春雷や踊りの群れを竦ませる
桜餅買ふ道犬の立ち話
星雲の氷も融けて春三月
あらけなく憂き世に花のある不思議
抱へ切れぬ記憶留め得ぬ落花
君と見しあの日の花は今日の花
爪先と踵で描く恋の文
踵火を噴くまで春の舞踏病
会へぬ日は黄身半熟に煮て弥生
思ひ寝の夢湿らせて春夜喜雨
春分を踊り暮らして爪の罅