先日、映画を観に行ってまいりました。
招待券がありましたもので、友人を誘ったところ、『大いなる陰謀』を観ることになりました。
私は、メリル・ストリープが好きでございます。アカデミー賞受賞はもちろん、ノミネートされることも多く、私自身彼女が出演した映画は、感動したものが多うございます。
『クレイマー、クレイマー』では、仕事と家庭に悩める母を演じましたし、メロドラマ『マディソン郡の橋』やピュリッツァー賞受賞作が原作の『めぐりあう時間たち』、面白いところではG.ホーンや若かりしB.ウィリスと狂演した『永遠に美しく…』など。
近作では、A.ハサウェイと共演の06年全米・日本公開の『プラダを着た悪魔』も気に入っております。
大いなる陰謀 (原題:LIONS FOR LAMBS)
ロバート・レッドフォード メリル・ストリープ トム・クルーズ
07年全米公開 08年日本公開(5/2現在、公開中)
(画像は、MOVIE,LIONS FOR LAMBSより)
映画というのは、もちろんエンターテイメントを追求するものでもよいと思います。社会性を掘り下げるものを、私は好みますが。
本作は、合衆国の対テロ政策を題材に、極秘にアフガンで対テロ作戦を実行させる、次回大統領選を狙っているような上院議員役(しかも共和党)にT.クルーズ。
ジャーナリストの立場から、議員にインタヴューし、彼の立場や意見を掘り下げる記者役にM.ストリープ。
真面目なんだかやり手なんだかよく分らない大学教授役と監督に、R.レッドフォード。
“ ある日、合衆国政府が、アフガンに勢力を回復しつつあるタリバンに対して、起死回生の極秘作戦を実行。
ワシントンでは、有力上院議員は、それを一人のジャーナリストにリークし、世論形成を目論む。そのジャーナリストは、かつて議員を好意的に書いた記事を発表していた。
彼女は、対テロ作戦の成功を危ぶみ、極秘に行うことへの批判や対テロ政策の失敗や欺瞞を追求する。
議員は、苦笑して言う。
「アフガンに宣戦した時には、マスコミも諸手を挙げて賛成したくせに。今になって自分達には責任がないと?
テロとの戦争に勝ちたいのか? イエスかノーかで答えてくれ、イエスかノーかだ」
同日、カリフォルニアでは、一人の教授が、ボンクラ大学生と面談をしていた。
才能ある生徒だったのに、学問に取り組まなくなっていた。彼は「世界は何も変わらない」とあきらめていたからだ。
教授は、世界に対して何か貢献したいと願い、休学して軍隊に志願した「二人の生徒」 のことを話し始める。
同日、アフガニスタンでは、極秘作戦が実行され、部隊が投入されるが、タリバンの部隊に遭遇し、兵士二人が敵のただなかに取り残される。
その二人こそ、教授の言った「二人」だった…。 ”
全米公開が07年の11月だか12月だかで、オバマ対クリントンの大統領選が苛烈な頃合いでしたか。これは、共和党マケイン議員批判もあったのかしら。ハリウッド俳優の多くは、共和党寄りであって、対テロ戦争開始直後は、ブッシュ大統領を批判した俳優は非難されと聞きます。
ブッシュ大統領のことを、あそこのブッシュ(茂み)と揶揄してパンチを効かせたのは、たしかウーピー・ゴールドバーグでしたか。俳優業を止めたと聞きますが、はてさて。
世界の問題に対して、「自分たちに出来ることを!」 と心掛け、実践することは大切なことです。
ブロッコリー頭の書記長がいる国や、同性愛者だからと問答無用で死刑になる社会である中東の国や、農民を袋叩きにするような老大統領がいるアフリカの国。
テロリストの跋扈する地域。狂信者のいる地域。独裁者のいる地域。麻薬生産の地域。
地球環境問題、経済の極端な格差からくる貧困問題、不適切な児童買春問題。
…私たちのいる世界は、不完全であり、それに対して何か行動すべきなのは、生活に余裕のある私たちでしょう。
「世界の問題に対し、意識を向け、行動しろ」 と、そう問いかけるレッドフォード教授の姿は好ましい。
テロ問題を、政党の支持回復や自身の政界での野望に利用する、クルーズ議員。
それを敏感に察し、真相を究明し公表しようと動くが、マスコミ界の現実に屈せざるを得ない、ストリープ記者。
政治の場・ワシントン、教育の場・カリフォルニア、そして戦地・アフガニスタン。それぞれの場所で、同日に展開され交錯するストーリィ展開は、たしかに現実味を深めてくれる。
娯楽映画でなく、社会性に富んだドキュメンタリーとして優れた映画。 日常の生活から、外の世界へと目を開かせてくれる良質の映画。
しかし、どうも結末がぼやけているのではという感が。
わずか1分後の救出を待ち切れず、タリバンに玉砕した兵士二人。
タクシーの中から、大戦記念碑やア-リントン墓地を見ながら、ストリープの流した「涙」。
…「何か」を問うているのは分かるのですが、いったい監督はその何かを明らかにしたいのかが解からない。
1800年頃の、米海軍のある軍人の言葉に、このようなものがある。
『正しき時も誤てる時も、わが祖国』
そもそも、T.クルーズには、M.ストリープとの共演自体、荷が勝ちすぎたのでは。
彼は、80年代の『7月4日に生まれて』以降、ほぼアクション映画の役しか演じず…それしか演じられなかったのではという疑念もありますが…いきなり、ストリープ演じるジャーナリストと渡り合う上院議員役です。
連邦政府や世界情勢、保守派の思想について学び、高位政治家とのインタヴューも重ねて役作りに励んだそうですが・・・。取りも直さず、それまでそういったことには無関心だったということを暴露したようなものであり、所詮は付け焼刃。
そもそも、演技力がなかったから、「お勉強」で飾り立てたかっただけでは?…と邪推したくなる。
88年のD.ホフマンと共演した『レインマン』でも、ホフマンの引き立て役にもなりきれてなかった。
相次ぐ奇行、カルト集団サイエントロジーへの傾倒や、映画『ミッション・インポッシブル3』の不振から、ついにパラマウントから見限られたクルーズが、「新生」ということでユナイテッド・アーティスツ社で制作した本作ですが…。
いま一つ、振るいませんねぇ。
もうすぐ、ヒトラー暗殺を計画するナチスの反逆者を演じた『Valkyrie』も全米公開されますが、あれも何やら…。あんなにヤンキー臭いドイツ将校がいるわけがない。
人間・ヒトラーを見事に演じたブルーノ・ガンツと、ぜひタイマン勝負をしていただきたいもの。
招待券がありましたもので、友人を誘ったところ、『大いなる陰謀』を観ることになりました。
私は、メリル・ストリープが好きでございます。アカデミー賞受賞はもちろん、ノミネートされることも多く、私自身彼女が出演した映画は、感動したものが多うございます。
『クレイマー、クレイマー』では、仕事と家庭に悩める母を演じましたし、メロドラマ『マディソン郡の橋』やピュリッツァー賞受賞作が原作の『めぐりあう時間たち』、面白いところではG.ホーンや若かりしB.ウィリスと狂演した『永遠に美しく…』など。
近作では、A.ハサウェイと共演の06年全米・日本公開の『プラダを着た悪魔』も気に入っております。
大いなる陰謀 (原題:LIONS FOR LAMBS)
ロバート・レッドフォード メリル・ストリープ トム・クルーズ
07年全米公開 08年日本公開(5/2現在、公開中)
(画像は、MOVIE,LIONS FOR LAMBSより)
映画というのは、もちろんエンターテイメントを追求するものでもよいと思います。社会性を掘り下げるものを、私は好みますが。
本作は、合衆国の対テロ政策を題材に、極秘にアフガンで対テロ作戦を実行させる、次回大統領選を狙っているような上院議員役(しかも共和党)にT.クルーズ。
ジャーナリストの立場から、議員にインタヴューし、彼の立場や意見を掘り下げる記者役にM.ストリープ。
真面目なんだかやり手なんだかよく分らない大学教授役と監督に、R.レッドフォード。
“ ある日、合衆国政府が、アフガンに勢力を回復しつつあるタリバンに対して、起死回生の極秘作戦を実行。
ワシントンでは、有力上院議員は、それを一人のジャーナリストにリークし、世論形成を目論む。そのジャーナリストは、かつて議員を好意的に書いた記事を発表していた。
彼女は、対テロ作戦の成功を危ぶみ、極秘に行うことへの批判や対テロ政策の失敗や欺瞞を追求する。
議員は、苦笑して言う。
「アフガンに宣戦した時には、マスコミも諸手を挙げて賛成したくせに。今になって自分達には責任がないと?
テロとの戦争に勝ちたいのか? イエスかノーかで答えてくれ、イエスかノーかだ」
同日、カリフォルニアでは、一人の教授が、ボンクラ大学生と面談をしていた。
才能ある生徒だったのに、学問に取り組まなくなっていた。彼は「世界は何も変わらない」とあきらめていたからだ。
教授は、世界に対して何か貢献したいと願い、休学して軍隊に志願した「二人の生徒」 のことを話し始める。
同日、アフガニスタンでは、極秘作戦が実行され、部隊が投入されるが、タリバンの部隊に遭遇し、兵士二人が敵のただなかに取り残される。
その二人こそ、教授の言った「二人」だった…。 ”
全米公開が07年の11月だか12月だかで、オバマ対クリントンの大統領選が苛烈な頃合いでしたか。これは、共和党マケイン議員批判もあったのかしら。ハリウッド俳優の多くは、共和党寄りであって、対テロ戦争開始直後は、ブッシュ大統領を批判した俳優は非難されと聞きます。
ブッシュ大統領のことを、あそこのブッシュ(茂み)と揶揄してパンチを効かせたのは、たしかウーピー・ゴールドバーグでしたか。俳優業を止めたと聞きますが、はてさて。
世界の問題に対して、「自分たちに出来ることを!」 と心掛け、実践することは大切なことです。
ブロッコリー頭の書記長がいる国や、同性愛者だからと問答無用で死刑になる社会である中東の国や、農民を袋叩きにするような老大統領がいるアフリカの国。
テロリストの跋扈する地域。狂信者のいる地域。独裁者のいる地域。麻薬生産の地域。
地球環境問題、経済の極端な格差からくる貧困問題、不適切な児童買春問題。
…私たちのいる世界は、不完全であり、それに対して何か行動すべきなのは、生活に余裕のある私たちでしょう。
「世界の問題に対し、意識を向け、行動しろ」 と、そう問いかけるレッドフォード教授の姿は好ましい。
テロ問題を、政党の支持回復や自身の政界での野望に利用する、クルーズ議員。
それを敏感に察し、真相を究明し公表しようと動くが、マスコミ界の現実に屈せざるを得ない、ストリープ記者。
政治の場・ワシントン、教育の場・カリフォルニア、そして戦地・アフガニスタン。それぞれの場所で、同日に展開され交錯するストーリィ展開は、たしかに現実味を深めてくれる。
娯楽映画でなく、社会性に富んだドキュメンタリーとして優れた映画。 日常の生活から、外の世界へと目を開かせてくれる良質の映画。
しかし、どうも結末がぼやけているのではという感が。
わずか1分後の救出を待ち切れず、タリバンに玉砕した兵士二人。
タクシーの中から、大戦記念碑やア-リントン墓地を見ながら、ストリープの流した「涙」。
…「何か」を問うているのは分かるのですが、いったい監督はその何かを明らかにしたいのかが解からない。
1800年頃の、米海軍のある軍人の言葉に、このようなものがある。
『正しき時も誤てる時も、わが祖国』
そもそも、T.クルーズには、M.ストリープとの共演自体、荷が勝ちすぎたのでは。
彼は、80年代の『7月4日に生まれて』以降、ほぼアクション映画の役しか演じず…それしか演じられなかったのではという疑念もありますが…いきなり、ストリープ演じるジャーナリストと渡り合う上院議員役です。
連邦政府や世界情勢、保守派の思想について学び、高位政治家とのインタヴューも重ねて役作りに励んだそうですが・・・。取りも直さず、それまでそういったことには無関心だったということを暴露したようなものであり、所詮は付け焼刃。
そもそも、演技力がなかったから、「お勉強」で飾り立てたかっただけでは?…と邪推したくなる。
88年のD.ホフマンと共演した『レインマン』でも、ホフマンの引き立て役にもなりきれてなかった。
相次ぐ奇行、カルト集団サイエントロジーへの傾倒や、映画『ミッション・インポッシブル3』の不振から、ついにパラマウントから見限られたクルーズが、「新生」ということでユナイテッド・アーティスツ社で制作した本作ですが…。
いま一つ、振るいませんねぇ。
もうすぐ、ヒトラー暗殺を計画するナチスの反逆者を演じた『Valkyrie』も全米公開されますが、あれも何やら…。あんなにヤンキー臭いドイツ将校がいるわけがない。
人間・ヒトラーを見事に演じたブルーノ・ガンツと、ぜひタイマン勝負をしていただきたいもの。