湊かなえの「夜行観覧車」を読みました。TBSでドラマ化するそうで、それにあわせて文庫が発売されたので
読むことができました。しかしこういうミステリーって、文庫を発売して原作を手に取りやすくしちゃったら
ドラマを見る人が減ったりすることはないのかしら…?
高級住宅街「ひばりが丘」に住む、ある家庭で起きた殺人事件。被害者は父親、加害者は母親。家族間で起きた殺人。
事件はなぜ起きたのか。残された子供たちと、彼らの家の向かいに住む家族、その高級住宅街のリーダー的存在の女。
彼らが導き出した結論とは―
※ここからは若干のネタバレがあるので、ご注意ください。
感想を書く前に、気になったことをひとつ。
これ、1クールのドラマにするの難しくない?
描かれているのは、高級住宅街で起きた殺人事件とその前後の数日間で、登場人物も必要最低限の人数しか出てこない。
これを10話くらいのテレビドラマにするには、かなりドラマオリジナルの肉づけが必要になりそうです。
ただ、文庫のあとがきで、ドラマの脚本を担当する奥寺佐渡子さんが、
“ドラマにはあって小説にはないシーンもある。だが、私が新たに生み出したことはあまりない”
とおっしゃられているので、そう極端に原作とかけ離れたドラマオリジナル設定&エピソードはないのかもしれません。
奥寺さんは「八日目の蝉」や「サマーウォーズ」などで評価されている人なので、このドラマも期待したいところです。
で、感想。
エリート一家の高橋家と、高級住宅街にそぐわないようなきりつめた生活をしている遠藤家。意志の疎通なんて絶対無理な
くらいかけ離れたふたつの家庭が、物語が進むにつれその立ち位置を逆転していくのが面白かったです。遠藤家と高橋家の
それぞれが、それぞれの主観で事件と彼らの家庭を語る。「告白」から続く作者お得意の手法は今回も健在。
主観で語られるがゆえに、家族の思いはすれ違い、事件の輪郭はぼやけていく。ひとりよがりの言い分で目の前の問題から
逃げたり、自分の殻に閉じこもってしまう登場人物たちにいらいらしたりもどかしくなったり。
遠藤家の一人娘・彩花は、湊さんお得意の「少女のえげつなさ」全開で、母親の真弓目線で描写される彩花のヒステリックな
言動は、読んでるこちらが「一発ぶちかましたろか、コラ」と毒づきたくなるほどの荒みっぷり。彩花の母親の真弓が
娘にふりまわされっぱなしなのにもいらっとさせられました。
しかし、物語が彩花の主観で語られだすと、彼女がそうせざるを得なかった理由が浮かび上がってきます。もちろん、それは
中学3年生という年齢を考慮してもやっぱり自分勝手で傲慢ではあるけれど、彼女の中では、そうしてしまう確固たる理由が
存在しているのです。彩花が、それまで雲の上の存在のように思っていた高橋家の長女・比奈子に対して傲慢な態度を
取ったときも、母親の何気ない一言の揚げ足を取って、自分の部屋で暴れ狂った時も。彼女の中では。
同じことが、高橋家と遠藤家、彼らの近所に住む小島さと子のすべてにあてはまります。この小説の世界には絶対的正義が
なくて、混乱した事態をきれいに整理整頓してくれる神様もあらわれません。ある人の立場で見れば正しいと思えたことでも、
別の人の立場から見ればまったく否定されてしまいます。現実社会と同様に、自分にとって一番ふさわしい視点で、落としどころを
見つけて納得しなくてはなりません。
小説は、事件が起きた高橋家とその向かいに住む遠藤家、小島さと子の視点で語られますが、事件の加害者である高橋家の
妻・淳子は最後まで登場しませんでした。事件の夜、何があったのか一番よく知っているはずの人なのに。でも、もし淳子が
「藪の中」の死霊のように最後に登場して真実を語れば、それまで各登場人物の推測で積み上げられてきた物語が台無しに
なってしまいます。死んだわけでも行方不明になったわけでもない淳子が、最後まで登場しないのには殺人事件を扱った
ミステリーとして違和感もありますが、仕方ないことだと納得もできます。高橋家の子供たちが考えた「事件の真相」に
現実の警察ならそう簡単にだまされはしないだろうと思いますけど…。
物語の終盤、高橋家の事件をきっかけに遠藤家は立ち直るきざしが見えますが、逆にそれまで常識的な人間として描かれていた
高橋家の子供たちは、「他では通用しない家族だけの秘密」を背負うことになってしまいます。高みの見物をしているだけの
読者としては、遠藤家の再生にほっとしましたが、高橋家の子供たちの将来を思うと暗い気持ちになります。ほんとに、
何でこう湊かなえは心からすっきりするハッピーエンドを用意してくれないんでしょう。いや、用意されてもそれはそれで
気味が悪いけれど。
ただ、事件の決着がついた後、最終章に現れた小島さと子の変化には少しだけ救われました。最初、おためごかしにいらん
お節介をするおばさんとしか思えなかった人が、こうも変わるのかと。それまでムカついていた分、なんだか悔しい気持ちにも
なりましたけどね。
ところで余談ですが、登場する場面は無かったけれど重要な役割を担った、人気アイドルの高木俊介くん。有名私立高に
通っていて歌もドラマもこなす彼に、彩花も真弓も小島さと子さえも夢中になってましたが、そこまで幅広い年齢層に受ける
彼のコンサート会場の空気はどんな感じなんでしょうね。見たいような、見たくないような…。
P子のこのドラマで一番の楽しみは高橋家長男役の安田章大です。昨日の秘密の嵐ちゃんでのはじけっぷりから益々期待が高まりました。
関ジャニ∞のライブもお薦めです。
こんばんは。
>長男役の安田章大
第1話から出てましたね~。昨日のマネキンファイブの時とは正反対の優等生キャラでしたね。
関ジャニは仕分けを毎回母と見てます。明日も楽しみです。
今年もよろしくお願いします。
先日の上川さんの件は失礼しました、ちゃんと読めば亀治郎さん(あ、今は名前変ったんだ)のことだってわかるのに本当に早とちりで困ります。
「夜行観覧車」私もドラマになるという事で少し前に図書館で借りて読みました。ドラマは始めのほうを少し見逃してしまったんですが、事件の前の段階(本では省略されている)をわりと丁寧にやっており、オリジナル部分も原作から推定されるように忠実に作っているらしいのが好感が持てました。ただ、中学受験なのに、女の子のほうはまだしも、男の子がぜったい小学6年生には見えないよとツッコミましたが…ドラマでは高校受験に変えたのかと思ったけどそうじゃなかった。
やっぱり原作のあるドラマは、何から何までとは言わないけど、せっかくの原作を重視してやってほしいですよね。そうでなきゃオリジナルにすりゃいいんだから…NHKのBS時代劇でJIN先生主演の「アテルイ」楽しみにしていたんですが、原作と違いすぎるのでとまどっています。
こんにちは。コメントありがとうございます。
この前のゴチでは、上川さんはビリにならずに済んでほっとしました。
>男の子がぜったい小学6年生には見えないよ
慎司役の中川大志くんは、現在14歳だそうですが、身長が175センチあるとかで小学生の役は無理がありますよね~。
逆に彩花役の子が15歳なのに小学生に見えるのにも驚きました。
第1話を見ても、原作とドラマはかなり違うな~と思いましたが、あまりにも違いすぎると困りますよね。
脚本が奥寺佐渡子さんだから、面白くなるかなと期待してはいるのですが。