
紫の火花とは岡潔が書いた芥川龍之介の数行のエピソードではないのかと思っていた。
検索すると朝日新聞社からの古書でしか売っていなかった。
遂に取り寄せた。古書は岡山県総社市からのものだ。
思ったより厚い本で驚いた。
発行が1964年である。
そして謎が解けたこと。
やはり、記憶していた芥川のエピソードからこのタイトルは取られていた。
最後のページに「古い私の友人〈といっても会ったことがないので、芥川が死んだのは私が大学を出て3年目だったのだが〉は美に生涯をかけようと決めた夜、電線と水たまりとの間に散る紫の火花の上に自己の情緒を見て〈他の何者にかえてもこれだけは取っておきたい〉と思ったという。借りて表題とした。」
とあった。
私が長い事お付き合いしてもらった「人間の建設」が、1965年に書かれている。
「紫の火花」は、朝日新聞や朝日新聞社発行の諸雑誌に発表された随想・エッセーが11篇と未発表のもの4篇を収めて編集したものだという。
ということは、その後の著書はこの紫の火花を伸ばし伸ばし力説されていると考えられる。
この本が岡潔の人を現す唯一の著書と思える。
岡潔は、本が売れるように書いた人ではないという表現は可笑しいかもしれないが・・そういう感覚であったと思う。
一つの事を何度でも繰り返し繰り返し述べている。
本当のこと伝えたいこと、この日本を愛してやまない故の憂いを書いている。
しかしそれはそう簡単に理解できるものではない。
それに世の中は岡潔の思う日本人とはドンドンかけ離れ、逆方向に流れているのだから。
岡潔の研ぎ澄まされた人生の末の情緒である。
「紫の火花」は復刻しない本だと思える。
しかし、とても私には貴重な本に思えてしかたがない。
1963年から岡潔の情緒がやむにやまれず執筆を始めて3冊目の本である。
「春宵十話」「風蘭」「紫の火花」「春風夏雨」「対話 人間の建設」の順で出版されている。
1978年に心臓衰弱のため他界するまで講演執筆と数学者が最後に伝えたかったことは「情緒」の大切さである。
まだ全部を読んでいないが、一番はやはり自分の生き方からすると「新義務教育の是正」「創造性の教育」に関心が集まってしまう。
現在の私に何かできるわけでもないのだが・・。
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