『本当はどうなの? 日本経済』。サブタイトルは「俗説を覆す64の視点」。著者は経済誌やTVなどで鋭い分析の、ファンも多い熊野英生さん。経済の現場を調査し統計をとり考えてきたエコノミストの説得力のあるリアルな視点が、現実の(理論上のではない)日本経済を解説してくれます。さまざまなデータと数値を読みこんだ64の具体的な解答はどれもが新鮮で説得力があります。
マネーサプライとは関係ない日本のデフレの本当の理由。
新興国の経済発展が先進国への輸出拡大でもたらされると、新興国の労働力不足と先進国の労働力の余剰をまねく要素価格均等化定理と呼ばれる作用。
バブル崩壊のダメージから立ち直る前に人口高齢化の波が来てしまったこと。
紙幣の発行は単なる負債なのに、そこに発行差益が生じるという素人発想が経済学者の間にあるという指摘…(価値の外化(表出)は疎外態であるという疎外論を知っている哲学や思想系の人間には理解しやすいかもしれません)。
行政改革するならば事業より組織を仕分けするべきだ…という最後のアンサーまで、実効性ある処方がプレゼンされています。
自分で最重要ポイントかも、と感じたは日本独特の中流意識。
「中流意識の強さと格差問題の関係は、格差問題があくまで他人事であるところに特徴がある」という指摘は、日本の根底に歴史的にズッーとある問題のような気がします。
本当はどうなの? 日本経済―俗説を覆す64の視点 著:熊野 英生 参考価格:¥1,680 価格:¥1,680 |
「中流意識」というと宮台真司さんや吉本隆明さんの大衆の原像が参考になりそうです。
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