NHKクローズアップ現代:2012年2月6日放送~“必修化”は大丈夫か 多発する柔道事故~
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3153
-------------番組紹介コピペ----------------
4月から全国の中学校で、柔道を含む武道が必修化される。しかし、その直前になって、柔道の部活動や授業中に多くの子どもが死亡していることが明らかになった。学校で亡くなった子どもの数は、中高合わせて28年間で114人。柔道の死亡事故率は他のスポーツに比べて突出して高いことを示すデータもある。これは、名古屋の研究者が、文科省所轄の独立行政法人が持っていたものを、分析してわかったもの。これまで文部科学省は、こうした集計を行ってこなかったのだ。一方、学校現場では、事故多発を受け混乱が起こっている。指導にあたるのは大半が柔道経験のない教師。学習指導要領の解説には投げ技や乱取りまで記載されており、短時間で教えるのは危険だと専門家からも声があがっている。なぜ、事故の多発は放置されてきたのか、そして、安全対策は十分なのか、検証する。
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中学校部活動の死亡率(2000~2009年度)(10万人あたり)
事故例を紹介
練習中の脳内出血により死亡例
頭を強く打ち付けた症状がないのに脳内の血管が切れている→頭部が大きく揺さぶられたために頭の血管が切れた「加速損傷」が原因。
柔道の指導者は頭を強く打ち付けることがなくても、大きく揺さぶることによって事故が起こる場合があるということの認識が薄いのではないか。という指摘。
生かされなかった教訓
他の競技に比べて死亡率が極端に高いという柔道の実態は最近まで明らかにされなかった。
学校での事故と安全対策を研究している名古屋大学・内田准教授によると。
3年前に独立行政法人日本スポーツ振興センターのデータを元に、事故の内容を分析した。
1983~2009年の中学校での各部活動の死亡事故を総計すると、柔道は他のスポーツとそれほど変わらない数字になるのだが、しかし、それぞれの競技人口を調べ、死亡事故の確率を調べてみると、柔道だけが突出し、他のスポーツのおよそ6倍にもなるという結果がでてきた。
(死亡事故の総計)
(10万人あたりの死亡率)
事故内容を調べると、その半数が頭の中で起きた出血によって死亡している。
同氏は文部科学省がこれまで何故これらの貴重な事故データをちゃんと整理分析してこなかったのかを疑問視する。
文部科学省は「こういった新しくでてきた知見も指導主事を通じて学校の先生にわかるようにつとめていきたい。」としている。
しかし、番組では柔道事故の危険性は30年前の柔道での死亡事故で起こされた裁判で、加速損傷での事故を国は把握していたのにも関わらず、その危険性を学校現場にフィードバックされることはなかった。という。
必修化は大丈夫か
ゲスト:全日本柔道連盟医科学委員会副委員長 二村雄次氏
柔道連盟でもこういった事故例の全体把握と対応が遅れたのは事実で、4年前にテレビ報道で知り、以後これまでの事故の調査分析を行い、脳神経外科医を招き事故の検証を行うようになった。
柔道の事故は初心者に多く、特に大外刈りが頭部における事故が多いというデータ。
→初心者は受身が十分に身についていないためだと思われる。
→脊髄損傷の事故も多く、気をつけなければならない。
どう柔道事故を防ぐか
必修化に先んじて柔道を授業に取り入れている学校の例を紹介。
地域の柔道経験者を授業に招いてアドバイスをもらっている。
必修化を前に、教師自身の指導力を高めるための講習会が各地で行われている。
多くの体育教師は柔道の経験がない。
子供の安全を優先し、3年間受身だけでもいい。
柔道大国フランスの取組み
いまやフランスの柔道人口は日本の3倍の柔道大国。
過去の事故をきっかけに徹底した安全対策を実施し、指導者になるには国家資格が必要としている。
資格を得るには少なくとも380時間のカリキュラムを修了(生理学、精神教育学、救命士、解剖学、トレーニング法等)、最低2段の段位がが必要。
フランス柔道連盟指導者養成担当フレデリック・ルアラン氏はいう。
「選手として優秀な柔道家も正しい受け身を指導できなければ絶対に国家資格は得られません。生徒を危険にさらすことなく安全に指導するのはすべての指導者にとって最優先の課題です。」
フランスの取組みは必修化を目前にした日本に、何が必要かを問いかけている。
必修化を直前に向えて
二村氏はいう。
「日本はやはり競技のほうへの視点が比重が大きくなっている。安全指導の面とは正反対のほうへいっていると思う」
「フランスでは特に柔道の道徳教育に重きがおかれ、加納治五郎の精神がいまだに受け継がれているように思う」
「必修化を直前にし、現場の先生は生徒の安全を最優先に、ベテランの柔道経験者にも入ってもらって一緒に先生方も覚えてもらうという体制をつくるというのがいいのではないかと思う」
「教育委員会からの要請があれば、全柔連や警察のほうもいつでも協力するといっている」
「もし事故が起こってしまった時の事故の検証、予防対策をきっちりとできる第三者機関をつくることも必要ではないか」