ぷかり・・・ぷかり

仮想空間のego psychology

図書館の午後

2006-06-15 | 物語の欠片

紙の匂い 咳払い 頁を捲る音 カサリ

先週私が借りた本を誰かが探している

その知らない誰かを尾行してみようか

雨の匂い キーボードを叩く音 タタン

その日は永遠にこない

2006-06-13 | 物語の欠片

女はテーブルの上の紙幣を見つめていた
今日こそ此処から逃げ出せるだろうかと

1時間ののち女はふらふらと立ち上がり
泣きながら静かに3合の米をといでいた

少子化対策

2006-06-11 | 物語の欠片

ということで中高生及び大学生の皆さんは
これから大いに実りあるセックスに励んで下さい!
ということで高齢者の皆さん聞いてますか
これから日本の未来のために育児に励んで下さい!

穏やかな午睡

2006-06-10 | 物語の欠片

砂糖抜きのダイキリを
頬にあたる風は貿易風

夢から覚めた僕は肌寒さに毛布を引き上げた
枕元のヘミングウェイが片頬でニヒルに嗤う

茫然自失

2006-06-09 | 物語の欠片

足音を忍ばせて部屋に行ってはみた
赤ん坊の甘く清らかな匂いに俯いた
彼女を抱くなんてもう俺には無理だ

幽閉

2006-06-07 | 物語の欠片

緋色の絨毯が敷き詰められた部屋

蔦で縁取られ日毎に狭まる出窓に佇み

サイケデリックな単の着物を肌に羽織って

烏色の電話が啼くのをひたすら待ち焦がれている

ガイジンさん

2006-06-06 | 物語の欠片

サイレンなるとユミコさんマスクとボウシとりますね
そのときキレイなカオとカミみますとてもキレイです

浅黒い肌をもった人はそれだけ言うと頭を下げて去った
皺と機械油にまみれた手に持った弁当箱の朱色が滲んだ

オオキンケイギク

2006-06-04 | 物語の欠片

あてもなく車を走らせていた
ふと川沿いの坂を見ると男が一人
一面に咲く野辺の黄色い花を摘んでいる

彼は車を止めて男を見つめた
それからしばらくして車を降りた
一面に咲く野辺の黄色い花を摘み始めた

愛読者

2006-06-03 | 物語の欠片

彼の手からこぼれ落ちた魂の欠片を素手で拾い集める

飛び散った夫の脳を掻き集めるジャクリーンのように

生存確認

2006-06-01 | 物語の欠片

日が暮れると募るいよいよの焦燥感に
安全ピンを外し針先で恐る恐る左腕をひっかいてみた
声を上げることなく痛みに息を呑んで
目撃者もいない部屋で一筋の朱を見つめ静かに舐めた

カネ

2006-05-31 | 物語の欠片

俺は友人だからこそ金を貸したくはなかっただけなのだ

俺は友人だからこそ彼に金など借りたくはなかったのだ

俺は友人だから金などくれてやってもいいとさえ思った

俺は友人ならば金さえも惜しくはないとまで思っていた

俺は友人に貸してやる金さえない甲斐性のない男なのだ

俺は金を貸してくれる友人さえいない孤独な人間なのだ

華やかなパーティー

2006-05-30 | 物語の欠片

オードトワレと整髪料と化粧と肌と笑顔と会話と
シャンパンと麦酒と磨かれた靴と腕時計と指輪と
さんざめく夜のスパイラルに散りばめられた銀色
オレに話しかける者などただの一人もいないのだ