90年代以降、ＮＯＶＡうさぎというメインキャラクターやタレントをＣＭに起用し、着実にその認知度と利益を上げてきたＮＯＶＡ。それはテレビのＣＭと耳に入りやすい謳い文句をつかって人々に、クリーンな会社のイメージを売ってきた結果だ。しかし、その内実が、今回の倒産をへてようやくわたしたちの知るところとなった。
ＮＯＶＡは、日本語以外の外国語をネイティヴ・スピーカーが駅前にある英会話教室で教えてくれる利点を謳い文句に、働いている人や学生からの人気が高かった。実際、ここ数ヶ月で、「ＮＯＶＡに行こうかな」なんてメールをよこしてきた友達がわたしの周りだけで数名いる。しかし、ＮＯＶＡは、こうした受講生と以前から消費者トラブルを抱えていた。2005年の中途解約した男性が未受講分の料金の返還を求める訴訟を歯切りに、長期契約に対するクーリングオフをめぐっての訴訟も起こされ、経済産業省からも苦言を呈されることもあった。
ＮＯＶＡは、こうした受講生からの受講料を長期契約を結ばせるなどして大量にお金を半ば騙して吸い取るシステムをつくっていた。そして、もう一つの顔がＮＯＶＡにあった。それは、講師である労働者を酷使して利益をあげるという実態だ。ＮＯＶＡの講師といえば、先進国から来た外国人で、それなりの給料をもらっているのだろうというイメージを持ちやすい。実際、わたしもＮＯＶＡの事件が起きるまでは、外国人労働者の問題を考える時に、いわゆる３Ｋ労働の代表である建設、港湾で働かされる人や性産業で働かされる人、または農家や地方の中小企業で働かされる人をイメージしてきた。そして、そうした外国人労働者はアジア諸国や南アメリカから来ている人を想起させる。しかし、ＮＯＶＡで講師をしている人は、アジア諸国に限らずアメリカやオーストラリアなどの先進諸国の人も多い。
そうした３Ｋ労働とは無縁の存在とイメージしてきた講師達が、給料不払い問題などを抱えていたのである。さらに、こうしたＮＯＶＡの賃金の未払いは、講師の生活をも揺るがすことになる。ＮＯＶＡ講師が住んでいる住宅は、会社が給料から天引きして支払うことが多く、賃料の未払いが続く中、講師たちが家から追い出されるということが頻発した。華やかに見られるＮＯＶＡ講師の生活は、とても悪条件で、会社のちょっとした動きで動揺する不安定なものであったのだ。
結局、一部のＮＯＶＡ講師が労組を結成し、ストライキで闘う中、ＮＯＶＡは破綻することとなる。破綻後、ＮＯＶＡ社長の部屋などがテレビに公開された時、今の日本の格差社会を髣髴とさせる景色が見えてきた。社長の部屋には、高級な家具、食器が買い揃えられ、バーテンまである。そして、社長の机の上には、ＮＯＶＡうさぎのぬいぐるみが飾ってある。かつて、業界に大きな影響を与え、英会話教室といえばＮＯＶＡ！と思わせてきた大企業も、受講生を騙し、講師を酷使した金で、一部の人間を肥やしていただけなのである。これまでライブドア、村上ファンド、グットウィル、キャノンが集中的に取り上げれてきたが、こうした利益追求のために消費者や労働者の生活を踏み台にする構造は、この社会に根強く存在し、その土台の上で経営活動している企業は星の数ほどある。ただ、それに対して、消費者や労働者側はあまり有効な対抗ができていないのが実情だ。しかし、一部でおもしろい動きも見られた。
ＮＯＶＡ倒産後、労働組合を結成した講師たちが、受講生に青空教室を始めたのだ。受講料は、ＮＯＶＡの引継ぎ企業等の関係もあり、まとまったお金でなく、講師の弁当代や交通費で支払う。ともに企業に踏み台にされた両者がお互い助け合いながら利益をあげることを優先する企業の枠から外れたところで、そうした活動を拡大しているのだ。（左写真は11/19付け読売新聞より）
まだまだ、ＮＯＶＡに関しては、触れられないところや現在進行形の問題ということもあり、中途半端な文章となった。上記以外にも、ＮＯＶＡの学校への講師派遣の問題や外国の派遣会社と外国人労働者を雇う日本の企業の問題など、これからまだまだ情報が流れてくるであろう。一段落ついたところでまた、続きを書くことにしたい。
