翻弄 2006-01-31 | 物語の欠片 雪はやがて雨に変わり 雨雲が切れて一瞬の晴れ間 その一言で再び雪が舞い降りて かと思えば春の気配に氷が溶けかけ 油断して上着を脱ぎ風邪でベッドに倒れ 熱に浮かされひとり夢で抱かれては夏の吐息
情けない週末 2006-01-30 | 物語の欠片 夫がベランダから静かに夕日を見つめている 日曜の夕刻の燃えるような空を見送っている 妻がアイロンをかけながら虚ろな目をしてる 日曜の夕刻に染まった部屋で心此処にあらず 愛おしい誰かを狂おしく想いながら日は暮れ
オトナノコイ 2006-01-28 | 物語の欠片 やがてくる別れを先延ばししているに過ぎない それが分別のある恋の行方というものでしょか 貴女は一体どうしたいのかと問われたらならば いっそ大人などやめてしまいますと答えるしか
condition reflection 2006-01-26 | 物語の欠片 左の車の女が前を向いたまま泣いてる 時々左手のハンカチで目元を押さえて 信号が青になりウインカーを上にあげた どうするつもりもなく鼓動だけが高まる 彼女との約束の時間にはまだ少し早い
或る老人の記憶 2006-01-22 | 物語の欠片 終の棲家にて古い手帳を繰り 蒼き遠日の淡き恋心をおもひ 流るる鉛筆の頼りなき筆跡に 雷鳴を聞き立ちつくすばかり 毎年この日に何故か胸泡立ち 居ても立ってもいられぬ我を その一節が解き明かすばかり
美しいおはなし 2006-01-15 | 物語の欠片 能無し男と脳無し女は互いに何かを売って プレゼントを買わねばならなかったのです 他に売るものがなかったというだけなのに あなたは何故そんなに顔を顰めるのですか