コラム「ひびき」  ☆☆お堀端クリニック☆☆

小田原市お堀端通りにある神経内科クリニックです。
折に触れて、ちょっとした話題、雑感を発信いたします。

ある日の挨拶

2014年08月14日 | 診療
以下は、以前、勤務していました認知症専門病院の、ある年の忘年会での職員に向けた挨拶です。その当時の雰囲気が良く出ていると思います。その頃の問題点は、多くの認知症患者さんの居られる施設では、現在でもなお、変わらぬ課題だと思います。職員の待遇とも併せ考えると深刻な問題です。

当院開院後、9ヶ月目に入りました。私が院長をお引き受けして3ヶ月が経とうとしています。みなさん、毎日本当にご苦労様です。それぞれの部署で、やってもやってもこれでよいということがない仕事量をこなしておられることと思います。日頃の疲れ、ストレスを発散できる場がもっとたくさんあれば良いのですが、今日が、そういう数少ない機会の一つになれば、と思います。
さて、私自身の率直な感想を申し上げると、いやぁ大変だなぁ、疲れるなぁ、という気分です。身体的に大変な面はもちろんあるのですが、それはいずれ改善されていくことでしょう。先の見通しがはっきりわかっている場合、多少の肉体的苦痛には耐えられるものです。大変さの中には、思い通りにいかないなぁ、良い方向への変革がなかなか進まないなぁ、というイライラ、時に無力感があります。私が院長をお引き受けしましたのと、鳩山内閣が発足いたしましたのがちょうど同じ時期でした。今回の政権交代は、明治維新以来、いやそれ以上の革命に匹敵する変革を社会にもたらすと期待されています。私も初日に、こんなことを目指すというお話の中で、革命的な変革をしなければならない、と強調しました。
従来の認知症診療では、社会生活、家庭生活を行っていく上で、きわめて不都合な症状を何とか消滅させようというところに主眼が置かれていました。患者さんを一般社会から隔絶し、暴言、暴力があれば、なんとかこれをコントロールして、従順な無抵抗の人にしてしまおうというのが、最終目標に設定されていたのです。
このために、すでに脳萎縮が進行し、全身状態の悪化もある患者さんに、大量の薬物を使用し、身体の自由を奪うということが行われてきました。
しかし、心を落ち着けてよく考えてみてください。これはいったい、誰の都合を最優先した結果の治療選択でしょうか。何十人入院していても、水を打ったように静かな病棟で、もくもくとおむつ交換をし、体位変換をする光景を想像してみてください。だれも何も不平不満を言わない、叫ばない、あちこち歩き回ってけんかをしたり、転んでケガをすることもない、まるで工場のような病棟で、モノを相手に淡々と作業する。
これは、明らかに管理する側に立った発想からの帰結です。患者さんが望むことを推し量った結果ではありません。
さまざまな教科書や専門家の講演では、患者さん本位の医療を展開しなければならない、ともう久しく以前から指摘されています。なぜなら、医療というのは本来そういうために存在しているのですし、患者さんをモノとして扱って、利潤を追求する社会には、働く人々が本当に心から満足できる幸福感はうまれないからです。
しかし、それを文字通りに実践できている場所は、ほとんどないのではないでしょうか。
私が、革命的に変革しなければならないと申し上げましたのも、そういう従来の形態に自然となってしまうのを、当院では拒否し、新しい理想の形を作らなければならないと考えるからです。
皆さんも、そう遠くない将来、病棟で療養する患者さんの一人になっていくことでしょう。そのときに、患者さんになった皆さん本位の医療が施されることを願っています。
そのためには、まず、いま目の前におられる患者さんで、何をなすべきかを真剣に考える必要があります。情けは人のためならず、です。他人にしたように自分にされるのです。
それぞれの立場で、よくよく考えてみることが必要だと思います。自分がこれまで当たり前だと思ってきたやり方をいちいち再点検してみる必要があります。これは実際には大変困難な作業です。だから革命といったわけです。Brainstormingです。頭の中をすっかり切り換えて一緒に、がんばりましょう。
古代ギリシャの七賢のひとりタレスは、何が一番難しいかと問われ、「自分を知ること」と言ったそうです。では容易なことは?と問われて、「他人に忠告すること」と答えたといいます。けだし、名言だと感じます。まずは、自分自身を知ること、そして少し変わること、次の日、また少し変わること、それが大事なことですね。
この辺で、私の挨拶はおしまいとし、みなさん、楽しんでください。










インフルエンザとパーキンソン病

2014年08月14日 | 診療

(↑) かれこれ20年近く、どうのようにしてパーキンソン病になるのかを追い求めた私たちの研究成果をまとめたものです。
遺伝性ないしは家族性パーキンソン病の遺伝子解析から、多くのパーキンソン病関連の遺伝子座が見つかってきました。しかし、今なお、パーキンソン病の多くは、このような原因遺伝子とは関連しない、「孤発性」パーキンソン病です。
そこで、もっと一般的な環境要因との関連で、パーキンソン病が発症する一つのメカニズムを提案しています。
大部分は遺伝性ではない、と申し上げましたが、ある環境要因に対する個体(生物学的に見たヒト)の反応は遺伝子によって規定されています。ただ遺伝性疾患と異なるのは、環境要因が作用しなければ、この個体の遺伝的要因は発揮されません。遺伝性疾患では、環境要因とは関係なく、遺伝子変異によって病気が起こります。
このような環境要因を、「ひきがね」(左上の四角、triggering)と呼ぶことにします。もし、これが感染性病原体であれば、まずこの「ひきがね」がはたらき、感染によって引き起こされる疾病から自分を守る「生理的反応、防御反応」(右上の四角、physiological)が起こります。これは、個体にとって勿論、有益な反応です。この「生理的反応」がどんなものであるかというのは、その方の遺伝的背景によって異なります。日常で遭遇する諸問題にどんな風に対処するかが、個性で違うのと似ています。このように、個人的に異なる遺伝的背景の全体像は、漠然と体質といって良いかもしれません。
これで終わってしまえば、感染症というエピソードだけです。結果は、勝利か敗北か共存しかありません。しかし、個体の生理的反応はしばしば行き過ぎてしまいます。外から入ってきた病原体などには、できるだけ強力に反応し、勝利するように仕組まれているからです。
行き過ぎた「生理学的反応」の産物が、「病理学的反応」(下の四角、pathological)の扉を開けてしまう可能性があります。過ぎたるはなお及ばざるが如しです。この過程で、ある病気の状態(病態)が作られてしまえば、その病気を発症することになります。
「ひきがね」が感染症である場合、感染に関連して病気が引き起こされるという意味で、parainfectious mechanismと名付けました。


(↑)この研究を始めるきっかけになった、小さな論文を示します。パーキンソン病の方を多数拝見させていただくと、いくつかの特徴に気づきます。これは、同一年齢層で比較して、パーキンソン病の方を、パーキンソン病ではない方と区別する、集団のもつ特徴です。このような疾病集団のもつ特徴を科学的に解析する学問が疫学(えきがく)です。一つの病気の起こるメカニズムを追求しようとすれば、この疫学はたいへん強力なツールです。なぜなら、病気の起こるメカニズムは、この疫学的事実の中にすべて反映されているはずだからです。
パーキンソン病の方は、かぜをひきにくい、という特徴をもっています。もっと正確に言えば、かぜをひいても寝込むほど重症化することはほとんどないということです。家族内でインフルエンザが流行しても、パーキンソン病患者さんだけはほとんど何でもないという話をよく聞きます。
この論文の筆者は、パーキンソン病患者が、かぜウイルスに対するなんらかの抵抗性をもつことも否定はできず、今後の検討が必要であろう(赤下線部)と、問題を投げかけています。これが私たちの研究の契機になりました。


(↑) かぜウイルスの代表であるインフルエンザ・ウイルスに着目しました。これまでに報告されている、インフルエンザとパーキンソン病に関する疫学論文(Epidemiologic study)を検索いたしました。きわめて興味深い、一見奇妙なデータがいくつもあります。
その一つがこれです。横軸にその方の生まれた年、縦軸にパーキンソン病になる危険率を示しています。グラフは、誕生年が1900年あたりをピークにして「山なり」の形になっています。1900年以前、または1900年以降に生まれた人よりも、1900年前後に生まれた人の方が、その後パーキンソン病になる確率が高いというデータです。筆者は、1900年前後に生まれた方が、思春期頃までに暴露された環境要因が重要としています。
そのような因子の中で、もっとも可能性の高いものが1918年/1919年のシーズンに世界的に大流行したインフルエンザである、と推論しています。後世、スペイン風邪として知られるこの世界的大流行では、感染者6億人、死者4000~5000万人と言われています。ウィーンでもスペイン風邪は猛威をふるい、グスタフ・クリムト、ギヨーム・アポリネール、エゴン・シーレなどが犠牲になっています。
死者の中には、現在ではインフルエンザ脳症として知られる、重篤な神経症状で数日以内に亡くなられた方が含まれており、アポリネール症候群と呼ばれています。


(↑)スペイン風邪の時のウイルスは、H1N1という血清型をもつソ連風邪のウイルスと似たものです。流行時に患者さんから分離されたウイルスは、世界中の研究機関で保存されています。この中で、William Smithという方から分離された、神経毒性(Neurovirulence)を有するA型ウイルス株は、その頭文字をとって、influenza A/WSNとして様々な実験に使われています。私たちは、WSN株と、A香港型ウイルスの組み替えウイルスを様々準備し、マウスの脳表面に直接、ウイルスを接種し、神経毒性を調べました。
WSNウイルス由来のNA遺伝子とM遺伝子を有するウイルス株だけが、マウスの脳に致死的な神経毒性を示しました。
ノイラミニダーゼ(NA遺伝子の産物)はウイルス粒子の表面に突き出した突起で、感染した細胞の核内で増殖したウイルス粒子が、細胞の外に放出される時に必要な酵素です。
現在使われているインフルエンザ・ウイルスの治療薬は大部分、この酵素をブロックする作用をもっており、ウイルス粒子を感染細胞に閉じ込めてしまう作用があります。
マトリックス蛋白(M遺伝子の産物)はウイルス粒子の構造を裏打ちする蛋白です。
パーキンソン病では、脳内の神経伝達物質のうち、ドパミン不足が症状発現に最も重要と考えられています。ドパミンは、脳幹部の中脳にある、黒質という部分で作られます。ドパミンを産生している神経細胞内にメラニンという黒色色素をたくさん含んでいるので、肉眼的に黒く見えることから黒質と呼ばれています。パーキンソン病でこの黒質のドパミン産生細胞が、変性、消失していくプロセスで、細胞質にレビー小体(Lewy body)という特徴的な球形の封入体が出来ます。
感染実験では、図Aに示すように感染3日後あたりから、ウイルスは中脳黒質に集積し、7日目(図B)には、さらにウイルスは中脳黒質、ことにドパミン産生細胞の多い緻密層という部分に集積します。その部分をさらに詳しく見ますと(図C)、ウイルスは、ミクログリアやアストロサイトという神経細胞以外の細胞には感染せず、ドパミンを産生する、神経細胞だけに感染していました。
この実験結果から、スペイン風邪由来のインフルエンザ・ウイルス株は、中枢神経系にきわめて親和性が高く、しかもドパミン産生細胞に選択的な親和性があると考えられました。
インフルエンザ・ウイルス粒子の表面には、NAの他にもう一つHA(ヘムアグルチニン)という突起が出ています。これが感染細胞に付着する、錨(いかり)のような役目をします。私たちの感染実験で、ドパミン産生細胞にだけウイルスが感染するのは、この錨の相性がぴったりだからという推論をいたしました。ここまでが、私の博士論文の内容です。


(↑)博士論文の段階から、次の段階に進むまで、数年の模索を要しました。WSN株を用いた感染実験で、あまりにもきれいにドパミン産生細胞への感染が証明されましたので、このままウイルスがその場所で慢性、持続的に感染し、じわじわとドパミン産生神経細胞を障害し、やがて症状を出すほどにドパミン濃度が低下してしまうというのが最もシンプルな筋道です。
ところが物事はそんなにうまくは行きません。先のマウスの感染実験でも、ほとんどのマウスが感染後7日目までに死亡してしまい、それ以後生き残ったマウスの脳を調べても、インフルエンザ・ウイルス抗原は中脳黒質から消失してしまっているのです。つまり、慢性、持続感染ではなく、急性の脳炎で終わってしまうのです。7日を越えて回復したマウスは、その後脳炎から回復して、さしたる後遺症を認めませんでした。
また、パーキンソン病で亡くなられた方々の脳組織を調べさせていただく機会を得ました。この研究からも中脳黒質およびパーキンソン病で病理学的変化を来す神経組織からは、インフルエンザウイルスの抗原、遺伝子を検出することは出来ませんでした。したがって、パーキンソン病の方の脳内でもインフルエンザウイルスが持続的に感染して、ゆっくりじわじわと障害を引き起こすという、ウイルスそのものの慢性持続感染は起こっていないと結論せざるを得ませんでした。
ここで、インフルエンザとパーキンソン病には関連なし、と諦めてしまうことも可能でした。しかし、ずっと調べていた疫学的論文には、両者の関連を示唆する、かなり興味深いものが多数ありました。また、感染実験で、たとえ急性でも、きわめて狙い撃ちした様にインフルエンザ・ウイルスがドパミン産生神経細胞に感染することを無視することが出来ませんでした。
そこで、Hit and Run Theoryとも言うべきメカニズムを想定いたしました。まずはじめに、インフルエンザウイルスが、脳内の特定部位に急性の衝撃を加えます(Hit)、それをひきがねにし、その後別のプレーヤーを刺激して、病気に至るプロセスが進行する(Run)という理論です。この別のプレーヤーは、最初のメカニズムのところで述べましたように、ウイルス感染にともなって台頭する生理的反応、防御的反応を担うプレーヤーである必要があります。


(↑)このような別のプレーヤーの候補を渉猟する過程で、インフルエンザ・ウイルスを専門とする研究者には、馴染みのあるMxA蛋白という物質にたどり着きました。MxA蛋白は、ヒト遺伝子によって作られるGTP分解酵素の一つで、インターフェロンによってその産生が高まります(1)。MxA蛋白は、細胞内の蛋白合成、シグナル伝達、顆粒輸送などに関わっています(2)。また、インフルエンザ・ウイルスを含むいくつかのRNAウイルス感染に際して、誘導され、ウイルス感染を防御する役目を担っています(3、4)。


(↑)最初に示しましたメカニズムの図に戻ります。「ひきがね」に引き続く、「生理学的反応」と「病理学的反応」の要(かなめ)の位置に、MxA蛋白があります。


(↑)次に、この図の仮説が、実際のヒトで成り立つかを、一つ一つ検証してきました。まず、インフルエンザ・ウイルス感染に際して、抗ウイルス作用(Antiviral effect)を示すMxA蛋白が速やかに誘導され、その結果、風邪症状が重症化しなくて済む(Rare tendency to catch colds)かの検証です。


(↑)パーキンソン病の方(PD)と、パーキンソン病ではない方(NC)から採血し、リンパ球を分離し、一時的に培養しておきます。
パーキンソン病ではない方は、4つのグループに分けます。ここ数年、一度も風邪をひいたことのない方(グループ1)、風邪をひいても軽症で済む方(グループ2)、風邪症状がひどくなるが何とか寝込むほどではない(グループ3)、風邪症状がひどく寝込むほどである(グループ4)の4つのグループです。パーキンソン病のグループの感冒罹患状況もチェックしていますが、すべて数年以内には感冒に罹患していないという結果でした。
各段階で、リンパ球からRNAを抽出し、RT-PCRで遺伝子を増幅し、その量を半定量化し、比較しています。
インターフェロン(INF)を添加しないと、PDグループとNCの4グループでは、特に差を認めません(棒グラフの左半分)。
インターフェロンを添加すると、MxA蛋白遺伝子のmRNAは誘導され、増加します(棒グラフの右半分)。その増加の程度は、パーキンソン病のグループと、風邪をひかないパーキンソン病ではない方のグループで最高で、風邪症状が重症化するに従い、順次低下するという傾向になりました。
すべての方で、風邪が重症化しないのは、MxA蛋白が多量に作られて抗ウイルス作用を示すためであることが示されました。そして、パーキンソン病の方では、その作用がずば抜けて高いことが推測されます。これで、第一段階の「生理学的反応」は実際の患者さんでも起こっていることの様です。


(↑)ヒトの遺伝子に組み込まれた情報は、蛋白質を構成するアミノ酸の配列順序です。一つのアミノ酸は3つの遺伝子の塩基配列で指定されるように出来ています。アミノ酸が鎖のようにつながり、ポリペプチドさらに複雑な立体構造をもつ、蛋白質に成長していきます。
このプロセスで、過剰に産生された蛋白質は、正常な立体構造をとることが出来なくなり、一塊の凝集体になります。この様な凝集体は、移動することが出来ず、細胞の内外にとどまり、沈着するようになります。そのとどまった場所に応じて、様々な生体にとって良くない影響を及ぼします。
さて、われわれが着目しているMxA蛋白はどうでしょか。MxA蛋白分子同士が結合(Homo-oligomer)して、ドパミンを含むカテコラミン系神経細胞内に自己凝集し、レビー小体のような細胞質封入体を形成することが出来るのでしょうか。


(↑)ちょうど研究がこの辺りまで来たところで、生化学者の努力により、MxA蛋白の立体構造がだんだん分かってきました。それによると、MxA蛋白の分子同士は、きわめて高濃度に存在すれば、図に示すように繋がり合い、大きな重合体(Homo-oligomer)を形成し得ることが分かりました。


(↑)ここから少しややこしい話になります。MxA蛋白の遺伝子からMxA蛋白を人工的に合成する実験系があります。目的の蛋白の遺伝子さえ準備すれば、あとは、30℃で90分間待つだけで、試験管内に大量のMxA蛋白分子が出来上がるシステムです。これを用いて合成されたMxA蛋白分子が、自然に凝集体を作るかどうかを調べました。ショ糖密度勾配法(Sucrose gradient fractionation)で遠心分離して、重合した多量体が形成したかどうかをチェックしました。ショ糖密度勾配法で遠心分離された試験管の底に穴を開けて、底から10等分した体積を順番に引き抜きます。一番下が1、一番上が10です。それぞれの分画にはどのくらいの分子量の物質が移動してくるか、ショ糖密度によって、予め分かっています。勿論、一番下の分画1には重い分子量、一番上の分画10には軽い分子量の物質が移動してきます。


(↑)図Aでは、試験管内で合成されたMxA蛋白は、分画9のところに単量体(1分子でできたMxA蛋白)が認められる他に、底に近い、分画1&2に多量体を形成したMxA分子があることが分かりました。MxA分子が高濃度に存在すると重合して重い分子種になることが証明されました。
それから、かなりの努力と時間を費やして、培養細胞内でも、同じようにMxA蛋白を人工的に大量に発現させる実験に成功しました。図Bがそれです。時間の経過とともに、左から右に変化しています。右端の写真では、はっきりと細胞質内に円形の凝集体が観察され、Lewy bodyに相当する実験結果です。


(↑) パーキンソン病の方の脳組織には、インフルエンザ•ウイルスの抗原、遺伝子は見つからなかったと述べました。
では、MxA蛋白はどうでしょうか。全てではありませんが、レビー小体、レビー神経突起にMxA蛋白陽性のものが認められます。図Aにこれを示します。
さらに、これを電子顕微鏡で仔細に観察すると、レビー小体の辺縁部に、顆粒状にMxA蛋白陽性部分が認められます。
レビー小体の主な構成成分は、α-シヌクレインという蛋白ですが、その他にも、非常に多種多様の蛋白の存在が知られています。
レビー小体の形成初期に、MxA蛋白が凝集の核になり、その後、主たる構成成分に押しのけられるように辺縁に移動している様に見えます。


途中


























山荷葉(さんかよう)

2014年08月08日 | コラム
朝霧に濡れそぼつと、白い花びらが透き通る花があると聞きました。
山荷葉という名でした。荷葉はハスの葉、山のハスというほどの意味です。
本州中部以北から北海道、サハリンに分布し、深山のやや湿った場所に生えています。
高さは30~70cm。花期は5~7月。茎の先に直径2cmほどの白色の花を数個つけます。大小2枚つく葉は、実際には、ハスというよりフキのような形をしており、花は小さい葉につき、葉の上に乗っているように見えます。大きい葉には花がつきません。花のあと、濃い青紫色で白い粉を帯びた実をつけます。実は食用になり甘いそうです。
日が昇り、花びらが乾くと、元通りの白さに戻るそうです。
なぜ、このようになるのでしょう、不思議な花です。