まず前口上。
思いっきりネタバレ満載で書きます
もう公開から1箇月が経っているんで,ネット等で詳細をご存知の方が多いと思いますが,それでも
まだ見てね~ぞ,ゴルァ!!
という人の為に,一応宣言しておきます。
ということで,レンタル開始まで見るのを待とうとか思われている方,ネタバレが大っ嫌いな方,
直ちに戻るボタンを押しましょう
それでも,見ないからいいや,と思われる方のみこの続きを御覧下さい。
(中には,ノベライズ版の内容も含まれています。)
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ということで,記事開始。
実は,前の記事の最後に
” 機会があったら,一度見てみたい作品だと思います。 ”
と書いて結んでいましたが,その後,この作品のノベライズ版(『ノロイ 小林雅文の取材ノート』/林巧:著/角川ホラー文庫:発刊)を見てしまったので,
話の展開がすっかりわかってしまったので,見に行かないつもり
だったのでした。
それが,職場に近い映画館でラスト興行があった事,また時間的に余裕があったので,見に行きました―当方が,この作品に魅入られている―ということではない(笑)。理由は後述―。
1.総括
一つの映像作品としては,映像上で起こったことをありのまま受け入れるのなら,これはこれでOKだと思いますが,
実在の出来事として謳った作品としては,少しお粗末
な出来だったのではないかと思います。
まず展開が進むにつれて,だんだん見方が醒めていった―ノベライズ版を先に読んでいたこともありますが―というのが致命的であったこと。
(それでも,鑑賞していた十代後半~二十代前半の男女のグループは,結構恐がっていましたが。)
限られた時間上で,どうしても描きたいのが多かったのはわかりますが,同じシーンを”スローカットでもう一度”というのが何シーンもあり,話の流れが一旦そこで物切りになっていて,結果的に話の展開を阻害している,という印象を受けました。
例えば,こういう感じ。
(一部仮名の人物は,敬称略にしています。)
- 「赤ん坊の泣き声がする」家に住む,女性のシーン
- 「赤ん坊の泣き声がする」家の取材を断念した後,窓から少年が覗いていたシーン
- アンガールズと松本まりか嬢の肝試しのシーンで,松本嬢が倒れ,撮影中断となったシーン
- 松本嬢が倒れる前にカットされていたシーン(男の声が聞こえた,と言って周囲を見廻していた松本嬢の後ろに,男の子らしい白い影が写っていた事)
- 小林雅文が,霊能力者・堀光男を自宅で取材した際の,”かぐたば”関連のシーン
- 松本嬢を自宅で撮影したシーン(ノイズ部分に”かぐたば”という音声が録音されていたシーンの事)
- あるマンションの一室に住んでいる青年=大沢真一が,窓辺に集まった鳩のうちの一匹を捕まえるシーン
- 下鹿毛村最後の,鬼祭のシーン(かぐたば=禍具魂に扮した女性が,儀式の後のたうちまわるシーン)
- 三日石に住む,その女性=石井潤子を訪問したときのシーン(この時,石井潤子=禍具魂に扮した女性が,「赤ん坊の泣き声がする」家に住んでいた女性だった―とわかる)
- 堀と小林が旧下鹿毛村付近で目撃した,真の”禍具魂”(と思われるもの)を発見したシーン
これらのシーンは,見終わった後なら全て思い起こすシーンとなっているのですが,その反面,鑑賞している人間の中には,一旦平静な状態に戻れる可能性があるのではないか,と思いました。
それから気になったのは,
一つのエピソードが終わると,必ずそこで暗転される
シーンを多用していた事。
これを入れるのは,”小林雅文が監修する怪奇モノの特徴”と考えられるのですが―実際本作品は,他の人間が関係しているシーンが前後にある形で,小林雅文の”ノロイ”ルポが間に入る―言ってみれば,入れ子状態―形式になっているので,小林雅文が監修した映像をそのまま使っているのならそう考えられる。―,話の流れが一旦そこで物切りになっていて,結果的に話の展開を阻害しているのではないか,と思いました。
というか,
暗転を多用すると,作品を見る持続感が保てない
ないんじゃないかと思います。
この作品は,映画館で見るよりは自宅で深夜に見る方が相応しいのではないか…という気がしています。
2.実在の出来事としてはありえなさそう,なシークエンス
まぁこれがあったために,”実在の出来事”と謳っていた本作品が,
フィクションなんでしょ,どうせ
と思ったんですが。
これらのシーンを後で冷静に考えてみると,非常に胡散臭く感じました。
また,”禍具魂”が出てくるシーン
- 小林と堀が目撃した,”禍具魂”のシーン
- ラスト,小林宅炎上の理由が収められたフィルムにあった,男の子の顔が一瞬”禍具魂”の仮面になっていたシーンと,少年の後ろにいた少女のシーン(ノベライズ版では,小林が伝える媒体が取材メモであるので,この関連のシーン―というより,”禍具魂”のことが余りにも記されていない―は,結局真相がはっきりとしていない)
も,明らかにCGを使っているのが判って,少し萎えてしまいました…。
ワシの映画代,返せ~!
迄は言いませんが。作品として楽しめた部分はあったしね(苦笑)。
3.少しでも知っていれば,興味が起こること
とは言うものの,全く駄目―だったわけではなく,興味深く思ったことがあります。
まず,”禍具魂”を鎮めるときに行った,「一礼四拍一拝」(ノベライズ版では,”一拝四拍一拝”となっていますが,明らかに間違いではないかと)。
通常,神社の参拝形式は”ニ礼ニ拍一拝”―つまり,二回礼をして,二回拍手を打ち,一回拝むいう事―なのですが,この作品での参拝形式は,
一回礼をして,四回拍手を打ち,一回拝む
という形式なんですね。
四拍―というのは珍しく,他にあるのは出雲神社の参拝形式―二礼四拍一拝―位で他にはありません。
因みに,出雲神社は
- 祭神が大国主神(オオクニヌシノミコト)
- 神社にある大木には変わった形で注連縄が打たれている
- 御本尊の大国主神の御神座はそっぽを向いている(!)
- 源為憲(みなもとのためのり)が記した『口遊(くちずさみ)』という本に,平安時代の建築物の高さを示した言葉(雲太,和二,京三)が有り,雲太=出雲神社,和二=東大寺大仏殿,京三=平安京の大極殿を指す。
という特徴があり,これらの内容を”大国主神の鎮魂の為”という意見で,井沢元彦氏の『逆説の日本史 1』に書かれていたと記憶しています。
また井沢氏関連になりますが,井沢氏が提唱している鎮魂思想(不幸な死に様をした人物を挙げ奉る)を知っていると,下鹿毛村がダムで沈んだことが結果として悪い影響―”禍具魂”が跳梁跋扈するきっかけとなった―を与えたと思われます。
まぁ,こんな感じで当方は粗があるけれども,この作品を楽しめました。
ただ…。
会話のパターンでよく言われていること。
真実は100%語られることはなく,7割が嘘で,3割が真実
というのがありますが,ひょっとしたら,この映画も…。