埼玉県の田園地帯で、肉片と骨の屑だけになっている見るも無残な状態のバラバラ死体が発見された。被害者は、現場近くにあった製薬会社の研究員・桐生隆。埼玉県警捜査一課の刑事・槙畑啓介は、捜査の中で、桐生の勤めていた製薬会社で開発されていた“ヒート”と呼ばれる薬物の存在にたどり着く。それは、数か月前から続いている少年たちの凶悪犯罪の原因になった薬物だった。桐生の恋人の美里や警視庁生活安全局の宮條とともに、事件の真相を追う槙畑だったが…。
※ここから先はネタバレあります。ご注意下さい。
血の海に横たわる惨たらしい死体、不気味に空を舞うカラスたち。過去の事件で心に深い傷を負い、苦しみながら捜査を続ける刑事と、やり方は強引でも強い信念を持って犯人を追うその相棒。人類を破滅に導きかねない麻薬を生み出す製薬会社、そして美しく謎めいた被害者の恋人…ここまで舞台装置と役者が揃っているというのに、読了後は
どうしてこうなった
という言葉しか出てきませんでした。
なんじゃこりゃ!猟奇的ミステリーかと思って期待してたのに!所轄と本庁の垣根を越えた刑事同士が活躍するバディものを期待してたのに!!被害者が製薬会社の社員で恋人も薬科大だから、ガリレオみたいに化学式で事件を解決するのかと思ってたのに!!
あきまへん!ウチはこんな小説、認めまへん!!絶対に許しまへん!!
西島秀俊主演で映画化でもしない限りは!!
後半の壮絶なアクションシーンなんて、西島秀俊(というかMOZUの倉木)に脳内変換しないと読めませんでしたよ!あとは美里が真木よう子で宮條が香川照之、冒頭で既に死体になってる桐生を池松壮亮…ってこれじゃただのMOZUやん!つかこの事件の犯人は百舌鳥じゃなくて〇〇〇なんだけど。
殺人事件の真相とその背後にある麻薬密売組織の撲滅のために、槙畑と宮條が奮闘する話かと思っていたら、後半でいきなり宮條が舞台から姿を消して、メインは槙畑と美里の男女コンビにチェンジ。戦い方も頭脳戦から肉弾戦に方向転換して、もう何が何だかわからなくなってしまいました。前半に出てきた登場人物のほとんどが、特に見せ場もないままエピローグまで出番がなかったのにも??でした。途中から空気にしてしまうくらいなら、最初からこんなに出すなよ、と思います。桐生について謎めいた証言をした歯科医とか。そもそも桐生のバックグラウンドとか、いろいろネタを持ってる割にはそれを活かしきれてないし。本人が冒頭でもう死んでるから、仕方ないっちゃ仕方ないですが。
悲しい過去を背負い、麻薬捜査のためにすべてを捧げている宮條が、あんな中途半端な退場の仕方をさせられたのも納得できませんでした。せめて、もうちょっとなんか…彼が彼なりに頑張った痕跡を残してほしかったです。
ただ、クライマックスの、槙畑と美里が犯人の〇〇〇たちに襲われて戦う場面は、それまでの展開と切り離して単体で読むと面白かったです。ホラー映画とパニック映画を足して割ったみたいで、ハラハラドキドキして。同じ作者の他の小説でもそうですが、小説全体のバランスがよくないんですよね。クライマックスだけ大仰に盛り上がって浮いたりとか、ミスリード要員でもない、重要じゃない登場人物が多すぎるとか。
…でもまあ、この小説には「ヒートアップ」という続編があるので、「魔女は甦る」を読んで残ったもやもやは続編を読んだらすっきりするのかもしれません。「ヒートアップ」は、厚生省の麻薬取締官の七尾究一郎が、宮條が追っていた“ヒート”を追う中で殺人事件に巻き込まれる、といった内容のようです。気になるので読んでみようかなと思っているのですが、もし続編を読んでまた新たなもやもやにつかまってしまうのではという心配もなくはありません…。
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