血圧測定が怖いからだ。
恐ろしかった注射より今では血圧計の方が怖くなっていた。
身体に悪いから血圧を計らないわけにはいきませんかと先週のこと看護師さんに言ってみた。
時間が来て、Mさん、血圧計りましょうと言われた。
いやいや進むとその先に新しい血圧測定器が鎮座していた。
え〜変わったんだ血圧測定器。
病院にある、あの腕を深く入れて測る血圧計である。
自分でボタンを押すのと測ってもらうのとでは気分が違うのだろうか、驚くほど正常値であった。
ウンウン、いい調子だと思い先生のところに行くと先生はコンピュータと先週採血した結果に見入っていた。
血色素は11.9で枠内に到達しましたが血清鉄は届きません。
血色素11.2〜15.2 血清鉄が45〜170 の正常値枠のことである。
私の血清鉄は26であるからまだまだである。
そうだった私は鉄分不足だった……。
血色素のことで満足し、もう治療も終わりだなと思っていたのに。
ずいぶん長くかかっているので副作用は大丈夫ですかと聞いてみると、血清鉄の値が多くなると臓器に色素が付着するという説明に私にその心配は無いと納得し続けることにした。
フエジン静注40mg 2ml をブドウ糖注射液5%「マイラン」20mlで希釈したものを3分かけて静注するのだ。
注射をしていると、次の注射の順番を待つ人と看護師さんの会話が聞こえてきた。
どうやら同じ注射ということ。
それに今まで長いこと金曜日に来ていたのに先週から月曜になったというのもMさんと同じなのよと。
キクチサンという男の人に話しかけている看護師さんから知り得た情報で、もちろんキクチサンとの面識はない。
注射が終わり、その方の前を通る時、「初めまして貧血仲間だそうで」とその方に一礼した。
看護師さんたちが「いいですね〜」と笑っていた。
その方は青白い顔をした青年のようだった。
キクチサンの血色素は私より少ないかもしれないと勝手に思った。
診療所で初めて貧血仲間とであった。
しかも鉄欠乏性貧血って普通に男性もなるんだとの驚きの未熟者の感想である。