今回は、宮部みゆきさんの直木賞受賞作品、『理由』(新潮文庫)です。
--------あらすじ--------
事件はなぜ起こったのか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか―。東京都荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった・・・。
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小説というより、ノンフィクションを読んでいるようでした。事件の描写が本当に詳しいし、語り口も登場人物の誰かの目線で進むのではなくて、第三者の人間(雑誌の記者)の目線で、しかも事件の後から事件を振り返ってというような形で語られているから、余計にノンフィクションっぽい。
この小説では、その殺人事件に関わることになった人々を詳しく描いていき、雑誌記者が事件後にインタビューした内容が記述され、あるいはその人々の言い分が展開される。そのときどきの人々の感情、怒り、憎しみ、興奮、安堵などがストレートに伝わってくる。
様々な角度から事件を眺めていきます。
事件に関係した人々には、その人々なりの事情があり、登場する家族にはその家族なりの問題、葛藤がある。そういう、背景としての事柄がすごく上手く描かれていると思います。
そして、初めは事件について何も分からないまっさらの状態。「誰」が犯人で、殺されたのはいったい「誰」なのか、まったく分からない。被害者が誰なのかさえ、完全に明かされるのは物語の中ごろです。しかし、少しずつ事件を追跡し、調査し、関係者にインタビューをし、徐々に事件の概要が明らかになっていく。
周縁から徐々に核心に迫っていきます。
これは本当にワクワクします。
そして、登場人物が非常に人間くさい。 見栄っ張りな女、借金で首が回らなくなった男、息子にバカにされたくない一心で無理をする父親、姑の世話をする嫁などなど。ほんとにこんな人いるよって感じです。そして彼らの家族もそれぞれ問題を抱えていて、それがまた今の世の中で問題となっているようなことがタイムリーに用いられています。
ラスト(というか後半)で、「誰」が犯人なのか明かされていくわけですが、ちょっとホロリとするようなところもあったりして、なかなか目が離せません。
これは面白い小説でした。私は好きですね。割と長い小説ですけど全然退屈しないですよ~。
理由 宮部 みゆき 新潮社 2004-06-29 by G-Tools |
--------あらすじ--------
事件はなぜ起こったのか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか―。東京都荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった・・・。
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小説というより、ノンフィクションを読んでいるようでした。事件の描写が本当に詳しいし、語り口も登場人物の誰かの目線で進むのではなくて、第三者の人間(雑誌の記者)の目線で、しかも事件の後から事件を振り返ってというような形で語られているから、余計にノンフィクションっぽい。
この小説では、その殺人事件に関わることになった人々を詳しく描いていき、雑誌記者が事件後にインタビューした内容が記述され、あるいはその人々の言い分が展開される。そのときどきの人々の感情、怒り、憎しみ、興奮、安堵などがストレートに伝わってくる。
様々な角度から事件を眺めていきます。
事件に関係した人々には、その人々なりの事情があり、登場する家族にはその家族なりの問題、葛藤がある。そういう、背景としての事柄がすごく上手く描かれていると思います。
そして、初めは事件について何も分からないまっさらの状態。「誰」が犯人で、殺されたのはいったい「誰」なのか、まったく分からない。被害者が誰なのかさえ、完全に明かされるのは物語の中ごろです。しかし、少しずつ事件を追跡し、調査し、関係者にインタビューをし、徐々に事件の概要が明らかになっていく。
周縁から徐々に核心に迫っていきます。
これは本当にワクワクします。
そして、登場人物が非常に人間くさい。 見栄っ張りな女、借金で首が回らなくなった男、息子にバカにされたくない一心で無理をする父親、姑の世話をする嫁などなど。ほんとにこんな人いるよって感じです。そして彼らの家族もそれぞれ問題を抱えていて、それがまた今の世の中で問題となっているようなことがタイムリーに用いられています。
ラスト(というか後半)で、「誰」が犯人なのか明かされていくわけですが、ちょっとホロリとするようなところもあったりして、なかなか目が離せません。
これは面白い小説でした。私は好きですね。割と長い小説ですけど全然退屈しないですよ~。