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“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-02 『 夜の回帰線 』

2005-03-15 16:47:15 | 書籍
みなさんは夜寝る前に、本を読んだりすることはありませんか?
雑誌でもいいでしょう。マンガでも。小説でも。
・・・これは、寝る前にはあまりオススメできない。そんな小説です。

『 夜の回帰線 (上、下二巻) 』
   著;マイケル・グルーバー 訳;田口敏樹 発行;新潮文庫

現代でこそ、「妄想」と片付けられることの多い『魔術』。
しかし、アフリカ・東南アジア・さらにはアメリカの南部マイアミなどでは呪術師が息づいている。
舞台はアメリカ合衆国マイアミ。
マイアミ警察の刑事ジミー・パスは一件の凄惨な殺人事件を担当する。
被害者は臨月間際の妊婦。
なんと彼女は「生きながら」腹部を切開され、失血死。
取り出された胎児は、脳髄を掻き出され、部屋のシンクに捨てられていた。
被害者の体内からは、多量の薬物、それもパス刑事が聞いた事もないような薬物が検出される。
テトラヒドロハルマリン、イボガイン、ウアバイン、“特定できない構造の数種のアルカロイド"・・・。
彼女はなにかの儀式殺人の被害者なのか・・・?
パス刑事は民族植物学者や人類学者の力を借りて捜査を続ける。
やがて浮かび上がる一人の人物像、だがそれは・・・。

パス刑事の「物語」と同時進行で語られるのが、ジェイン・ドゥの「物語」である。
彼女は偽名を使い、ひっそりと暮らしている。
彼女は一人の少女を救い、ともに生活を始める。
やがて彼女は封じ込めていた過去の自分を浮かび上がらせる。
「夫」から逃げていた彼女。なぜ彼女は夫から逃げていたのか?
語られる彼女の過去。
アフリカの地で堕落していった夫について・・・。
マイアミで行われる殺人事件の犯人の呪術師は、自分の「夫」なのだと看破するジェイン。
過去と対峙することを決心した彼女は、自分もまた彼とともに学んでいたアフリカの呪術を使うことを決意する。

パス刑事とジェイン、二人は手を携えて殺人を繰り返す犯人と相対することになる・・・。

この小説は人類学・民俗学・心理学・薬学のエッセンスを織り交ぜている処に、私はまず惹かれました。
登場人物たちの過去(ジェインの場合、それはアフリカでの人類学者としてのフィールドワーク)を「日記」という形で語らせることで、過去と現在・現在と過去がテンポよく交差しています。
また、同じひとつの街・マイアミでジェインとパス刑事は行動しますが、二人が出会うのは下巻になってからで、それまでに語られる二人の性癖や日常生活が味を出してもいます。
ただのサイコスリラーではありません。
まずは高等な知性ありき。それが次第に憎悪に染まり、堕落していく様は読んでいて不気味なほどです。
読むほどに惹きつけられ、本を閉じるのが惜しくなるほど。
寝る前には、あまりオススメできません。

最後に本作から迷言をひとつ。

「 異文化にはいり込むことは、心の浣腸をするようなものだ 」
浣腸って、なんですか?グルーバーさん。
海外旅行に行ってて、食べ物に中って凄まじい下痢をした経験でもあるんですか。
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