奥山舎 オウザンシャ

寺内はキリスト教とCharles Dickensの独立研究者。専門分野だけでなく広く社会問題に関心があります。

#アベノミクスとマタイ効果

2023年03月26日 | 日記
 第2次安倍政権(2012年12月-2014年9月)は、紙幣を大増刷して円安を誘導し、株価をほぼ倍加した。大儲けした個人・企業の多くは情報量・資金量・資金運用力の豊富な層で、笑いが止まらない。彼らの中にはコンピューターを駆使したアルゴリズム取引や超高速取引(High Frequency Trading)に長けた人たちがいる。かくして2021年度の企業の内部留保は500兆円を超え、10年連続で過去最高を更新するとともに、個人(家計部門)の金融資産残高も増え、2022年9月末時点で2005兆円となった(下記資料参照;以下同)。
 安倍晋三首相は2020年8月の辞任記者会見で「20年続いたデフレに『3本の矢』で挑み、400万人を超える雇用をつくり出した。」と(出典「東京新聞」< https://www.tokyo-np.co.jp/article/51760 >)。黒田日銀総裁も2023年3月の総裁最後の記者会見で「金融緩和は成功だった。」「雇用も400万人以上増加し、ベアも復活し」たと(朝日新聞2023・3・11)。だが、その中身はどうか。
 「総務省の労働力調査(年平均ベース)によると、企業や団体などに雇われている雇用者のうち役員を除いた働き手は、第2次安倍政権発足後の2013年から18年までの6年間で383万人増えた。『380万人増』という主張は正しい。/(改行)ただ、増えた働き手のうち55%はパートやアルバイトなど非正規で働く人々が占める。非正規で働く人の多くは所得が少なく、不安定な生活を送っている。総務省が5年ごとに公表している就業構造基本調査によると、非正規で働く人の75%が年収200万円未満だった。この中には学生バイトや主婦のパートも含まれているが、いわゆるワーキングプアにあたる人も一定数いるとみられる。/ 首相はこれまで『この国から非正規という言葉を一掃する』と何度も訴えてきたが、役員を除いた働き手に占める非正規雇用の割合は18年平均で37・9%となり、過去最高の水準になっている。」(出典「朝日新聞Digital」
< https://www.asahi.com/articles/ASM7G560BM7GUTFK006.html >)
 要するにアベノミクスの結末はマタイ効果なのだ。マタイいわく、「だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。」(マタイ25・29) 
 国家は借金まみれ、「国債の発行残高は、2023年度末には1068兆円となる見通し」(出典「NHK速報< https://www3.nhk.or.jp/news/special/yosan2023/government-bonds/ >」。
 低収入者の中には生理用品さえ変えない人たちがいる。消費税アップとなれば、彼らにも負担が強いられるだろう。経済格差が拡大すればするほど社会の安心安全は損なわれる。秋葉原殺傷事件、大教大小学校殺傷事件、・・・といった悲惨な事件は、格差社会に恨みを抱いた者の犯行である。類似犯が現れないことを祈るばかりである。政治の枢要は、光の当たらない層に、温かい日差しを射し込むことにあることを忘れないでほしい。

資料1.「非正規雇用者数は2005年に1,634万人でしたが、それ以降増加傾向にあり、2022年には2,101万人と約1.3倍になっています。そのうち2005年に780万人だったパートは2022年までに241万人増加し、1,021万人になっています。」(出典:公益社団法人 生活保険文化センター)
資料2.「生活保護受給者数は約204万人。平成27年3月をピークに減少傾向が続いている」が、被保護世帯数は漸増傾向にある。(厚生労働省)
資料3.「2021年度の企業の内部留保が、金融・保険業をのぞく全業種で初めて500兆円を超え、10年連続で過去最高を更新したことが、法人企業統計(財務省)によって示されました。」(出典:Manegy)
資料4.日本銀行が2022年12月19日発表した2022年7~9月期の資金循環統計(速報)によると、9月末時点で個人(家計部門)が保有する金融資産残高の合計は2005兆円だった。コロナ禍の行動制限が緩和されて消費が増え、前年同期比0・8%増にとどまった。 内訳をみると、「現金・預金」は2・5%増の1100兆円だった。金融資産全体の54・8%を占める。 「株式等」は8・1%減の196兆円、「投資信託」は1・7%減の86兆円と、それぞれ減った。景気減速への懸念から、株価が下がった影響を受けた。「保険」は1・1%増の382兆円だった。円安・ドル高が進み、外貨建て保険の評価額が膨らんだ。(日本銀行調査統計局< https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf>も参照)
資料5. 「第2次安倍政権」で「円安・株高を演出し、在任中の日経平均株価は約2.3倍の上昇を見せ、2000年以降発足の歴代政権では突出する。」「雇用情勢も改善し、12年12月に4.3%だった完全失業率は19年11月には2.2%まで低下。安倍氏は8月の辞任表明記者会見で『20年続いたデフレに3本の矢で挑み、400万人を超える雇用をつくり出すことができた』と実績を強調した。安倍政権下での景気拡大は71カ月と戦後2番目の長さ。ただ、実質GDP(国内総生産)成長率は年平均1.1%にとどまる。好調な企業収益が賃上げに回って個人消費が活性化する「経済の好循環」を実現できなかったためだ。実質成長率は17年に2.2%まで高まったものの、19年は0.7%に失速した。
  低成長を打破する成長戦略は掛け声倒れに終わり、経済の実力を示す潜在成長率は1%を割ったまま。スイスのビジネススクールIMDの世界競争力ランキングで日本は12年の27位から20年には34位へ後退した。一方、景気刺激のため経済対策が繰り返され、財政は一段と悪化した。新型コロナウイルス感染症対策の巨額支出も加わり、12年度末に705兆円だった国債発行残高は、20年度末には964兆円に膨らむ見通しだ。」(出典:時事エクイティ< https://equity.jiji.com/commentaries/2020091601055g >)
資料6.日本の国債残高の推移(下記サイト参照)
< https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-comparison.html >


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