【今日の気になったニュース・記事】
2,000社以上の経営者と面談した、元東証一部上場のベンチャーキャピタリストが厳選！
新旧問わずに、その日、気になったニュースをピックアップ！
新しいニュースから、古い記事まで「新たな発見」をお届けいたします。
■日本円の購買力が1970年代に逆戻りしてしまったことの意味とは
東洋経済 2021/9/12 野口悠紀雄(一橋大学名誉教授)
ところが、その後、円の購買力が低下した。
こうなったのは、円高になるとそれを阻止して、円安に誘導する政策が行われてきたからだ。
この結果 、人材を日本に呼ぶことができなくなる。
・90年代の夢のような豊かさ
当時の私の日本での月給は、2万3000円程度だった。
日本とアメリカの豊かさの差を思い知らされた。
わが家は、家族5人で、何度か欧米を旅行した。
オリンピック、バルセロナ大会の頃のことだ。
アメリカでの貧乏学生生活のカタキを取った気分になった。
2005年には、アメリカ、カリフォルニア州のシリコンバレーにあるアパートに、1年間ほど住んでいた。
ところが、いまではこれらは、夢のような話になっている。
シリコンバレーのアパートも、高くて手が出ないだろう。
いまはそれが逆になっている。
日本の学生が欧米の大学に留学するのも、ますます難しくなっている。
・70年代から90年代まで、円の価値が高まる
1960年代の後半、最初の貧乏学生を強いられていたとき、日米の為替レートは、1ドル＝360円というレートに固定されていた。
72年には、ドイツ・マルクが変動を始めた。
ちょうど国際金融の講義の時間に、ドイツ・マルクが変動を始めた。
73年2月には円もフロートを始めた。
その後、ドルに対する価値は、日に日に上昇していった。
この動きは、80年代、90年代を通じて続いた。
・購買力平価、実質為替レート指数とは
円とドルを例に取って示せば、つぎのとおりだ。
この場合、日本人がアメリカで同じものを基準時点と同じ負担で買えるためには、基準時点より円高になる必要がある。
購買力平価と実際の為替レートの比率が、「実質為替レート指数」である。
基準年次と同じ購買力を維持できるほど、実際の為替レートが円高になっていないのだ。
・いまの円の購買力は90年代の半分以下
1970年には実質実効為替レート指数は58程度であった。
その後一時的に円安になり、80年代の中頃までその状態が続いたが、80年代の後半から再び円高が生じ、1995年4月には実質実効為替レート指数は150.8となった。
その後下落して1997年には100程度になったが、99年ごろから再び円高になり、2000年には120台となった。
リーマンショック後の2009年ごろに再び円高になり、100を超えた。
結局のところ、最近の実質実効為替レート指数は、90年代中ごろのピークに比べると、半分以下の値になった。
その頃の留学生生活を思い出してみると、街を歩いても商店に入っても、豊かさに目も眩むほどだった。
80年代と90年代にそれが逆転したのだが、いまにしてみれば、つかの間の夢に過ぎなかった。
なお、ここで言っている「豊かさ」とは、絶対的なものではなく相対的なものだ。
ところがいまはまた、3流ホテルに戻ってしまったと言うようなことだ。
例えば、70年代には一応ホテルにもエアコンがなかったかもしれないが、いまは3流ホテルにもあるといったことだ。
・日本は自ら望んで貧しくなった
それは円高が進むと、それを食い止め､円安にするような政策が行われてきたからだ。
そして、2001年の1月から、顕著な介入が行われた。
アメリカ連邦準備制度理事会（FRB）のアラン・グリーン スパン議長（当時）が政策金利の引き下げを示唆したため、アメリカの短期金利が低下するとの予測が市場に広まり、円高が進行したのである。
さらに、100円に近づいた。
04年3月まで継続的に行なわれた介入の総額は、38兆円を超えた。
2010年頃にも円高が進行し、民主党政権は必死になって円安を求めた（ただし、成功しなかった）。
このため、円安が進行した。
逆に、外国に所得源があって日本で使えば、いままでより価値があるものを買えることになる。
それが、いまでは、70年代に逆戻りしてしまった。
誠に愚かなことだと言わざるをえない。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87089
本日は3つの記事をご紹介いたします。
reuters（ロイター通信）2021年7月26日 佐々木融（ＪＰモルガン・チェース銀行 市場調査本部長）
現状の円実質実効レートの水準は２０１５年６月に記録した１９７０年代前半以来の最安値まであと４％程度の水準まで下落している。
しかし、長期的に見ると、円の弱さは今年に始まったことではない。
＜円の購買力、７０年代に逆戻り＞
例えば、８０年代後半から９０年代までは、海外から来日した外国人は一様に日本の物価の高さに文句を言っていた。
それがアベノミクス以降に大幅な円安となってからは、来日した外国人は「日本は安い」と口をそろえて言うようになった。
一方、日本人にとっては海外旅行先で様々な物が割高に見え、免税店では「日本で買った方が安い」とつぶやくことが多くなった。
＜物価調整しなくなった円相場＞
現象面から単純に解説すると、それは「日本の物価上昇率が他国と比べてかなり低いのに、為替レートがその分の調整をしていない」ことが背景にある。
これに対し、その他の主要国は概ね４０─５０％程度上昇している。
しかし、実際の為替相場をみてみると、ドル／円相場は２０００年の平均レートと２０２１年前半の平均レートがほぼ同水準、ユーロ／円相場、人民元／円相場は逆に現在の方が円安水準となってしまっている。
この結果、円は実質的に歴史的な割安水準まで落ち込んでしまっている。
様々な理由が考えられるが、次の４つは特に影響している可能性が高いと指摘したい。
１つ目は「日本企業によるキャピタルフライト」だ。
日本企業はアベノミクスが開始された２０１３年ごろから対外直接投資を急増させている。
また、経済産業省の統計によると、日本企業の海外現地法人の純利益は年間１０兆円程度でそのうち４兆円前後を内部留保として積み上げている。
円は実質的にかなり割安で、今や日本の物価は安い。
それでも日本企業は海外に進出し、海外で利益を積み上げている。
２つ目は「日本企業が円安メリットを以前ほど享受できなくなっている」という点だ。
また、輸入企業は円安で上昇しているはずの輸入価格を国内価格に転嫁できず、物価も上がらないし、企業収益は悪化する。
＜海外勢の失望売りと日本人の現金選好＞
このところ外国人投資家の日本株に対する興味は減退してしまっているようで、アベノミクスに期待して２０１３年、１４年に合計２０兆円の日本株を買い越した外国人投資家は、その後に１０兆円分を売り戻してしまった。
つまり、いくら対外的な購買力が低下しても、日本の家計は円という通貨が最も魅力的な国内資産だと感じて保有している。
＜上がらない日本人の年収＞
経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）のデータによると、２０２０年の日本の平均年収は４４０万円だが、２０００年は４６４万円だった。
その他主要国の平均年収はおおむねこの２０年間で１．５倍から２倍に増えているからだ。
この結果、ドル建てでみた平均年収は２０００年当時の日本はＯＥＣＤ加盟国の中で３番目に高い国だったが、今や順位は２０位まで低下しており、韓国とほぼ同水準となっている。
他国はインフレ率も高いし、日本はインフレ率が横ばいだから名目賃金が上昇していなくても仕方ないだろうと開き直りたくなるかもしれない。
一方、米国の実質平均年収は過去２０年間で２５％、過去３０年間で４８％も上昇している。
日本人の給料は上がらない一方、海外の人の給料は上がり、現地のモノやサービスの価格は上昇する。
このままの状況が続くと、日本人にとって海外のモノやサービスはさらに割高になっていくだろう。
過去１年半程度のコロナ禍でも他の主要国の物価は上昇している一方、日本の物価は若干下落している。
それ自体は日本経済にとって良いことだが、いずれ良いモノ・サービスの価格は外国人向け価格で高く設定されるようになり、日本人には手の届かない水準になってしまうかもしれない。
＜先進国からの脱落なのか＞
世界経済に暗雲が垂れこめれば、ドル／円相場が１００円を割れることもあるだろう。
円相場が他国との物価上昇率の差を反映しなくなり、日本が世界の中で高所得国から中所得国になってしまったことは、日本がもはや先進国ではなく、後退しているという意味で「後進国」になっていることを意味しているのだろうか。
https://jp.reuters.com/article/column-toru-sasaki-idJPKBN2EW02C
■間違いなく｢悪い円安｣が日本経済を蝕んでいく
～円安万能論を捨て､日銀は正常化を示唆すべき～
東洋経済 2021/10/15 唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)
～～～
2013年ごろに円安志向のアベノミクスを批判する人々の基本認識は「もはや輸出が増えない円安には、持続的な景気浮揚効果はない」というものだった。
最近では景気回復には円安が必要だと主張する人のほうがだいぶ減ったのではないか。
アベノミクス下での景気回復（2012年11月から2018年10月までの71カ月間）でも、それ以前の小泉政権下で実現した戦後最長の景気回復（通称：いざなみ景気、2002年2月から2008年2月までの73カ月間）でも、そうした揶揄は付いて回った。
アベノミクス下では雇用の「量」は回復が著しかったものの、所得（賃金）に関しては失望を買った。
・「実感なき景気回復」の正体
実質GDIは、実質GDP（国内総生産）に交易利得を足した（あるいは交易損失を引いた）概念である。ある基準年から、交易条件（輸出物価÷輸入物価）が改善していくと交易利得が増えるか交易損失が減る。
交易損失は、企業にとっては仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できていないことを示し、企業収益の圧迫を意味する。
そんな状況で雇用・賃金情勢が持続的に改善していくものでないことには、多くの説明を要しないだろう。
円安による輸入物価上昇が交易条件を悪化させ、実質ベースで見た国内総所得（GDI）の伸びを抑制するのである。
この差が交易損失であり、「GDPの仕上がりが良くても景気回復の実感がない」理由だと筆者は考えている。
図に見るように、逆に2020年春以降のパンデミック下では円相場はそれほど動いていないが、原油を筆頭に資源価格が急落したことで交易条件が大幅に改善し、交易利得が発生している。
まとめると交易条件が悪化する局面では、①円安か②原油高のいずれかが基本的に進んでいる。
やはり為替と原油の動きが重要だったことがわかる。
もちろん、これは交易条件に限定した話であって、周知のとおり、超円高が諸々のショックに連なっていくことになるので「円高でよかった」という結論にはならないが、少なくとも悪化していた交易条件が超円高によって大きく復元したのは確かである（当時は原油価格も下落方向だった）。
しかし、脱炭素に伴う昨今の潮流を人類史におけるエネルギー革命の過渡期と定義した場合、そうした劇的な変化が起きても不思議ではない。
・円安、原油高が日本人の暮らしを圧迫
生活実感としての景気回復は一段と立ち遅れるだろう。
典型的にはガソリン価格だろう。街のガソリンスタンドに目をやればもう1年前の倍近くまで上昇している。
商品市況や為替相場に絡んだ話を国内のマクロ経済政策で大きく修正するのは不可能である。
これを機に、ポーズであっても日本銀行は金融政策正常化を示唆したほうがよいと筆者は考えている。
過去における日銀の緩和政策が往々にして円高・株安に呼応する格好で決断されてきたことがそれを示している。
しかし、アベノミクス下ではドル円相場は50％以上上昇したが、輸出数量はほとんど増えなかった。
また、近年ではドル円相場と日経平均株価の相関も不安定になっており、円安による株価浮揚の効果も過去ほどではない。
過去1年半で日本経済は欧米経済に大きく出遅れており、もはや日銀以外の海外主要中銀は正常化プロセスに関し一歩も二歩も先行している。
・後手に回れば円が売り込まれるリスク
理由づけはインフレ高進への予防的措置とでもすればよい。
重要なことは、政策当局は焦燥感を市場に悟られてから動くとロクな目にあわないということだ。
そうなってからではできることは非常に限られてくる。
それくらい、円安と原油高が同時進行する現状は危うい。
https://toyokeizai.net/articles/-/462077
円安と聞けば、輸出大国日本、良い面が強調されることが多いのではないでしょうか。
「円安」は大きな危険と隣り合わせであることは理解する必要があるかもしれません。
理由は「日本買いリスク」。
コロナ不況を背景に、米英投資ファンドが都市部を中心に猛烈な勢いで日本の不動産を買っている状況が続いています。
英米ファンドを中心に、日本企業の株式を次々と買い増しし日本企業の大株主に名を連ねるほどの大きな影響力を持ち始めています。
株の保有者が、その会社の重要な意思決定を行います。
資本主義の下では、会社の所有者は社長でもなく役員でもありません。
資金力のある「株主」のものです。
円安を通し外貨の影響力は増し、日本企業や日本の土地を海外の資金力ある投資家に買い占められているのが、今の日本の実情だと言われています。
円安のリスクは、それだけにとどまりません。
食品やガソリンをはじめ、ガス・電気・水道などのインフラ料金も徐々に値上げされてきています。
輸入している資源は円安が続けば続くほど国内の価格が高騰します。
安い円のままでは、相対的に輸入品が高くなるのは当然ではないでしょうか。
貧困層が、より苦しい立場になりかねません。
例えば、資源などの権利を競争獲得する場合もそうです。
その他、著作権や特許などの無形資産も、劣勢に立たされてしまいます。
円安のメリットが国内報道などでは強調されていますが、日本の国際的存在自体が埋没する状況では、日本の国際的地位全体が失墜することにも直結してしまいます。
円安日本が、他国のマネーパワーに屈しざるを得ない状況にもなりかねません。
国際政治に、日本が飲み込まれている状況と言えるのかもしれません。
何をすれば、今の最悪の日本経済の状況が改善できるのでしょうか。
当たり前ですが、日本経済が悪化すればするほど日本企業は倒産や弱体化が進みます。
大企業もそして中小企業も収益改善することで納税額も上昇します。
デフレ脱却し、金利上昇が見込まれれば、好ましい経済循環が生まれ、行き過ぎた円安は改善に向かいます。
では、どうすれば日本経済が良くなるのでしょうか。
つまり、日本経済にお金を回すことです。
当たり前ですね。
イギリスやフランスなどの大国の植民地に近い状況の国々などは自国通貨が発行できません。
ただ、日本銀行は自国通貨「円」を発行できます。
円を発行しその資金を毎月の給付金「ベーシックインカム」や公共事業に充てて日本経済を活性化することが今の緊急的経済対策として必要なのかもしれません。
中には一時給付金を出しても「貯蓄する」という批判もあります。
政府が「出し渋り」を強調したことへの「不信」が反映したとも言われています。
安心感は支出や消費を促します。
中長期で見れば冠婚葬祭や進学、不動産や動産への購入も、より高額な支出も増えていくはずです。
大事なのは「継続的」「反復的」給付金で「国民の安心」を促すことかもしれません。
政治的不信をも解決できる施策とも言えるかもしれません。
何故、今大胆な経済施策をしないのか、という疑問です。
政治家や官僚は、その多くは東大など優秀な学歴を有する方々です。
様々な国内外の資料やデータを有する立場。
何故このような経済的愚策を続けているのでしょうか。
それは、何故なのでしょうか。
問題は、国内だけにとどまらない筈です。
日本は長い間「強い経済」を誇ってきました。
「強い日本経済」を望まない勢力が、国際政治では多数存在していたのも事実です。
その愚策で利益を享受できている海外勢力もいる、とも言われています。
そして、その「政治的意向」を日本国内で受ける勢力がある、という可能性もあります。
安倍政治を支えてきた「アベノミクス」との深い関係を持っている方です。
給与が上がらないのも、日本の土地や日本企業が他国に次々と買収されている状況も、言わば、今までの政権が作り上げてしまったこととも言えるのではないでしょうか。
株価が一時的に上がっても企業の収益や私たちの給与には影響が多くありません。
一時的に株価が上がっても下がれば意味がありません。
大事なのは実経済への貨幣供給、日本実経済の復活です。
円安による輸入品高騰。
不況による円安、まさに「経済敗北日本」の状況かもしれません。
今こそ「実力による円高」で「強い日本」を再興する必要があるのではないでしょうか。
多くの国民が安心できるボリュームの給付金、またはベーシックインカム。
日本の津津浦浦、お金が回れば、日本の多くの企業が収益改善します。
企業間の設備投資も増え、大きな受発注も増えていくでしょう。
雇用も促進するでしょう。
大事なのは、政府の経済施策。
為替や外貨への施策は二の次です。
生活者一人一人の預貯金を含めた資金力が、地域企業、そして地域経済、さらには、国家財政にも好影響を与えていくはずです。
国内実経済「真水」供給に、今最大限の思い切った施策が必要なのではないでしょうか。
