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彩賀の徒然なるままに…

徒然なるままに,種々様々な事を記す控帳(TB&Comenntは表紙1番目の記事をご参照を。)

【ノロイ】見て参りました…(ネタバレ満載)。

2005-09-17 18:00:00 | 映画(邦・米・欧・韓・華など)

まず前口上。

  思いっきりネタバレ満載で書きます

もう公開から1箇月が経っているんで,ネット等で詳細をご存知の方が多いと思いますが,それでも

  まだ見てね~ぞ,ゴルァ!!

という人の為に,一応宣言しておきます。

ということで,レンタル開始まで見るのを待とうとか思われている方,ネタバレが大っ嫌いな方,

  直ちに戻るボタンを押しましょう

それでも,見ないからいいや,と思われる方のみこの続きを御覧下さい。
(中には,ノベライズ版の内容も含まれています。)















ということで,記事開始。

実は,前の記事の最後に

  ” 機会があったら,一度見てみたい作品だと思います。

と書いて結んでいましたが,その後,この作品のノベライズ版(『ノロイ 小林雅文の取材ノート』/林巧:著/角川ホラー文庫:発刊)を見てしまったので,

  話の展開がすっかりわかってしまったので,見に行かないつもり

だったのでした。

それが,職場に近い映画館でラスト興行があった事,また時間的に余裕があったので,見に行きました―当方が,この作品に魅入られている―ということではない(笑)。理由は後述―。

1.総括
一つの映像作品としては,映像上で起こったことをありのまま受け入れるのなら,これはこれでOKだと思いますが,

  実在の出来事として謳った作品としては,少しお粗末

な出来だったのではないかと思います。

まず展開が進むにつれて,だんだん見方が醒めていった―ノベライズ版を先に読んでいたこともありますが―というのが致命的であったこと。
(それでも,鑑賞していた十代後半~二十代前半の男女のグループは,結構恐がっていましたが。)

限られた時間上で,どうしても描きたいのが多かったのはわかりますが,同じシーンを”スローカットでもう一度”というのが何シーンもあり,話の流れが一旦そこで物切りになっていて,結果的に話の展開を阻害している,という印象を受けました。

例えば,こういう感じ。
(一部仮名の人物は,敬称略にしています。)

  • 「赤ん坊の泣き声がする」家に住む,女性のシーン
  • 「赤ん坊の泣き声がする」家の取材を断念した後,窓から少年が覗いていたシーン
  • アンガールズと松本まりか嬢の肝試しのシーンで,松本嬢が倒れ,撮影中断となったシーン
  • 松本嬢が倒れる前にカットされていたシーン(男の声が聞こえた,と言って周囲を見廻していた松本嬢の後ろに,男の子らしい白い影が写っていた事)
  • 小林雅文が,霊能力者・堀光男を自宅で取材した際の,”かぐたば”関連のシーン
  • 松本嬢を自宅で撮影したシーン(ノイズ部分に”かぐたば”という音声が録音されていたシーンの事)
  • あるマンションの一室に住んでいる青年=大沢真一が,窓辺に集まった鳩のうちの一匹を捕まえるシーン
  • 下鹿毛村最後の,鬼祭のシーン(かぐたば=禍具魂に扮した女性が,儀式の後のたうちまわるシーン)
  • 三日石に住む,その女性=石井潤子を訪問したときのシーン(この時,石井潤子=禍具魂に扮した女性が,「赤ん坊の泣き声がする」家に住んでいた女性だった―とわかる
  • 堀と小林が旧下鹿毛村付近で目撃した,真の”禍具魂”(と思われるもの)を発見したシーン

これらのシーンは,見終わった後なら全て思い起こすシーンとなっているのですが,その反面,鑑賞している人間の中には,一旦平静な状態に戻れる可能性があるのではないか,と思いました。

それから気になったのは,

  一つのエピソードが終わると,必ずそこで暗転される

シーンを多用していた事。

これを入れるのは,”小林雅文が監修する怪奇モノの特徴”と考えられるのですが―実際本作品は,他の人間が関係しているシーンが前後にある形で,小林雅文の”ノロイ”ルポが間に入る―言ってみれば,入れ子状態―形式になっているので,小林雅文が監修した映像をそのまま使っているのならそう考えられる。―,話の流れが一旦そこで物切りになっていて,結果的に話の展開を阻害しているのではないか,と思いました。

というか,

  暗転を多用すると,作品を見る持続感が保てない

ないんじゃないかと思います。

この作品は,映画館で見るよりは自宅で深夜に見る方が相応しいのではないか…という気がしています。

2.実在の出来事としてはありえなさそう,なシークエンス
まぁこれがあったために,”実在の出来事”と謳っていた本作品が,

  フィクションなんでしょ,どうせ

と思ったんですが。

  • 不可解な死を遂げることになる人物の共通項目が余りはっきりとしてないこと(共通項として考えられるのは,複数の鳩が自宅に突っ込んで死んでしまう―といった,”鳩”が何かの形で関わっている石井潤子の隣に住んでいる人間は子供の泣き声がするのを聞いている,というのが考えられるのだが,その中でも,君野みどり,君野みどり・大沢真一と一緒に縊死していた他の5人,矢野喜美子,矢野加奈,堀光男 はなぜ死ななければならなかったかを考えると,前述の共通項が”ない”,または”見受けられない”。その中でも,矢野加奈と堀光男は共に”超能力者”である,共通項があるのだが…)。
  • それに加えて,一番惨禍の真っ只中にいたと思われる,宮島久志―カメラマン―に何も惨禍が起こっていないのがおかし過ぎる。『リング』で浅川和行が生き残った理由の隠された真実が『らせん』で明らかになった―浅川が,取材メモというある種の”子供”を残していた―のと同様に,フィルムという記録(小林雅文が監修したとはいえ,その素材を撮っていたのは,ほかならぬ宮島本人である)を残していたから…とでも言うのだろうか。
  • 更に追加で,大沢真一の事で取材した津田青年,”禍具魂”のことを小林に教えた民俗学博士の塩谷和秀,”下鹿毛法”を小林に教えた郷土史家の谷村には何も起こらなかったのか―という疑問が生じる。彼らも間接的にとはいえ,事件に関わっている見方が出来るのだが。
  • また松本まりか嬢を除く著名人に何の惨禍が起こっていないのが変。本作に登場している著名人は,アンガールズ,飯島愛,ダンカン,荒俣宏,高樹マリア(以上,敬称略)がいるが,何の惨禍も起こっていないのはおかしすぎる。小林は,何か事件が起こったときなどに,TVのニュースを撮影している癖があるらしく,前記の人間に何かが起これば何かしらの記録を残している筈なのに,何も撮影していない=何も起こっていないと考えられる。実は,実名で登場している著名人は別の誰かを充てているのだろうか。
  • 松本嬢が,自宅の上の階に住んでいた後輩=君野みどりが自殺したことでパニックになり,マンションを出て杉書房を尋ねるシーン(これだけに関わらず,松本嬢には,マネージャーがいない…のか,1人で出向いたりとかいうのが多すぎる。まず,マネージャーがいればタレントの周辺で不可解な状況が頻発している最中,その件を当人任せにはしないだろう。松本嬢が直接小林に連絡する…というのも変な話。普通なら,松本嬢→マネージャー→小林 の経緯で連絡が行くと思うのだが,余りにも端折りすぎている気がする。本作品が,”再現フィルムという性質”があるのなら,多少端折って描かれるのは間違ってはいないのだか…)。
  • 小林が三日石在住の,”下鹿毛村の神官だった石井氏の娘”の存在を知ったとき,下の名前を聞いていなかったのが変。少なくとも取材対象となるべき人間の名前を聞かない―というのが変。ノベライズ版では同じようなケースで,矢野加奈の名前をディレクターから聞いているという記述がある。実は,小金井の「赤ん坊が泣く家」の女性の名前は,郵便物を見た小林本人が”石井潤子”だと劇中ではっきり確認している(!)。ノベライズ版では,この辺を上手く誤魔化しているので,それほど齟齬は感じない。
  • ラスト導入部以降(ぶっちゃげた話,登場人物―特に小林と松本嬢―が演技くさいと感じた:苦笑)のキャラ全般。
  • 三日石の各家庭で飼っていた犬が一斉に姿を消していたシーン(実は後のシーンで,”禍具魂”の生贄となっていたことがわかるのだが,短期間―小林が”禍具魂”の件で三日石を訪れてから,数週間位は経っている筈なのに,何も揉め事が起こらずに,また何も報道をされずに,犬だけが姿を消したのだろうか…。矢野加奈の失踪と状況が同じなら,まだ考えられなくはない。―で起こるものだろうか
  • 石井潤子の縊死死体を撮影したシーン(ああいう映像は,例えビデオでもそのまま映像化できないし,何より当局に現場資料として提出を余儀なくされるのでは…?)。
  • 小林が,石井潤子宅で唯一生き残った少年を引き取って一緒に暮らすシーン(現場の第一発見者に子供を任せる―というのは少しおかしく思えた)。
  • 石井潤子と同じく悲惨な最期を遂げた,堀光男の死体(タグトに体を屈ませて死んでいる)の写真がブブカ系の雑誌に,目線のカット無しで写っているのがおかしい。記憶にある限りで言うなら,ブブカ系の雑誌は死体を載せた記事というのがなかった様な気がする。
  • ラスト,小林宅が炎上した理由が収められたフィルム(ああいう,切羽詰った状態―不法侵入者が子供を撲殺しようとしたり,自分の妻がガソリンを浴びて焼身自殺する(様に仕向けられている)―の下でハンディーカメラを回している…というのがおかしすぎるし,冷静を通して冷血といってもいいのかも。)のシーン。

これらのシーンを後で冷静に考えてみると,非常に胡散臭く感じました。

また,”禍具魂”が出てくるシーン

  • 小林と堀が目撃した,”禍具魂”のシーン
  • ラスト,小林宅炎上の理由が収められたフィルムにあった,男の子の顔が一瞬”禍具魂”の仮面になっていたシーンと,少年の後ろにいた少女のシーン(ノベライズ版では,小林が伝える媒体が取材メモであるので,この関連のシーン―というより,”禍具魂”のことが余りにも記されていない―は,結局真相がはっきりとしていない

も,明らかにCGを使っているのが判って,少し萎えてしまいました…。

  ワシの映画代,返せ~!

迄は言いませんが。作品として楽しめた部分はあったしね(苦笑)。

3.少しでも知っていれば,興味が起こること
とは言うものの,全く駄目―だったわけではなく,興味深く思ったことがあります。

まず,”禍具魂”を鎮めるときに行った,「一礼四拍一拝」(ノベライズ版では,”一拝四拍一拝”となっていますが,明らかに間違いではないかと)

通常,神社の参拝形式は”ニ礼ニ拍一拝”―つまり,二回礼をして,二回拍手を打ち,一回拝むいう事―なのですが,この作品での参拝形式は,

  一回礼をして,四回拍手を打ち,一回拝む

という形式なんですね。

四拍―というのは珍しく,他にあるのは出雲神社の参拝形式―二礼四拍一拝―位で他にはありません。
因みに,出雲神社は

  • 祭神が大国主神(オオクニヌシノミコト)
  • 神社にある大木には変わった形で注連縄が打たれている
  • 御本尊の大国主神の御神座はそっぽを向いている(!)
  • 源為憲(みなもとのためのり)が記した『口遊(くちずさみ)』という本に,平安時代の建築物の高さを示した言葉(雲太,和二,京三)が有り,雲太=出雲神社,和二=東大寺大仏殿,京三=平安京の大極殿を指す。

という特徴があり,これらの内容を”大国主神の鎮魂の為”という意見で,井沢元彦氏の『逆説の日本史 1』に書かれていたと記憶しています。

また井沢氏関連になりますが,井沢氏が提唱している鎮魂思想(不幸な死に様をした人物を挙げ奉る)を知っていると,下鹿毛村がダムで沈んだことが結果として悪い影響―”禍具魂”が跳梁跋扈するきっかけとなった―を与えたと思われます。

まぁ,こんな感じで当方は粗があるけれども,この作品を楽しめました。

ただ…。

会話のパターンでよく言われていること。

   真実は100%語られることはなく,7割が嘘で,3割が真実

というのがありますが,ひょっとしたら,この映画も…。


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