チクタク、チクタク。
チクタク、チクタク。
チクタク、体の中で音がする。
これが本当の体内時計だ。
――なんつって、ははっ。
笑えねェ。
最初に音に気が付いたのは女だった。
自分の心臓の鼓動や消化器の働く音が、自分で聞こえないのと一緒だ。
事を終えた後、胸にしなだれかかって女がひと言。
あんたの心臓の音って時計みたいにカチカチいうのね。
いわねぇよ。つーか知らねぇよ。
とにかく眠たかったし、そんな戯言には普段から耳を貸さない。
特に情を交わし終えたばかりの商売女の言葉だ。
それはリップサービスと考えて間違いない。
無視だ。
煙草を口に加えて、枕元にライターを探す。
意識して置いたつもりは無くても、大体ここにあるのだが。
手で探りながら、記憶も探る。
元からチリチリだった毛が、更に縮れていく様が頭を過ぎる。
棒も玉も焼けてしまった憐れなプードルの泣き顔が蘇る。
誰か何か持ってないか、とブルドッグに言われてポケットにあったライターを手渡したのだと思い出す。
今日の昼過ぎの出来事だ。
なのに、今の今まで忘れていた。
防衛機能が働き、記憶を抑圧したか?
ブルドッグは尋問の天才だ。
奴の手の中において、万物はすべからく拷問器具となる。
プードルとは比較的仲の良い方だったので、左ポケットのキシリトールガムという考えはすぐに捨て、右ポケットのライターを選択した。
「ブルドッグ」プラス「キシリトールガム」イコール「デンジャラス」。
あの光景は忘れられない。
あの場にいたものであれば誰だって、勿論プードルだって、例外ではなかったはずだ。
確かにもう二度と、あそこを挿入や排泄に使用することはできないかもしれない。
それでも奴が「サンキュー、マルチーズ」と微笑んでくれたに違いないと、俺は確信している。
――残り12時間。
チクタク、チクタク。
チクタク、体の中で音がする。
これが本当の体内時計だ。
――なんつって、ははっ。
笑えねェ。
最初に音に気が付いたのは女だった。
自分の心臓の鼓動や消化器の働く音が、自分で聞こえないのと一緒だ。
事を終えた後、胸にしなだれかかって女がひと言。
あんたの心臓の音って時計みたいにカチカチいうのね。
いわねぇよ。つーか知らねぇよ。
とにかく眠たかったし、そんな戯言には普段から耳を貸さない。
特に情を交わし終えたばかりの商売女の言葉だ。
それはリップサービスと考えて間違いない。
無視だ。
煙草を口に加えて、枕元にライターを探す。
意識して置いたつもりは無くても、大体ここにあるのだが。
手で探りながら、記憶も探る。
元からチリチリだった毛が、更に縮れていく様が頭を過ぎる。
棒も玉も焼けてしまった憐れなプードルの泣き顔が蘇る。
誰か何か持ってないか、とブルドッグに言われてポケットにあったライターを手渡したのだと思い出す。
今日の昼過ぎの出来事だ。
なのに、今の今まで忘れていた。
防衛機能が働き、記憶を抑圧したか?
ブルドッグは尋問の天才だ。
奴の手の中において、万物はすべからく拷問器具となる。
プードルとは比較的仲の良い方だったので、左ポケットのキシリトールガムという考えはすぐに捨て、右ポケットのライターを選択した。
「ブルドッグ」プラス「キシリトールガム」イコール「デンジャラス」。
あの光景は忘れられない。
あの場にいたものであれば誰だって、勿論プードルだって、例外ではなかったはずだ。
確かにもう二度と、あそこを挿入や排泄に使用することはできないかもしれない。
それでも奴が「サンキュー、マルチーズ」と微笑んでくれたに違いないと、俺は確信している。
――残り12時間。