goo blog サービス終了のお知らせ 

a green hand

行ってきましたひとり旅



と言っても隣の県に一泊しただけ。
日帰り可能な場所だが時間を気にせず及川浩治のピアノ・リサイタルを楽しみたいという思いで4日前に急遽ホテルを予約した。

電車のチケットを券売機で買いたかったが未経験な事だったのでいつも通り窓口に行く。
仙台往復というとw切符でいいですかの駅員の言葉通りW切符を購入した。
指定席もお願いしますというとw切符は自由席だけですと言われホームの端まで歩く。

あとで考えたら隣の県、たったひと駅に指定席でもないし、最長まで歩くのだって大したことではない。
それに自由席は、十分に空いていた。

早めに出かけたのは心配事を早めに解決したかったからだ。
心配事というのは、ホテルの場所とリサイタル会場の位置である。

ホテルの方が心配だったので、スマホで目的地を設定し、仙台駅西口から歩き始めた。
駅から6分の距離であっても方向音痴である私にはスマホの道案内すら心もとない。

倍ぐらいの時間がかかり、ホテルの位置を確認し、再び駅に戻り地下鉄南北線に乗る。

座席が確保でき、電車が動き出した。
まもなく次の駅名のアナウンスが流れて驚いた。
またひと駅だ、一駅といっても新幹線ではない、地下鉄の一駅だ。

目的地に一番近いという改札口を出ると目の前に電力ビルが建っていた。

7階に電力ホールがあることを確認したのち、開場までの約1時間を昼食に当てた。
チーズ石焼ビビンバを食べる。
満足!

7階に行くと大勢が並んで開場を待っていた。

ピアニストの及川浩治を知ったのは「恋するクラシック」昨年12月24日のテレビである。
マエストロさんいらっしゃいに出演した。

ピアノもいいがトークが面白いのと、出身が登米市と聞き、余計興味が湧いた。
登米市は数年前の寒い日に英語仲間と行ったことがある。
明治時代に建てられた近代的な尋常高等学校の波打つガラスに感動して帰ってきた。
ただそれだけで親近感がわいた。

「恋クラ」マエストロのリサイタルお知らせに、この人のピアノが聴きたいという思いに駆られた。
音もトークも。

新年から、仙台で美しい音が聴けて、さらに笑える気がしたからだ。

案の定、音楽の勉強に行った気分である。
宮城女子大の特任教授をしているという。
和やかな中で授業が続けられた。
前半最後の曲は「月光」

「僕はこの曲が小さい時からとっても好きで、この曲だけは酔っ払っても弾ける唯一の曲」とベートーベンの「月光」第1楽章のみを恋クラで弾いてくれた。

私がクラシック好きになるきっかけはこの「月光」であり、その日の事がありありと今でも思い浮かべることができる。

学生時代、ベートーベンのように髪もじゃで一風変わった音楽の先生がいた。

その先生は我々に数々のクラシックを聴かせてくれた。
レコードだけ持って教室に来て、我々に音楽を聴かせ、先生も黙って腕を組み目を閉じて聴く。
終わるとレコードを持って教室を出て行く。

ある秋の日の授業、「これは何?」と経験したことのない感情に襲われた衝撃の曲、それが「月光」だった。
たくさんの曲を聴かせていただいたのに私の心に残った曲はたったの1曲である。

しかし、その1曲が私の人生を豊かにしてくれたことに今さらながら気づく。

先生という職業は目には見えないものを与えてくれる。
死語に近くなった「教師は聖職」と呼ばれたその意味が今さら実感できる。

リサイタルではピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」を聴くことができた。

音楽室とモジャモジャ髪の先生と19歳の女子学生、秋の気配だったことを思い出しながら目を閉じてピアニスト及川浩治の音に思いを馳せた。

大昔の時代の事である。


さて後日、仙台通の友人と電話で話した。
及川浩治も若い頃から何度も聴いていたという、音楽の道に進んだ友人である。

「何?電力ホールまで地下鉄に乗った?」
「それにホテルまで行くのにまた駅に戻ったの?」

青葉通りの電力ホールと広瀬通りのホテルはそんなに近かったのかと……。

地下鉄に乗って帰るときに思った「待てよ」が的中した。
だいぶ遠回りしたわけだ。

知らないということはそういうこと。

ミラノ駅から10分のホテルを1時間をかけてたどり着いたことを思い出してしまった。
それにしてもふくらはぎの筋肉痛が続いている。

新年のひとり旅、楽しかった。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Weblog」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事