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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

「Jポップは格差社会と闘えるのか」『POSSE vol.5』解説その4

 これまで、雑誌『POSSE』では、マンガやテレビドラマなど、若者の文化から労働や貧困を読み解く試みをしてきました。その本誌が今回特集するのは、音楽、それも特に「Jポップ」です。
 欧米では、労働やライフスタイルのあり方の変化が、若者のラディカルな音楽を生んできたとされています。しかし、それが日本でなかなか登場しないのはなぜなのでしょうか。日本の独特な音楽の発信のされ方、産業構造、そして福祉国家と企業社会の関係にまで踏み込んで検証します。
 さらに、そんな現在の日本のポピュラー音楽において、労働や貧困はどのように反映され、そしてこれからどのような変化の可能性があるのか、ポジティヴに、そしてやや強引に分析しています。

 実は、この企画は、これまでの音楽と社会をめぐる批評についての疑問が出発点となっています。
 よく、音楽と社会運動という文脈では、洋楽ばかりが紹介されたり、邦楽でもマニアックな作品ばかりが紹介されることが多いように思われます。
 一方で、日本のメジャーな音楽を批評する場合には、コミュニケーションのツールだとか、若者のアイデンティティ、自意識のアイテムとしての機能ばかりが紹介されることが優勢であるようです。

 日本のメジャーなポピュラー音楽からも労働や社会との接点は見い出すことはできないのでしょうか。ラディカルな洋楽を対置して硬直的に「邦楽はダメだ」と否定したり、逆に社会問題を歌っている曲があれば「ルサンチマンの表象だ」と揶揄する……それ以外の聴き方があるのではないでしょうか。

 本企画では、社会性の欠如にしても、自意識の過剰さにしても、なぜ日本の音楽が「ダメ」なのか、その社会的な背景を分析して、現状からオルタナティブを見出していこうと試みています。
 さらに、日常的な生活の一部であり、歌詞にもたびたび登場する「仕事」という概念を通して、そこから今後の日本のポピュラー音楽の可能性を探っています。労働という、最も身近な市民社会からこそ、社会との接点が見えてくるのではないでしょうか。


Jポップは格差社会と闘えるのか?

阿部真大(甲南大学講師)×坂倉昇平(本誌編集部)
企業主義vsJポップの30年

実はJポップは労働問題を歌っていた!
尾崎豊からミスチル、GReeeeNまで一気に検証!

…本誌前号でも登場いただき、『搾取される若者たち』などの著書で有名な阿部真大さんとの対談です。尾崎豊、ユニコーン、ブルーハーツ、BOΦWY、浜田省吾などの80年代、Mr.Children、SMAP、大黒麻季、奥田民夫、PUFFY、Dragon Ashなどの90年代、そして00年代のBUMP OF CHICKEN、GReeeeNから聞き取ることのできる日本型雇用への反発と解放、不安などを解説しています。
なお、対談に即してB'zの18年に渡る『Pleasure』シリーズと企業社会の変遷と労働者の意識について扱ったコラムも掲載しています。


烏賀陽弘道(ジャーナリスト)
音楽産業と消費文化がJポップを束縛する

渋谷文化、バンドブーム、カラオケ……
Jポップを生んだ産業構造と消費文化とは?
そしてインターネットと格差社会の影響は?

…Jポップはなぜラディカルに社会問題を歌えないのか? そもそも、前述のように、日本の音楽は若者のアイデンティティのツールになっている部分があります。それはなぜなのか?若者のオルタナティヴなライフスタイルを包摂した日本の音楽産業のもと、消費文化として発達したJポップの限界を、ジャーナリストで『Jポップとは何か』の著書がある烏賀陽さんに伺いました。

毛利嘉孝(東京藝術大学准教授)
パンクは新自由主義に敗北したのか

パンクは市場や国家から「自由」になれるのか?
福祉国家が弱体化し、新自由主義が拡大する中、
オルタナティヴな音楽はどこへ向かうのか

…日本の音楽はなぜ社会問題を歌えないのか。その背景を、日本の企業社会や新自由主義との関係から、『ポピュラー音楽と資本主義』や『ストリートの思想』などの著書のある毛利嘉孝さんにご解説いただきました。パンクの社会的意義から、ワークフェアと福祉国家と新自由主義における音楽の「自由」についてまでテーマが及ぶ、非常にボリュームのあるインタビューです。

なお、11月21日には、東京ウィメンズプラザにて毛利嘉孝さんによる読者セミナーを開催します。

●本誌編集部
ゼロ年代の「労働歌」50選
歌謡曲、アイドルから、ロック、HIPHOPまで……
多彩なジャンルからピックアップした50曲
そこで労働はどのように歌われていたのか?

…ゼロ年代の日本の歌には、労働はどのように歌われているのか。傾向性を分析し、中島みゆき、ウルフルズ、オレンジレンジ、宇多田ヒカル、RIP SLYME、福山雅治、ケツメイシ、KICK THE CAN CREW、椎名林檎、鬼束ちひろなど、労働や格差社会をキーワードにメジャーなものからマイナーなものまで50曲を紹介しています。

◇次回は『POSSE vol.5』の連載企画や単発論文、そして早くも『POSSE vol.6』のご紹介もしてしまいます。
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