金魚草

読んだ本、観た映画のメモ。

『鏡は横にひび割れて』 アガサ・クリスティー

2007-03-01 21:28:14 | アガサ・クリスティーの本
名探偵ポアロと共に、人気のあるミス・マープルが活躍するミステリー小説です。アガサ・クリスティーが72歳の時の作品ということですから、驚きです。

『鏡は横にひび割れて』 アガサ・クリスティー
 橋本福男訳 早川書房 2004年

先日、岸恵子を主演に据えて、2時間ドラマとして放映してましたね。

かつて名女優として名を馳せた女優の家で開かれたパーティーで、招待客の女性が薬殺されます。
誰からも殺意を抱かれることなどなさそうな女性が殺されたのは何故か、間違って殺されたのか、犯人の動機は何なのか、ミス・マープルの推理が謎を解き明かします。

クリスティーの作品には、隠された人間関係や動機を解き明かしていくものが多く(もちろん巧妙なトリックを暴くものもあります)、本作でも犯人の動機が焦点となります。
この犯人の動機が、従来の作品にはない本作独特のものになっており、ヒントから犯人の動機に辿りつける人は、なかなかいないのではないでしょうか。

ミス・マープルが歳をとって衰えている姿には、寂しさを覚えますが、そんなミス・マープルが自分のできる範囲で情報を集め事件の謎を解き明かしていく姿には、歳なんかに負けない!というクリスティーの想いもこめられているのかもしれません。

星7つ ☆☆☆☆☆☆☆★★★

『ポアロ登場』 アガサ・クリスティー

2007-02-03 22:08:20 | アガサ・クリスティーの本
“灰色の脳細胞”を駆使して、事件を解決していくエルキュール・ポアロ。本作は14の事件をおさめた短編集です。

『ポアロ登場』 アガサ・クリスティー
 真崎義博訳 早川書房 2004年

アガサ・クリスティーが作り上げた名探偵エルキュール・ポアロはたまご型の顔に立派な口ひげを生やしたベルギー人の小男というユニークな設定になっています。
ポアロが登場する作品の多くは、友人ヘイスティングスが事件の記録を録っている形のものが多く、本作の短編も同様の形式です。

短編で、一つ一つのストーリーに登場する人物は少ないので、文章中に織り込まれた事件解決の鍵から、“灰色の脳細胞”を働かせて犯人にたどり着くのは、比較的簡単なはずですが、どうやら僕の“灰色の脳細胞”はすっかり眠っているようでした。

ポアロのような洞察力が欲しいですね。さらりと読める良作がそろった短編集です。

星7つ ☆☆☆☆☆☆☆★★★

『マン島の黄金』 アガサ・クリスティー

2007-01-09 17:17:42 | アガサ・クリスティーの本
冬休みの間に10冊以上は読んだはずなんですが、どの本を冬休み中に読んだのか思い出せません。
それで、まだ図書館に返却していない手元にある本の中で読んだ本を。

『マン島の黄金』 アガサ・クリスティー
 中村妙子・他訳 早川書房 2004年

早川書房のクリスティー文庫の中の一冊です。

アガサ・クリスティーの小説は大好きで、かなり読んできましたが、その中ではちょっと変わった趣向のストーリーも収められた短編集です。
クリスティーの小説は名探偵ポアロとかミス・マープルが登場するシリーズもののように、殺人が起きてそれを解決するという小説が比較的多いです。
事件→解決という、王道をいくミステリーの展開です。

ところが、この短編集には違った趣向のストーリーがいくつかあります。
たとえば表題作になっている『マン島の黄金』は、宝探しキャンペーンのために書かれたもので、話全体に宝のありかがヒントとして散りばめられているストーリーです。
『夢の家』のように、ちょっとオカルトちっくな展開ながら殺人事件の起きないようなストーリーもあります。
『夢の家』の場合は、クリスティーの小説ということで、事件→解決の構図が頭にあった僕としては、「コナン君」を見ているつもりだったのに、ストーリーは(オカルトっぽい)「サザエさん」だったという感じでしょうか。

もちろん、ポアロが登場して事件を解決していくようなストーリーもはいっています。
長編ミステリーのような複雑に交錯する人間関係を解きほぐしていく妙はありませんが、一つ一つのストーリーは短めなので読みやすく、一気に読んでしまった一冊でした。

星7つ ☆☆☆☆☆☆☆★★★