日本で殺処分される犬猫は、年間276,212頭(平成20年度環境省調べ)。
あまりにも多いこの犠牲の原因は、大きく2つあります。
「飼い主責任の欠如」と「生体販売のペット業界」です。
ここまでの環境省の動物愛護管理法改正に向けた会議では、2大原因のうちのひとつ、
「生体販売のペット業界」について、主に議論されてきたことになります。
殺処分ゼロにするためには、大変重要な議論だったということです。
議論の過程で明らかになった流れを、簡単にまとめると以下のようになります。
<生体販売のペット業界が
殺処分の多い状態をつくる一因となる流れ>
・ペットショップで販売されている犬猫の4~5割は、オークション(競り市)を経ている。
・オークションは動物取扱事業者ではないので動物の輸送や伝染病予防などの規制がない。
・犬猫の社会化期には適さない自主規制しか持たないペットショップで犬猫が販売されている。
・オークションでは、ブリーダーとペットショップの直接交渉が禁止行為になっているため、
トレーサビリティー(犬猫の誕生環境追跡)の障壁となり悪徳業者にさえも販売機会を与え、
生後週齢や血統証、病歴の有無などの確認ができない。
・その結果、問題行動や感染症や障害をもつ犬猫が販売され、購入後に問題が発生し、
保健所に持ち込まれるケース、また、ペットショップに到着後に病気が発症して
保健所へ持ち込まれるケースが発生し、殺処分数が多くなる一因になっている。
なんで、こんなずさんな状態がいつまでも続いているのか、不思議に思いませんか?
ただ、ペット業界のモラルが低いとか、行政が不真面目とかの単純な理由ではないのです。
前回の改正でも、
「犬猫の社会化期を考慮して8週齢とすべき」という議論が新聞で報じられるほど高まったし、
こうした流通の実態は概ねつかめていたし、
業界側も何度も呼び出されて改善に着手してきたのに、
なぜ、このようなずさんな状態がいつまでも続いてきたのか。
理由は、「幼齢の子犬子猫への需要に応えうるだけの大量仕入れ」のためです。
業界の存続と繁栄には欠かせない条件が、崩壊してしまうきっかけになるからです。
オークションで規制を高めてしまえば、需要に応えられる数の子犬や子猫が集まりません。
規制がほとんどないから、ブリーダーは一遍にたくさんの子犬子猫を出陳できるし、
ペットショップもたくさんの子犬子猫を一括で仕入れることができるわけです。
だから、今回の議論でも、深夜営業や移動販売やインターネットの禁止を受け入れ姿勢のペット協会も、「8週齢の規制」と「オークションの各種規制」については、頑なに反対し、
業界の自主規制に委ねることを求めているのです。
その必死さは続く小委員会第4回、第5回でも顕著です。
8週齢規制には科学的根拠はなく、法律で規制するのはあまりに粗暴だと訴えています。
さらに、業界6団体が環境大臣に直接面会して改正への要望書を提出しています。
じつは前回の改正でも8週齢規制は、ほぼ間違いなく実施されると期待されていたのです。
ところが、改正前のパブリックコメントに寄せられた意見は愕然とする結果でした。
「科学的根拠がない」「45日以上でよい」という反対意見が約9,500通、
賛成意見はたったの200通。
「業界の組織票じゃないか!」と憤っても空しいだけです。
「パブリックコメントで意見を募集していたなんて知らなかった」は言い訳にもなりません。
これでは環境省や動物愛護部会の委員がどんなにがんばっても、法規制はつくれません。
業界の必死の抵抗に対して、小委員会で何度も科学的根拠の少なさを指摘されていた動物愛護団体のみなさんは、科学的根拠の情報を追加提出していません。
もうそろそろ「心情的な動物愛護」から「理論的な動物愛護」に進化してもらわないと、
守れるものも守れません。
今回は愛護団体の代わりに、環境省の動物愛護管理室がよく収集して
フォローしてくれています。
「8週齢の規制」と「オークションの各種規制」の問題は、言ってみれば、
ペット業界の死活問題に関わることだから変わらないのです。
逆に言えば、
この問題を解決すれば、ペット業界の生体販売は崩壊するということです。
ここが正念場です。
安心していただきたいのですが、業界の提出したレポートは、
すべての項目において大変作為的で、何ひとつ参考にならない内容です。
環境省にも意見は伝達済みです。
また、ここまでの小委員会を受け、「8週齢の規制」と「オークションの各種規制」について、わたし達の見解書を、環境省に提出させていただく予定です。