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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

『POSSE vol.6』は『生活保障』著者の宮本太郎さんインタビュー収録!

今月に発売いたしました『POSSE VOL.6』のテーマは「ちゃんとやれ!民主党」です。民主党政権の雇用・社会保障政策を多面的に検証するという内容となっています。

http://npoposse.jp/magazine



今回、民主党の雇用・社会保障政策を特集するにあたり、まずはその包括的なビジョンを検証することにしました。そこで、社会保障政策のグランドデザインとして「アクティベーション」を提唱しており、岩波新書『生活保障 排除しない社会へ』を昨年末に出版された北海道大学教授の宮本太郎さんにお話をうかがいました。宮本さんは、経団連と連合、鳩山首相らが参加した内閣府の「雇用戦略対話」にも出席し、新政権にこのビジョンを提示されています。

『POSSE VOL.6』では、まず宮本さんは、戦後の福祉国家を3つの段階に分け、ケインズ主義、新自由主義につぐ福祉国家の第3ステージとしてのアクティベーションの意義について説明してくださいます。アクティベーションとはワークフェアでもベーシックインカムでもない、雇用と社会保障政策を接続した生活保障のシステムを指します。
しかし、そんなビジョンを民主党政権は本当に実現できるのでしょうか。バラまきとの批判のある民主党のマニフェストですが、実は個々の雇用・社会保障政策を検証していくと、それなりに評価できる内容は少なくありません(詳しくは今号で扱います)。それらが、アクティベーション政策としてはどういった位置づけになるのかを宮本さんに解説していただきます。



宮本さんの出席した雇用戦略対話での配付資料掲載の図を一部編集。


 そして最後に、こうしたアクティベーションを実現するための基盤、労使の対話の新しいあり方についてもお話しいただきます。労働や貧困の問題を解決するための社会保障の大きなヴィジョンとして非常に参考になる内容となっています。

『POSSE VOL.6』は宮本さんのインタビューの他にも、民主党政権の雇用・社会保障政策を検証した各種企画が揃って収録されておりただいま絶賛発売中です。民主党の政策を労働や社会保障の観点から包括的に論じた読み応え十分な雑誌となっているかと思います。

より詳しいインタビューの内容はぜひ実際に『POSSE VOL.6』を手にとって読んでいただきたいのですが、今回は特集の宮本さんへのインタビュー内容に深く関連している、宮本さんの近著『生活保障 排除しない社会へ』(岩波新書)の内容を紹介したいと思います。

 


タイトルにもなっている「生活保障」とは何でしょうか。その意味を知るためには、宮本さんが本書において整理している福祉国家の3段階のステージである、ケインズ主義、新自由主義、アクティベーションと社会保障を関連させて考える必要があります。かつてのケインズ主義と連動した福祉国家の第一ステージでは雇用と社会保障は別次元の問題のように取り扱われてきました。このレジームでの社会保障政策は、男性の稼ぎ主の安定した長期雇用を前提として、社会保険によって労災、失業などまれに起こる所得の中断に対応するという「所得代替型」でした。このような社会保障の枠組み自体は、新自由主義が席巻し社会保障支出が削られていく第二ステージでもなし崩し的に維持されました。

ところが近年、不安定な働き方を余儀なくされる非正規労働者が増加しています。保険料が払えない人々が増加していくと社会保障の中心である社会保険は成り立ちません。また、社会保障が非正規労働者の処遇、技能、所得などの改善に何ができるのかも問われてきます。

 

現在求められている生活保障とは人々の生活を成り立たせるために、これまで別次元の問題と考えられてきた雇用と社会保障を連携させていこうという福祉国家の第三ステージの考え方です。これまでの所得代替型が働いているならば生活が保障されているということを前提としていたことと対照的に、この第三ステージの考え方は勤労所得が十分でなくとも公的扶助との組み合わせによって生活を保障しようというものです。本書はこの生活保障という視点を切り口にして、日本が直面している問題を明らかにし、日本型生活保障を振り返り各国の経験を参考にしながら、これから目指すべき社会のビジョンを提示しています。
 



まず1章では、日本型生活保障の解体のなかで顕著になってきている様々な問題――正社員と非正社員の格差、女性労働問題、外国人労働問題、母子家庭の問題、子どもの貧困など――を横断的に、わかりやすく説明しています。そしてそれらの問題解決がなぜ困難なのかを解説しています。

2章では日本型生活保障がどのようなものであったかを整理し、その解体の過程を描いています。

3章では各国の生活保障の比較をし、とくにスウェーデン型生活保障の仕組みと現状を解説しています。しかし、筆者も述べている通り、この本の主張は「スウェーデンモデルの勧め」ではありません。スウェーデンの直面している問題も明らかにしながら、日本型生活保障にどのように活用できるかを考察していきます。

 4章と5章では、各国の経験をふまえて、今後の生活保障のビジョンを提示していきます。4章では、雇用と社会保障を切り離していくベーシックインカムと、雇用と社会保障をより密接なものにしていくアクティベーションとを対照させ、アクティベーションを重視した制度の概要について述べています。そして5章では、アクティベーション型の生活保障を組み込んだ社会について考察しています。



日本の直面している状況を整理し、これからの社会の在りかたを考えていくうえで、本書はとても参考になります。関心がある人はぜひ雑誌のインタビューと合わせて一読することをおすすめします。


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