非常に長い文章になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章で読みにくかったかもしれませんね。最後のほうは駆け足になってしまい,思っていることをあんまり表現できていないような... 文章を書くのって難しいですね。
この記事を通して、表舞台から去ったオモパの一つである「さしがね」のことが分かり、少しでも好きになってくれたら幸いです。願わくばさしがねを(よく)作る人が増えていろんな問題が解けるようになりますように。あわよくばニコリ本誌に復活を...
今回の記事のまとめ的な問題を作ったので置いておきます。
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