金魚草

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『右翼と左翼』 浅羽通明

2007-06-12 10:48:41 | 新書
―歴史に沿って右翼と左翼の政治思想を学ぶ。

『右翼と左翼』 浅羽通明
 幻冬舎 2006年

筆者が前書きで述べているように、確かに「右翼」、「左翼」、「右寄り」、「左寄り」、「中道右派政権」、「革命左派」など、「右」「左」を用いた言葉がメディアにはよく登場しますね。

本作では、「右翼」と「左翼」が生まれることになった歴史的な出来事(フランス革命時の国民公会)から、現代の日本に至るまで、歴史に沿った形で、右翼と左翼の思想の発展と変遷を辿っていきます。

右翼と左翼の違いについて、漠然と理解していただけでしたが、本作を読んで、その思想の違いについて、頭の中でうまく整理ができました。

ただ、少し気になるのは、筆者自身の政治思想が明らかでないため(筆者は文中で、右翼でも左翼でもないと言っていますが・・・)、歴史を辿るだけの思想史の中に、筆者の思想が入り込み、右翼と左翼に優劣を与えているのではないかと感じた点です。

本作を読んでいると、筆者はどちらかというと、右寄りの思想を持っているように感じられます。
中国を「支那」と呼んでいる点や、「大東亜戦争」、「大東亜共栄圏」といった言葉を用いる際の文脈が、それとなく右寄りな思想を感じさせます。
(「大東亜戦争」は「太平洋戦争」の日本での正式名称ですが、一般的には「大東亜」という表現が持つイメージは、歴史修正主義に見られるような右寄りの思想だと思います。
筆者の経歴を調べてみたところ、歴史教科書問題などに関しても、中立的な立場をとっており、あくまで中道の思想家ということのようですが・・・。)

ただ、この点は、客観的に歴史の流れを書いていくと、左翼思想の政権が失敗を重ねてきたことが多いため、右翼思想のほうが相対的によく見えているだけかもしれません。

筆者も述べているように、現代は右翼と左翼という二項対立だけは区別できない、さまざまな思想が登場しています。
フランスの右派サルコジ新大統領も、敗れた左派のロワイヤル元環境相も、どちらもそれまで対立する左派・右派の政策といわれたものを公約の中に採りいれていました。

これからの時代は、一つ一つの政策に左右をつけることはできても、一人の政治家や政権に対して、左右をつけることは難しくなっていくのでしょう。

星8つ ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

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