ここで連載する事に疲れたので(爆) ちょっと端折って最終回に雪崩れ込みます。orz
智秋が目覚めた時、隣に寝ていた筈の祈津がいなくなっていた。
昨夜は流石の智秋も、病人と一緒に寝ているという意識のせいか何度も目を覚した。その都度小さな祈津の様子を窺い、汗を拭いてやり、氷枕を換え、彼が目を覚ませば水を飲ませたりもして、そのうち自分も疲れて最後は熟睡してしまったのだろう。
心配になって起き出すと、バスルームから水音がしている。
「祈津?」
ドアを開けると、普段見慣れたYシャツの背中が目に入った。振り返る祈津を、智秋はいつものアングルで見上げる。
「大丈夫、なの、か?」
「はい。 ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「元に…… 戻ってる、な」
「そのようですね」
ほっとしたのと同時に、祈津の飄々とした返答に言葉が詰まる。
「智秋さん? 泣かないで下さいよ」
「なっ… 俺は泣いてないぞ!」
「あなたが仰ったように、割とあっさり元に戻れましたね」
「……ったく、もう!! それで、本当に大丈夫なのか?」
「ええ。 実はまだ、体中が痛むのですが……」
そう言って祈津が首や肩を回すと、ボキボキと派手に音がする。
「ですが、熱は下がりました。 智秋さんが一晩中看病して下さったお陰です」
「あ、有り難く思えっ!!」
腹立ち紛れに声を荒げると、彼は「はい。 ありがとうございます」と言って、身体を少し屈めて頬を寄せて来た。
たった今、着けたばかりらしいアフターシェーブローションの爽やかな香りがして、今度こそ智秋は心の底から安堵した。
「子供のおまえも可愛いかったけど、やっぱりこの方がいいな。 落ち着く」
「私もです」
智秋が堪らず抱き付いてキスをねだる。祈津の身体は、まだ少し熱を持っているように感じられた。
「熱が下がり切ってない…… もう少し、休んでいた方がいいんじゃないか?」
「昨日の今日ですからね、まだ本調子という訳にはいきません。 でも、先に済ませておきたい事がありますので」
「なに?」
「今からみどり薬局に行って来ます。 この悪戯の落とし前をきっちり付けて貰わなければ、私の気が治まりません」
祈津は智秋から身体を離すとバスルームを出た。
ネクタイを締めて、背広に袖を通す。
「怒ってるの?」
「それはもう、これ以上は無いというくらいに」
そう言う彼の顔は、少し楽しそうだ。
「もしかしてあのサングラスの男、前からの知り合い?」
「いいえ。 本当にあの薬屋の連中は、何処をどう調べてもはっきりとした素性が掴めません」
「でも、あそこでちゃんと営業している以上、店長くらいは簡単に調べられるだろう」
「はい。 とても胡散臭い経歴なら幾らでも出て来ますよ」
「俺も一緒に行っちゃダメ?」
「すぐに戻りますから、待っていて下さい。 それよりもこれをお願いします」
祈津は机の上にあった物を、智秋に投げて寄越した。
「文字入れして下さる約束ですよね。 では、行って参ります」
智秋が手の中に残された小さなパトカーを見ている内に、彼は出掛けてしまった。
祈津が元に戻って安心はしたけれど、ひなちゃんはあのまーくんにもう会えないと知ったら、なんて言うだろう。
そして自分も少し寂しいような気持ちになっているのが、智秋自身にも不思議だった。
<おわり>
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このような半端なモノを最後まで(それも、計10回分!)読んで下さり、本当にありがとうございました。 コレには驚くほど拍手やらコメントやらを頂戴いたしまして、恐縮しております。 ふにゃん。。。
後日、祈津が元に戻れた経緯を書き足し(そこんトコ大事ですよね・汗;)、ちゃんとタイトルも考えてサイトにupりたいと思いますー
あっさり戻っちゃった祈津を見て、安心するのは智秋だけじゃないですよね。 きっと麻生も同様だと思うんですよ~ 彼は額に青筋立てて「この野郎、心配させやがって!」って、怒るに違いないですv

そしてオマケ <後日、いつものお店で ひなちゃん・智秋・祈津>
「ええ~ まーくん、もう、おうちに帰っちゃったんだー」
ひなちゃんはとても残念そうだ。
「旭さんにも大変お世話になりました。 これは私がいない間、あの子の面倒を見て頂いたお礼です」
祈津がリボンの掛かった箱をテーブルの上に置く。
「あたし、なんにもしてないよー 遊んでもらったのはあたしの方だもん。 でも、祈津さんからプレゼントなんて嬉しいな。 開けてもいいですか?」
「どうぞ」
箱の中には、クマさんの絵のマグカップが2つ入っていた。
「わー、かわいー!! でも、どして2つ?」
「史朗と2人で使えばいいじゃないですか」と智秋が言うと、ひなちゃんは本当に嬉しそうに何度も頷いた。
「うんっ、そうする! 祈津さん、どうもありがとーございます。 また、まーくんが来たら会わせてね。 今度はもっといっぱい遊ぶんだ」