NPO法人POSSE(ポッセ) blog

4.28セミナー「ブラック企業の見わけ方と対処術~この会社、本当に大丈夫?~」を開催しました!


4月28日に開催した連続セミナー第1回「ブラック企業の見わけ方と対処術~この会社、本当に大丈夫?~」について報告します。

今回のセミナーでは、旬報法律事務所の佐々木亮弁護士をお招きし、ブラック企業の問題点とその見分け方、対処術についてご講演頂きました。

講演の最初のテーマとなったのは、そもそもブラック企業とは何なのかについてです。「ブラック企業」という言葉は世の中に広まり、ある程度定着しています。では、「ブラック企業」とはどういった意味内容を持つ言葉なのでしょうか。違法な行為を行っている会社を指すのか、それとも違法とまではいかないが不当な行為を行っている会社をも含むのか……。考えてみるとなかなか複雑な問題です。どういった企業がブラック企業であるのか一義的には決めにくく、そのことがブラック企業の問題に対処することの難しさを表しているように感じました。

次に、ブラック企業内で発生するトラブルの構図がテーマとなりました。これには、①会社が労働者に対して長時間労働を命ずるといった、会社と労働者の間でトラブルが起きる場合と、②上司が部下に対してパワハラをするといった、労働者と労働者の間でトラブルが起きる場合の二つの類型があるとのことでした。

続いて、ブラック企業が生まれる理由について話題が移りました。「企業がブラック企業化するのは内在的な必然といっても過言ではない」、すなわち、企業が短い期間で利益を上げることが求められるようになっている近年では、利益のために人間を使い倒すのが一番合理的であるとして企業がブラック企業へと転換してしまうという構造が社会の中に存在しているという話でした。
このことが導く結論は衝撃的です。なぜなら、ブラック企業化する可能性を企業が内在的に有しているとするなら、労働者はいつブラック企業の問題に巻き込まれてもおかしくない状況にあるということを意味するからです。「自分には関係のないことだ」と思っていても、いつか直面することとなる回避できない問題、それが現在のブラック企業に関する問題なのです。
こういった結論を目の当たりにすると、解決していかなければならない問題の巨大さについて改めて気付くと同時に、巨大ではあっても解決しなければならない問題なのだと再認識しました。

そして、講演の内容は、ブラック企業の見分け方へと進んで行きました。結論から言ってしまうと、会社に入る前にブラック企業かどうかを見極めるというのは困難であるということでした。このことは感覚的に分かると思うのですが、「ブラック企業です」と公言している会社はまずありません。社員が若い人ばかりといったことなど一応の目安はありますが、入ってみないとブラック企業かわからないというのがほとんどなのです。
このことと上述のブラック企業からは避けられないという事実を合せ考えると、ブラック企業かを見分けるというよりは、ブラック企業に入ってしまった時に、身を守るために、いかにしてブラック企業に対処していくのか方が重要になってくると感じました。

次のテーマは、ブラック企業で起きるトラブルの類型についてでした。ここでは、長時間労働、不当解雇、パワハラ、いじめといったブラック企業で問題となっている事柄について解説して頂きました。どの問題も、遭遇してしまうと安心して働くことができなくなってしまうもので、日本社会にこういった問題が広がっている現実に憤りを覚えました。

そして、いよいよブラック企業への対処法について話して頂きました。①専門家に相談をする、証拠を残しておく、思い切って会社を辞めてしまうといった短期的な対処法、②労働者の権利ついての知識をつける、労働組合を結成するといった中期的対処法、③法規制を新たに設けるといった長期的対処法というように対処法を三類型に分けて説明して下さいました。
この中で、証拠を常に残しておくというのが最も重要な対処法であると私は思います。いざ会社と争おうという段階になって、証拠がまるでないという状況では争いづらくなってしまうからです。日々の業務をメモするといった簡単なことで証拠は残すことができるので、働いている人には証拠を残す習慣を身につけて欲しいところです。
ただ、証拠が手元にない場合、争えないかというとそうではありません。証拠は集めようと思えば集められるものですし、証拠がない場合にはPOSSEでは証拠収集や証拠作りの支援を行っています。証拠がないからといって争うこと自体を諦める必要はないのです。

最後に、団体交渉権などを持つ労働組合が、労働紛争解決のために用いることのできる最強の手段であるという話がなされ、講演は終了しました。

休憩を挟んで、講演の終了後にワークショップを行いました。ワークショップでは、セミナーの参加者の方を三つのグループに分け、POSSEのスタッフが進行役を務め、講演内容に関しての質問や意見を出して貰い、それに基づいて検討を各グループで行いました。
私がいたグループでは、労働組合に対して持つイメージが議題として挙がりました。労働組合は、会社側と直接交渉することが可能であるのに、組合にはあまり良い印象は持たれていないのではないかという疑問を発した参加者がいたためでした。
確かに私自身、POSSEのボランティアに参加するまでは組合に対しては、暗い、何をやっているか分からない、とあまり良い印象は持っていませんでした。しかし、今では労働組合に対して持つイメージは全く違うものになっています。
会社で問題が起きてしまった際に、労働者が一人で強い力を持つ会社と交渉して問題を解決するというのは不可能に近いと言って良いでしょう。そこで、使用者と対等な立場で交渉ができるようにするため、労働者には労働組合という団体を組織する権利が認められているのです。この労働組合は、講演内で佐々木弁護士が触れていたように、紛争を解決する手段として強力なもので、例えば、使用者は労働組合との交渉を正当な理由なく拒絶してはならない、つまり交渉の席に会社を必ず着かせることできるといったことができるのです。紛争解決のための強力な手段として労働組合が存在していることを知ると、労働組合に対して好意的な印象を私は持つようになりました。
しかし、労働組合について知らない人が、労働組合に対してネガティブなイメージを持ってしまっているのは残念ながら普通のことでしょう。今後、組合に対してのそういったイメージを変える取り組みが必要になるのではないかとワークショップを通して感じました。

今回のセミナーを通して、私は、特に労働者が問題に遭遇した際に、どういった対処をとればよいのか教える機会を提供する重要性を強く感じました。身を守るための武器を知らないのでは、闘いようがないのは明らかです。今後もこういった活動に協力し、泣き寝入りしてしまう労働者を減らしていけるよう努力していきたいと考えています。

前田真実(大学4年生、ボランティア参加1年目)

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なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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