その日は永遠にこない 2006-06-13 | 物語の欠片 女はテーブルの上の紙幣を見つめていた 今日こそ此処から逃げ出せるだろうかと 1時間ののち女はふらふらと立ち上がり 泣きながら静かに3合の米をといでいた
少子化対策 2006-06-11 | 物語の欠片 ということで中高生及び大学生の皆さんは これから大いに実りあるセックスに励んで下さい! ということで高齢者の皆さん聞いてますか これから日本の未来のために育児に励んで下さい!
ガイジンさん 2006-06-06 | 物語の欠片 サイレンなるとユミコさんマスクとボウシとりますね そのときキレイなカオとカミみますとてもキレイです 浅黒い肌をもった人はそれだけ言うと頭を下げて去った 皺と機械油にまみれた手に持った弁当箱の朱色が滲んだ
オオキンケイギク 2006-06-04 | 物語の欠片 あてもなく車を走らせていた ふと川沿いの坂を見ると男が一人 一面に咲く野辺の黄色い花を摘んでいる 彼は車を止めて男を見つめた それからしばらくして車を降りた 一面に咲く野辺の黄色い花を摘み始めた
生存確認 2006-06-01 | 物語の欠片 日が暮れると募るいよいよの焦燥感に 安全ピンを外し針先で恐る恐る左腕をひっかいてみた 声を上げることなく痛みに息を呑んで 目撃者もいない部屋で一筋の朱を見つめ静かに舐めた
カネ 2006-05-31 | 物語の欠片 俺は友人だからこそ金を貸したくはなかっただけなのだ 俺は友人だからこそ彼に金など借りたくはなかったのだ 俺は友人だから金などくれてやってもいいとさえ思った 俺は友人ならば金さえも惜しくはないとまで思っていた 俺は友人に貸してやる金さえない甲斐性のない男なのだ 俺は金を貸してくれる友人さえいない孤独な人間なのだ
華やかなパーティー 2006-05-30 | 物語の欠片 オードトワレと整髪料と化粧と肌と笑顔と会話と シャンパンと麦酒と磨かれた靴と腕時計と指輪と さんざめく夜のスパイラルに散りばめられた銀色 オレに話しかける者などただの一人もいないのだ